第2話:逆転のラッキースター 2日目・法廷・後半
同日 午前11時25分 地方裁判所 被告人第4控え室

この貴重な20分の間に、こなたから話を聞かないと・・・。
「こなたさん、話を・・・」
「こぉなぁたぁぁあああっ!!!」
「にょわぁっ!」
わたしが話掛けようとしたら、いきなりかがみがこなたの両肩を掴んで睨みつけた。
「どういう事よ!あんた、毒薬の小瓶に指紋付いてるわ、状況説明聞いていても、あんたしか犯行は不可能じゃない!!」
「か、かがみぃ〜、い、痛い・・・」
「面会言っても何も話してくれないし・・・。あたし達・・・心配・・・してるんだから・・・!!」
かがみは顔を俯けて涙をぼろぼろ溢し出した。
「かがみ・・・」
こなたはかがみの泣き崩れた顔を直視出来ないでいる。
「うぅ・・・、話し出すチャンスがない・・・」
わたしは、かがみとこなたのやり取りを邪魔出来ず、こなたと話す事が未だ出来ないでいた。
そんな湿っぽい空気に、予想外の救世主(?)が現れた
「何か、随分と湿っぽいで〜」
「お、大阪さん!!」
その場に現れたのは何と、ちよちゃんにとって最も頼りになる先輩の大阪だった。
前回の法廷も絶妙なタイミングで出てきて、予想外の展開に法廷にもっていった恐怖の女弁護士。
「お母さん、何しに来たの?」
「いやぁ、かおりんから預かってきた物があるんやけどな」
「もしかして、この状況を打破出来る決定的な証拠ですか!?」
わたしは期待に満ちた目で大阪を見た。
ついでに、わたしの声に反応したのか、こなた達も大阪に注目した。
「えっと・・・・これや!」
「え?さ、さーたーあんだぎー?」
大阪はさーたーあんだぎーの袋を取り出した。
「ん?あ、あかんあかん!間違えた、これは榊ちゃんからオヤツに貰った奴やった。こっちやこっち」
大阪はさーたーあんだぎーの袋をしまい、書類を取り出した。
「大阪さん、これは・・・?」
「これは、通話データやね。ほら、次の証人って、事件を目撃して通報したって言ってたから・・・」
わたしはそう言われ、通報データに目を通した。
「2時20分に通報している・・・か。さっきのジャンボさんもそう証言してましたよね・・・」
「せやなぁ、通報した場所は現場近くのコンビニの公衆電話らしいな・・・」
大阪の話を聞いた恵那は、気になる発言をし出した。
「この人、携帯電話を持ってなかったって事だね・・・」
確かにその通りだ。携帯電話が無いから公衆電話で電話したのだから・・・。
「でも・・・変だなぁ・・・」
こなたは不思議そうに会話に入ってきた。
「どういう事ですか?こなたさん・・・」
「目撃者のお客さんって、お父さんが倒れた時にいたお客さんだよね?」
「まぁ、その人しかいなかったってジャンボ刑事は言ってましたよ?」
「でも、あのお客さんはいつも携帯電話を持って店に来るんだよねぇ・・・」
「え?」
こなたの発言に一同静まり返る。だったら、何で携帯電話を使わなかったんだろう・・・と。
疑問を抱きつつ、貴重な休憩時間はあっという間に過ぎてしまったのだった・・・。

同日 午前11時45分 地方裁判所 第7法廷

ざわざわざわ・・・・
カン!
「それでは、審理を再開します」
こうして、裁判は再開されてしまった。
「では、早速。事件を目撃していた男子高校生に入廷して頂こう・・・」

同日 午前11時47分 白石みのるの証言

何か冴えないただの男子高生が証言台に立った。
「それでは、証人。名前と職業を・・・」
「はい、白石みのるです!職業は高校生兼ラジオのパーソナリティです!」
白石みのるは、事件当時。事件現場にいたもう1人の客で、被害者とは離れた席に座っていた。
彼はどの目撃証言よりも有力に違いない。
「え〜、あれは僕が店に来て15分くらい経った後でした。
 被害者の人が入店してきまして、一番手前の席に座りました。
 そして、被告の彼女からメニューを受取しばらく、彼女とおしゃべりしながら、メニューをめくっていました。
 5分ちょっとくらい経ったくらい後に、被害者がコーヒーを注文して、
 彼女がコーヒーが淹れて運んだコーヒーを口にした瞬間、倒れたんです!」
『異議あり!』
わたしは指を突き立て、異議を申し立てた。
「ちょっと、いいですか?白石みのるさん」
「な、な、なんですか!?そんな怖い顔しないで下さいよ!」
白石は異議に驚いたらしく、慌てだした。
「あなたはさっきこう言いましたね?『コーヒーを口にした瞬間、倒れた』と」
「そ、それがどうかしたんですか!?だって、死因は毒殺なんですよね?」
「確かに毒殺です。しかし、あなたが目撃した光景は明らかにおかしいんです!!」
『異議あり!』
わたしの発言に対し、よみが異議を申し立てて、右手で思いっきり机を叩いた。
「何がおかしいというんだ!?今の証言にはおかしい点はない!!」
カン!
裁判長も便乗してきた。
「そうです!実際、毒はカップから発見されたのですから!」
この人達、何がおかしいのか気付いていないようだ。
「いいですか?問題はこの毒薬の特性です・・・」
「特性ですか?」
裁判長は首を傾げた。この人は特に全然解っていないようだ。
「水原検事によると致死量は0.0004mgの危険な毒薬ですよ?」
「確かにエレメンタルオキシロイドは危険な毒薬です・・・。・・・しかし!!」
わたしは机を両拳で力いっぱい叩いた。
「この毒薬は遅効性なのです!!」
「ち、遅効性ですと?」
「な、何ですかソレ!?」
裁判長と白石は全く理解出来ていないようだ。
「鑑識課のかおりん巡査部長はこう言っていました」
『この毒は体内に遅効性で体内に入ってすぐ効果が現れる訳ではなく、早くて10分は何の異常も起こらないの』
「つまり、毒がコーヒーに口を付けた時に入ったのならば!!その気になれば、被害者はコーヒーを1杯飲みほす事が可能だったでしょう!!」
わたしは真っ直ぐ白石に向けて指を突きつけた。
「さぁ、いかがですか!?白石さんっ!!!」
「あ、ありえませぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええんっ!!!」
白石はびっくりして、身を引いた。
ざわざわざわ・・・・
あまりに唐突な質問だったのか、傍聴席の人達も動揺が隠せないでいる。
カンカンカン!
「静粛に!静粛に!静粛に!従えない者には退廷を命じます!!」
裁判長は必死になって騒ぎを収めた。
「べ、弁護人!!ど、どういう事ですか!?コーヒーを口にする前に毒が入るなんて・・・」
『異議あり!』
よみは異議を申し立て、わたしを睨みつけてきた。
「裁判長、どうやらお詫びせねばならぬようだ・・・」
よみは開き直って、余裕の表情を見せた。
「まさか、弁護人が遅効性を知っているとは思わなかったものでね。試してみたのだよ・・・」
「な、何ですって?」
まさか、よみは最初から毒が遅効性である事を知って裁判に挑んでいたのか・・・。
「証人、被害者が入店してからコーヒーに口付けるまではどのくらい時間がかかったのかな?」
よみは唐突に意外な質問をしてきた。
「そ、そうですねぇ・・・。だいたい10分ちょっとくらいだと思いますけど・・・」
「そういう事だ弁護人・・・」
「ど、どういう事ですか!?」
わたしはよみが白石にした唐突な質問の意味を理解出来ずに動揺しだした。
「つまり、被害者はどんな理由があろうと、ルミエール店内以外で殺害された可能性はありえないという事だ!!」
「あ・・・あああああああああああああっ!!」
わたしは意外な見落としを指摘されて、驚いて身を引いた。
確かによみの言う通りだ。時間を考えても、入店してから死ぬまでの間は10分くらい。
どう考えても外で毒を飲まされた可能性は低過ぎる。
まさか、遅効性がここまで問題になるなんて・・・。
ざわざわざわざわざわ・・・
カン!
「静粛に!」
裁判長は混乱して騒ぎ出す傍聴人に注意を促した。
「ふむぅ・・・。参りましたなぁ・・・」
「やむをえん。この問題は保留にして次へ進もうか・・・」
よみは話を切り替えた。
「次・・・?」
まだ証言してない事があるというのか・・・。
「証人。君は、確か事件を通報したそうだな?」
「は、はい・・・。そうですけど・・・」
「その時の事を詳しく聞かせてくれないか?」
「解りました・・・」
ジャンボの証言でもあったが、警察に通報したのは他でもない白石みのるだったのだ。
「事件が起きた直後、被告は気絶してしまい、店長さんも駆けつけてきました。
 そして、僕は店長さんに頼まれて、携帯電話で警察に通報しました・・・」
『異議あり!』
わたしは白石に指を突きつけた。
「白石みのるさん!あなたは携帯電話で通報したんですよね?」
「は、はい・・・。それが?」
白石は何がなんなのか解らずにいた。
「ここに、春日歩がかおりん巡査部長から預かった資料があります」
「か、春日歩だと!?」
春日歩の名前を聞いた途端、よみは顔色が悪くなった。
「春日歩・・・春日歩・・・・」
「どうしたんだろ・・・みずはら検事さん様子がおかしい・・・?」
流石に恵那もその異変に気付いたらしい。春日歩に対する拒絶反応らしきものに。
「ど、どうされたのですかな?水原検事・・・」
「い、いや・・・し、失礼した・・・」
よみは何とか冷静さを取り戻した。
「弁護人、携帯電話がどうかしたのかな?」
「ここに、警察の通報による通話記録があります。これによると、最寄のコンビニの公衆電話から掛けられているようですね?」
「あっ!!」
白石はまさか、通話記録があると思っていなかったらしく、冷や汗まみれになり焦り出した。
「携帯電話があるなら、何故外の公衆電話から通報したんですか?」
「えっと、その・・・。あ!そうだ!」
白石は何か思いついたらしく、冷静と取り戻した。
「ほら、携帯で電話すると料金取られちゃうじゃないですかぁ。やっぱり、他人の為に通話料払うのも・・・」
『異議あり!』
わたしは白石の発言に異議を申し立て、白石に向けて真っ直ぐ指を突きつけた。
「白石みのる・・・。あなたは何も知らないんですか?」
「あ、こ、こら!年上と呼び捨てにしちゃ・・・」
白石は呼び捨てにされたのがムカついたらしく、逆ギレしそうになったが、
バン!
「きゃん!」
わたしが机を叩いた途端、怯え出した。
「いいですか?通報には通話料が払わないんですよ・・・」
「あ!そう言われてみればそうです!110番や119番には通話料が掛からない・・・」
裁判長も理解出来たらしい。何がムジュンしているのかが。
「どういう事ですか?証人!!弁護人の主張通りならば、携帯電話で通報しないのはおかしい!!」
「うぅ・・・。そ、それは・・・」
白石は裁判長の質問で更に言葉を詰まらせた。言い訳が思いつかない様だ。
・・・ん?待てよ・・・?
「あああああああああああああああああああっ!!!」
わたしはとんでもない事を閃いてしまった・・・。
《白石が携帯で通報しなかった理由》ではなく、
《携帯で通報出来なかった理由》を考えるなら・・・。もしかして・・・。
「白石みのるさん!!」
わたしは真剣な目で白石を見つめた。
「な、な、な、な、何ですか!?」
白石は急に態度が変わったわたしに動揺した。
「あなた、携帯電話は今何処に?何処にあるんですか?」
「え?え?け、け、携帯電話ですか・・・?」
白石は慌てだした。やはり、考えた通りだった。白石は携帯電話をなくしていた可能性があるのだ。
『異議あり!』
よみは異議を申し立て、机を叩いた。
「証人の携帯電話など、何の問題ではない!!」
『異議あり!』
わたしは、よみの発言に異議を申し立てた。
「とんでもありません!重大な問題です!!」
「弁護人の異議を認めます!証人、あなたの携帯電話を見せなさい、今すぐに!!」
裁判長はわたしの異議を認めてくれた。意外といい人かも・・・。
「そ、そ、それがその・・・ど、何処かで落としちゃって・・・その・・・今は・・・」
白石はやはり、落としていたらしいが、妙に落ち着きがない。
「ふむぅ・・・。携帯電話がないのなら、電話は出来ませんね・・・」
「うぅ・・・」
白石は携帯電話を失くした事を知られてしまったのに、まだ落ち着きが戻らない。
どうやら、まだ何かを隠している様子だ。
「ねぇ、ちよちゃん。何で、あの人・・・。まだ動揺してるんだろうね?」
恵那も気になって、訊ねてきた。もしかして、携帯電話に都合の悪い事が・・・?
「白石みのるさん、携帯電話の番号を教えて下さい・・・」
「えーっ!?何でどうして!?」
白石は拒否ムード全開だ。どうしても、知られたくないのだろうか・・・。
「こ、こんなの、プライバシーの侵害だぁぁっ!!」
「証人・・・。携帯電話の番号を教えなさい!裁判所の責任であなたの携帯電話に電話を掛けます。係官、至急控え室の電話へ!」
法廷係官は裁判長の命令で、控え室の電話で白石の電話に電話を掛けた。すると・・・。
♪み・み・みらくる〜みのるんるん!
「な、何ですか!?この着信メロディーは!?変な曲ですね!?」
急に白石の声で妙な歌が流れだした。
「ち、ちよちゃん!!ポケットから鳴ってる!!」
「え?」
わたしはポケットから鳴ってる携帯電話を取り出した。
「ちよちゃん、これって・・・」
白石の番号で鳴った携帯電話はなんと、路地裏で発見した携帯電話だったのだ。
「おかしいですねぇ・・・、白石みのるさん。何であなたの携帯電話がここにあるんですか!?」
わたしは完全に勝ち誇った態度で白石を見た。
「べ、弁護人!!それは何処で!?」
裁判長は予想外の場所で鳴った携帯電話に驚きを見せた。
「これは、わたしがルミエールの路地裏で発見したものです」
「ルミエール・・・事件現場じゃないですか!!」
「そ、そんなバカな!!ウソだ!!」
白石はビクビクしながら、反論し、よみも尋常な態度ではなかった。
「ろ、路地裏に証人の携帯電話がお、落ちていただと!?聞いていないぞ、私は!!」
よみは白目を剥いて唇をぷるぷる震わせ、脂汗びっしょりかいて動揺した。
「ジャンボ刑事が見落としたんじゃないですか?確か、路地裏で警官に1人も会いませんでしたしね!」
「ぐっ・・・!」
よみは身体を震わせながら、ぶつぶつ呟いた。「竹田刑事め、来月の給与査定で覚悟しておけ・・・」と。
バン!
わたしは机を両拳で強く叩いた。
「つまり、あなたはルミエールの路地裏に潜んでいた事になります!携帯電話が全てを物語っている!!」
「ぐぎぃぃぃゃぁぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
白石は痛いところを突かれたらしく、悲鳴を上げた。
「まさか、弁護人!!あなたはこの証人を・・・泉宗二郎殺害容疑で告発するつもりですか!?」
「じょ、冗談はやめて下さいっ!!ぼくは殺人なんて・・・やってませぇぇえええええええええんっ!!」
白石は涙目で叫び出した。
『異議あり!』
「そこまでだ!美浜ちよ!!」
「水原暦!?」
よみは突然異議申し立てで流れを止めた。
「この証人が携帯電話を路地裏に落とした事は認めよう・・・。だからと言って、殺人罪になる訳ではない!」
「え・・・?」
「それとも、路地裏に毒物反応があった証拠などあるとでも言うのかな?」
路地裏の毒物反応・・・?警察も捜査に入っていない路地裏にそんなもの見つかる訳がない・・・。
わたしは、土壇場で逆転返しを食らい、頭を押さえつけ顔を俯けていた。
そんなわたしに、恵那が話掛けてきた。
「ねぇ、ちよちゃん・・・。もしかして、あの事って、関係してるのかな?」
「あのこと?」
「マヤマヤーだよ・・・」
恵那は榊が現場の鑑識チームリーダーのかおりんを呼び出した時のことを気になっていた。
「まさか・・・・」
マヤマヤーにエレメンタルオキシロイドの反応が・・・?
『異議あり!』
静まり返った法廷にわたしの異議が響き渡った。
「何だ?弁護人・・・。まだ反論するつもりか?」
よみは勝ち誇った態度でわたしを見た。逆転するなら今だ!
「水原検事、あなたの好きな証拠でそれを示してあげましょうか・・・」
「な、何!?」
「証拠はこの猫です!!」
わたしはマヤマヤーの写真を突きつけた。
「猫がどうかしましたか?」
「マヤマヤー流石は、榊獣医のペットの子供です。すべてのカギはこの子が握っていました」
「な、なんですと!?」
ざわざわざわ・・・・
あまりの事で傍聴席は騒ぎ出した。
カンカンカン!
「静粛に!静粛に!!静粛に!!係官、うるさい人は構いませんからつまみ出しなさい!」
裁判長は必死になって騒ぎを収めた。
「どういう事だ、弁護人!?その猫が何だというんだ!?」
よみはマヤマヤーが何を示すのか解らず、質問してきた。
「マヤマヤーは昨日、ぐったりしているところを路地裏で発見しました。榊動物病院で診てもらった所、エレメンタルオキシロイドの中毒だそうです」
「な、何!?」
「運よく、致死量に満たなかった為生きていますけどね・・・」
よみは、冷や汗をびっしょりかいて動揺しだした。
「つまり、路地裏でエレメンタルオキシロイドが発見されたという事は、毒を隠したつもりだった!!そう考えられるのです!!」
『異議あり!』
よみは異議を申し立てた。
「弁護人、つまり貴様は・・・この証人が盛った毒を隠したというのか!!」
「ち、違う!!僕は殺人とは無関係だ!!僕はただ通報しに行っただけで・・・」
『異議あり!』
わたしは白石の発言に異議を申し立てた。
「それは通りませんよ!白石みのる!!」
白石は硬直してしまった。
「あなたは携帯電話の事を隠そうとした、それが殺人に繋がるかは解りませんが、何か理由があるはずです!それを白状してください!」
「は、白状なんて、恐ろしい事出来ません!!殺人罪を着せられるのと同じくらい言えません!!」
「ん?」
わたしは不思議に思った。今の発言・・・。殺人に関係する人の発言には思えない・・・。
でも、何かやましい事はありそうだ。この場合、どうする!?
『異議あり!』
よみが異議を申し立てた。
「やれやれ、だったら君が証明すればいいじゃないか。そのやましい理由をな」
よみのセリフが大きなヒントになった。殺人と無関係で携帯電話の事を知られたくない理由・・・。
『異議あり!』
「白石みのる、あなたが携帯電話を失くした事を知られたくない理由は携帯電話そのものです!!」
「ど、どういう事ですか!?弁護人、説明を!」
裁判長は何も解っていないようだ。
「実は、この携帯電話を発見した際、携帯の画面が写真撮影画面になっていたんです」
「ほぅ!最近の携帯電話は写真も撮れるんですか!?科学も進歩したものですね」
いや、写真の撮れる携帯電話は結構古い機種からあるんですけど、そこに突っ込む気力はない。
「裁判長、彼が撮影したこの写真をご覧下さい」
わたしは、白石の携帯電話の写真撮影記録画面のこなたの盗撮写真を見せた。
「な、何ですか!!破廉恥なっ!!これは、被告人の着替え写真じゃないですか!?」
裁判長は顔を真っ赤にして怒りだした。
その瞬間、法廷内は静まり返り、全員が白石を冷やかな視線で睨みつけた。
「・・・そ、そんな目で見ないで下さいぃぃぃぃいいいいっ!!」
白石は赤面しながら盛大に荒れた。
「証人・・・どうかと思いますよ。さすがに・・・」
裁判長も呆れて、冷たい視線を送りながら注意した。
「だから違うんですってばぁぁあああああああああああああああっ!!!」
白石は混乱しまくり、盛大に慌てた。
「路地裏はちょうど裏口に繋がっていて、近くの窓が更衣室につながっているんです!」
「なんと!」
「つまり、あなたは殺人犯ではないかもしれませんが、しかし!
 それはそれは不潔で卑劣で不埒でニヤけてスケベで嫌らしく最低で如何わしい盗撮犯だったのです!!」
わたしは力一杯白石に向けて指を突きつけた。
「そ、そんな言い方しないで下さぁぁぁあああああああああああああああああああいっ!!!」
白石は力一杯逃げようとした。
「証人・・・それはダメでしょう・・・」
しかし、裁判長に呆れ半分でダメ出しされた。
「きゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
白石はムンクの叫びな顔をして大ショックを受けた。
『異議あり!』
よみは一段落置いて、異議ありを申し立てた。
「どうやら、この証人は不潔で卑劣で不埒でニヤけてスケベで嫌らしく最低で如何わしい盗撮犯だったようだ。
 だが、それは殺人とはどうでもいい話ではないのかな?」
「あ・・・・」
よみの言う通りである。結局、殺人事件に繋がる手がかりが殆どなくなってしまっていた。
「あ、そうだ!白石みのるさん!!」
わたしはある事に閃いた。
「ううっ・・・なんですか?この哀れな盗撮犯にまだ何か?」
不潔で卑劣で不埒でニヤけてスケベで嫌らしく最低で如何わしい盗撮犯は涙目でわたしを見た。そんな哀しい目で見ないで欲しいんだけど・・・。
「とりあえず、盗撮はどうでもいいです。それよりも、公衆電話で通報した時の事ですけど・・・」
「はい・・・」
「近くのコンビニってどれくらいの距離があるんですか?」
「距離ですか?そうですね・・・僕の足で歩いて10分くらいですね・・・。周辺にあまりコンビニがない場所なので・・・」
つまり、事件が発生してから、白石は20分間店を出ている・・・。
「あ・・・ああああああああああああああああああああっ!!!」
わたしはとんでもない真相に辿りついてしまい、奇声を上げた。
「ど、どうしたの?ちよちゃん!?」
「み、見えてきた・・・。真相が・・・見えてきました・・・」
バン!
わたしは勢いよく机を叩き白石をまっすぐ見つめた。
「白石みのるさん!!あなたはさっき、こう証言しましたよね?
『事件が起きた直後、被告は気絶してしまい、店長さんも駆けつけてきました。
 そして、僕は店長さんに頼まれて、警察に通報しました・・・』
 と!!」
「はい、そうですけど・・・」
「つまり、あなたが通報しに行った20分間の間、ルミエール店内にいたのは・・・?」
「それは、被告と被害者と小此木基弘の3人だろうな・・・。・・・ん?・・・ああああああああああああああああああああああっ!!!」
よみもとんでもない真相に気付いたらしい。
「そうです。そして、被告は気絶していて、被害者は既に死亡していたという事は・・・
『異議あり!』
よみは、嫌な予感を察知し異議を申し立てた。
「と、とりあえず異議を申し立てる!!」
「とりあえず異議は却下します!」
「何ィィイイイイッ!?」
よみの異議はあっさり却下された。というか、「とりあえず」はないでしょ。
「弁護人、続けなさい!」
「つまり、小此木基弘だけはその20分間、現場を1人で自由に動き回れた事になります!!」
「な、何ですとぉおおおおおおっ!?」
ざわざわざわざわざわ・・・・
法廷内は騒ぎ出した。当然だ、誰も予想もしなかった真相に辿り着いてしまったのだから。
カンカンカン!
「静粛に!静粛に!べ、弁護人・・・・あなたはまさか・・・」
「はい!弁護側は小此木基弘を告発します!!彼こそが、泉宗二郎を殺害し、泉こなたに罪を着せた真犯人です!!」
わたしは思い切って、小此木店長を告発した。現場を操作出来るチャンスがあったのは彼だけなのだから。
「水原検事!!検察側に命じます!!明日の法廷一番で小此木基弘を召喚して下さい!!」
「ぐっ・・・しょ、承知した・・・」
よみは悔しそうに唇をぷるぷる震えさせて白目を剥いて睨んだ。
「弁護側には、改めて彼の犯行方法などを探してくるように!!」
「解りました・・・」
「それでは、本日はこれにて閉廷します!」
カン!
裁判長の木槌が鳴らされ、初日の裁判は閉廷された。

つづく