第2話:逆転のラッキースター 2日目・法廷・前半
9月13日 午前9時42分 地方裁判所 被告人第4控え室

遂に、美浜法律事務所設立して、最初の法廷が始まろうとしていた。
法廷は2度目だったけど、やっぱり慣れない所為か相変わらず緊張を隠せないでいた。
「ちよちゃん、おはよ!今日は15分前には来てるね、関心関心!」
「あ、え、恵那ちゃん。お、おはよう!」
急に恵那が現れ、挨拶をしてきた。
よく見ると、恵那1人で来ている様にも見える・・・。
「あの、恵那ちゃん・・・。大阪さんは?」
「お母さん?あぁ、彼女なら今日は来てないよ。『恵那1人で大丈夫やろ』って」
「えっ・・・?」
う、ウソ・・・。こんな時こそ大阪の助力が欲しいのに・・・。
前回の法廷だって、大阪がいたから勝てた様なもので、彼女抜きで挑むのは無謀だ・・・。
しかも、相手は噂の天才検事・・・。勝てるのだろうか・・・。
「こらぁ!ちよちゃん、そんなに落ち込んだ態度じゃダメじゃない!」
恵那はわたしに喝を入れた。
「ちよちゃん!!あなたが負けムードを出してたら、依頼人はどうなるの!?ちよちゃんの所為で極刑になるかもしれないんだよ!」
はっ!とわたしは目が覚めた様な気分になった。
そうだ。本当にツラいのは被告人の人で、わたしじゃない。わたしがこんなでどうするんだ。
わたしはそう思い、立ち上がった。
「ありがとう、恵那ちゃん。少し目が覚めました」
「それでよし!」
わたしは大阪の代わりに隣に立つ恵那ちゃんに励まされ、元気を貰った。
そんな2人の前に・・・。
「あ、お姉ちゃん。あそこにいるの弁護士さんだよ!」
傍聴に来た柊姉妹と高良みゆきが現れた。
「あ、つかささん!かがみさん!おはようございます!!」
恵那は早速挨拶した。名前で呼んでる所を見ると、既に友達になってるのか・・・。
「おはよう、恵那ちゃんと、弁護士さん。今日はこなちゃんをよろしくお願いします」
「はい、任せて下さい!ウチの美浜ちよなら、4年間無敗の天才検事だろうと、40年間無敗の伝説検事だろうと倒してみせますよ!」
「コラコラコラコラ!!勝手な約束しないで下さい!勝負はやってみないと解らないでしょ、恵那ちゃん!」
恵那の無責任すぎる発言をわたしは慌てて止めた。
それにしても、40年間無敗の伝説検事って・・・。本当に居たら冗談でも笑えないなぁ・・・。
「・・・で?問題のあいつはどうしたのよ?」
かがみは話題を変えて、到着が遅れている被告人を心配している。
「そういえば、まだ見てませんね・・・」
「こなたの奴、自分がどんな状況か解っているのかな・・・?」
かがみはこなたをすごく心配そうにしている。
「・・・かがみさんって、優しい方なんですね・・・」
「な!?と、友達だから当然でしょ!!別に、そんなやましい事なんて考えてないんだからね!」
かがみは慌てて否定した。この人、口じゃこう言ってるけど、本当はこなたを誰よりも心配してるんだなぁ・・・。
「被告人、早くしなさい!」
「ふわぁ〜い」
法廷係官に連れられて、小柄の青い長髪の少女が到着した。
彼女が本日の依頼人、泉こなた。例のウエイトレスである。
「いやぁ、ごめんごめん。ちょっと寝坊しちゃって、開廷時間ギリギリになっちゃったよ」
「ったく、あんたは・・・。自分がどんな状況に侵されてるか全然解ってないのね?」
だらしなさそうなこなたをかがみは自分の妹の様に注意した。
やっぱり、この人にとって、こなたは特別な存在なんだなぁ・・・。
「あなたが、泉こなたさんですね・・・?」
「むほぉ!ゆい姉さんから話は聞いていたけど、本当に年下なんだ、弁護士さん!」
この人、何か緊張感がないなぁ・・・。
「いやぁ、流石はゆい姉さん。解ってるなぁ、私の好みを。国選弁護士みたいな堅苦しいおっさんの弁護は御免だったんだよねぇ」
「あ、あの、そういう事はいいですから、事件について教えて欲しいんですけど・・・」
わたしは今さっき初めて会ったばかりのこなたから事件について聞こうとすると、
「弁護人、被告人!まもなく開廷時間です。法廷へ急いで入廷して下さい!」
法廷係官に止められ、結局依頼人と何の打ち合わせも出来ないまま法廷が始まってしまった・・・。

同日 午前10時 地方裁判所 第7法廷

ざわざわざわざわ・・・・・
カン!
裁判長は木槌を鳴らし、騒ぎを収めた。
「ただいまより、泉こなたの法廷を開廷します」
「弁護側、大丈夫です」
「検察側・・・もとより・・・」
裁判長はともちゃんの裁判にいた猫みたいな生き物で、
検事席に立ったのは、茶髪ロングヘアのメガネを掛け、紫の蝶ネクタイに緑色のスーツを着た背の高めの女性だった。
「ねぇねぇ、ちよちゃん。あの人・・・、あの人がジャンボさんが言ってた・・・?」
「うん、水原検事・・・ですね・・・」
水原暦、17歳で検事になって3年間無敗を誇る天才検事。2度目の法廷で早くも会えるとは思わなかった。
「美浜ちよ・・・。まさか、君と直接対決が出来るとは光栄だよ・・・」
よみはわたしに向かって話しかけてきた。
「どういう事ですか?水原検事・・・?」
「あの春日歩の次の次に目障りだった弁護士である君を早くも潰せるのだからね・・・」
「何ですって?」
「さぁ、かかっておいで!私を倒せるものならね!」
よみは余裕の表情でわたしに挑戦状を叩きつけるような態度を示した。
「それでは、自己紹介も終わったようなので、水原検事、冒頭弁論をお願いします」
「承知した」
よみは資料を手に取り、事件の説明を始めた。
「事件は、9月11日午後2時頃、コスプレ喫茶・ルミエールで発生した。
 その当時、ルミエール店内にいたのは、被告人・泉こなた、店長・小此木基弘、あと常連客が1名。
 この3人だけだった。そして、問題の毒のコーヒーは泉こなたが淹れ、運んだモノだ。
 つまり、犯人は泉こなた以外ありえないという事になるのだ!」
よみは、被告席に座ったこなたを真っ直ぐ指さして言い切った。
「ふむぅ、なるほど・・・。事件の経緯は大体解りました・・・。それでは、最初の証人を入廷させて下さい」
「竹田刑事を入廷させてくれたまえ・・・」

同日 午前10時13分 竹田隆の証言

ジャンボは、証人台に立った。
「それでは、証人。名前と職業を・・・」
「おう!名前は竹田隆、所轄署の刑事だ」
「では、早速・・・。逮捕するまでの経緯を説明したまえ」
「了解だぜ!」
いよいよ始まる。美浜法律事務所最初の尋問が・・・。
「9月11日の午後2時20分頃に常連客からの通報を受け、我々は駆け付けると。
 そこには死亡した泉宗二郎と、気絶した泉こなた。現場維持をしていた、店長の小此木氏がいた。
 カップの指紋や証人達の証言から泉こなた以外には犯行は不可能と知り、彼女を逮捕した。
 ちなみに、使用された毒はエレメンタルオキシロイド。非常に危険な毒物だ」
『待った!』
「ちなみに、エレメンタルオキシロイドはどんな毒なんですか?」
わたしは、念の為、ゆさぶりを掛けて毒薬について聞いたみた。
「どんなって言われても・・・、えっと、人を殺せる毒薬だよ!それがどうした?」
「そんな事は解ってます!致死量とか、細かい特徴を聞いているんです!」
「えっと、その・・・う〜ん・・・」
ジャンボは必至に悩んでいる。こういう分野には弱いのだろう・・・。
「しょ、証言を拒否する!!そういうのはかおりんに尋問して聞いてくれ!」
ジャンボは逃げた。解らなかったんだなぁ・・・。やっぱり・・・。
「まぁ、専門家じゃないのだから、仕方ないのでしょう・・・」
「ほっ・・・」
ジャンボは、有耶無耶に出来た事に安心していた。その矢先・・・。
『異議あり!』
検察側から異議申し立てが発生した。
「竹田刑事・・・」
「ひっ!」
ジャンボはよみの冷ややかな視線に怯え始めた。
「来月の給与査定、楽しみにしておきたまえ・・・」
「ぬおっ!?減給か!?減給なのか!?」
「当然だ・・・」
「うぅ・・・また楽しみが増えたぜ・・・」
ジャンボはよみから減給司令が下ってしまった。ちょっと気の毒だったかな・・・。
「エレメンタルオキシロイドは、ある特殊な化合物で一時期世間を騒がせた麻薬だ。致死量は0.0004mg・・・」
「ふむぅ、その程度の微量ならいくらでも隠して持ち込めそうですね・・・」
「そういう事だ・・・」
結局、ジャンボが減給食らっただけで、有利な手がかりはなかった・・・。
「刑事、それよりも泉こなたを逮捕した理由を説明して欲しい・・・」
「了解だ!彼女のスカートのポケットから決定的な証拠が発見されたんだ!」
「決定的な証拠?」
ジャンボはそう言い、小さなプラスチック製の小瓶を取り出した。
「何ですか?その小瓶は?」
裁判長が不思議そうに尋ねる・・。
「これは、エレメンタルオキシロイドが入っていた小瓶だ」
「くっくっくっ・・・」
よみは嫌味な薄笑いをしだした。
「それだけではないのだよ。そうだな?竹田刑事・・・」
「あぁ、この小瓶にははっきり残っていたんだぜ・・・」
「残っていた?何がですかな?」
ジャンボの意味深なセリフに裁判長は首を傾げた。
「勿論、被告人・泉こなたの指紋だ!はっきりと彼女の指紋だけがな!!」
「な、何ですってぇぇええええええええええええええええええええええええっ!?」
ざわざわざわ・・・・
あまりの事にわたし達だけでなく、法廷中が騒ぎ出した。
カンカンカン!
裁判長は静める為に木槌を鳴らし、「静粛に!」と声を張り上げた。
「しょ、証人!それは間違いありませんか?」
「間違いありませんよ、裁判長。鑑識課のかおりんのサインもあります」
ジャンボはそう言い、かおりんのサイン入りの書類を見せつけた・・・。
「如何かな?裁判長」
よみは余裕の表情で裁判長に話し掛けた。
「流石は、水原検事。見事な立証でした・・・」
「フッ!当然・・・」
よみは指をちっちっちっと嫌味ったらしく振った。
「さて、裁判長。次に目撃証人を召喚しよう・・・。彼の証言でより理解して頂けると思う」
「解りました。それでは、ここで1度休憩を挟みましょう。その間に証人の準備をお願いします」
「承知致した・・・」
「それでは、これより20分間の休憩に入ります」
カン!
裁判長が木槌を鳴らし、休憩時間に入る事になった。

つづく