9月13日 午後2時14分 美浜法律事務所 わたしと恵那は何とか初日の裁判を切り抜け、事務所に帰ってきた。 「ふぅ・・・何とか1日を突破できたね」 「正直、絶対ダメかと思いましたよ」 「何であんなに追い詰められちゃうんだろう・・・。ねぇ?」 ねぇ?と言われても困りますが・・・。 「あ、弁護士さん!凄い冴えてたよ!」 メガネを掛けた婦人警官と、小早川ゆたかが入ってきた。 「あの、あなたは?」 わたしは婦人警官に尋ねた。 「あぁ、私は成美ゆい。ゆたかの姉だよ〜!」 「わたしに美浜弁護士さんを紹介した人ですよ」 ゆたかが昨日言っていたわたしを紹介した人だそうだ。 「ところで、ゆいさん。何でわたしなんですか?」 わたしは唐突にゆいに質問してみた。 「あぁ、だって美浜弁護士さんは2ヶ月前の事件で無罪を勝ち取った上、真犯人を捕まえたって有名だし」 そんなに有名だったんだ・・・。だったら、何で2ヶ月も依頼来なかったんだろ・・・。 「それに、小さくて可愛いから、こなたちゃんの相性もいいと思ったしねぇ」 あ、そっちが本音ですか。 「そういえば、ゆいさんって何されてる方なんですか?警察官の制服っぽいの着てますけど・・・」 恵那はゆいに質問した。というか、ちょっと失礼な感じな質問ですねぇ。 「私?私は埼玉県警の交通安全課の巡査だよ〜」 ゆいは気兼ねなく答えた。意外と心の広い人のようだ。 「さてと、私仕事に戻らないと・・・。それじゃ、我が従妹の事はよろしく頼みましたよ!」 そう言うと、ゆいとゆたかは事務所から出て行った。 「じゃぁ、ちよちゃん!わたし達も出掛けよう!今度はちゃんと面会でお話しようね!」 という訳で、わたしと恵那は刑務所を目指したのだった。 9月13日 2時36分 留置所・面会室 今度は面会時間に間に合ったから、泉こなたの話をたっぷり聞けると思い、参上したが・・・。 「すみません、泉こなたはただいま取り調べ中です」 看守に断られてしまった。・・・またダメですか・・・。と思っていた時だった。 「あ、そうだ。もう1人の容疑者なら取り調べが終わってますよ」 「へ?もう1人?」 誰か捕まったのでしょうか・・・? 「白石みのるです。盗撮犯の」 「あぁ、彼ですか・・・」 まぁ、盗撮は犯罪だから・・・か。捕まって当然か・・・。 「折角だから、聞いておこうよ。ちよちゃん」 「そうですね・・・」 という事で、こなたの話は諦め、わたし達は白石みのるの面会をする事になった。 「は〜い、僕を呼んだのは誰で・・・・って、君達はぁぁああああああああああああっ!?」 白石は登場して、わたし達を見た途端に激しく怯え出した。相当、法廷が効いたようだ。 「あ、あのぅ。そんなに恐がらなくても・・・。わたし怖くないですよ〜。まだ10歳の女の子ですよ〜」 ちょっと、ぶりっ子ぶってみた。 「う・・・ん。ま、いっか。僕に解る事なら何でも話しましょう・・・」 白石は冷静さを取り戻した。 「それで、何で女の子の着替えを覗き見て盗撮してたんですか?」 「ひぎゃぁっ!やっぱり、それ聞いちゃいますか?」 恵那は白石の神経をえぐる質問をしてみた。ちょっと、黒いな・・・。この子・・・。 「盗撮の件はどうでもいいとして・・・。白石さんはどう思います?小此木さんやこなたさんの事は・・・」 わたしは強引に話を戻した。 「そうですねぇ。法廷で君が言ってた通りだと、店長は怪しいけど、彼が事件発生まで事務室にいたんですよね・・・」 「そういえば、そう法廷で言ってましたよね・・・白石さん」 確かに、白石の言う通りだ。いくら現場を操作する時間が20分あったとしても、理由がない。 「やっぱり、小此木は1度も事務室を出なかったんですね・・・」 「う〜ん、1度だけ事務室を出ていたけど・・・」 「え?」 白石は意味深な事を言い出した。 「ただ、店内には行きませんでしたね・・・」 「何をしてたんですか?小此木さんは」 「事務室で読んでいたメニューをメニューラックに戻していただけでしたよ」 「メニュー?」 白石が言うには、小此木は事務室でメニューを見て何か仕事をしていたらしい。 「でも、もしメニューに毒が塗られていたとしても、コーヒーは手掴みで飲むものじゃないし・・・」 「う〜ん、確かに・・・関係ないでしょうね・・・」 結局、大した手がかりにはならなかった。 「それじゃ、わたし達はまた現場に行ってみます。また何か思い出したら、些細な事でもいいので教えて下さいね」 「えぇ、解りました。協力しましょう・・・」 そう言い、白石は独房を帰っていった。 「じゃぁ、ルミエールに行こうか。ちよちゃん」 「そうですね、特に営業事務室や路地裏はもう少し調べなおした方がよさそうですしね・・・」 という訳で、わたし達はルミエールを目指した。 9月13日 午後2時58分 喫茶店・ルミエール 「よぅ、お前ら!」 ルミエールに着いて突然、ジャンボと遭遇してしまった。 「あ、ジャンボ刑事さん!」 恵那は親しそうに話し掛けた。もう打ち解けているようだ。 「いやぁ、正直恐れいったぜ。小岩井の弟子ってのは伊達じゃねぇんだな」 「いやぁ・・・ありがとうございます・・・」 わたしは照れ臭そうに頬をピンクに染めて頭を掻いた。 「あの状況で、小此木を告発出来る奴なんて、小岩井くらいだぜ!!」 ジャンボは小岩井の親友だけに、彼を語る時は楽しそうである。 「あ、そういえば・・・小此木さんは?」 そう、彼の話は聞いておかないと・・・。 「あぁ、彼なら検事局に連行されたぜ。今日は話は出来そうにねぇな」 「そうですか・・・」 残念・・・。貴重な証人なのに・・・。 「じゃぁ・・・あの、営業事務室に行きたいんですけど・・・」 「あぁ、店なら開いてるから好きに入っていいぜ。それと、かおりんなら路地裏の調査をしてるから、用があるなら会いに行ってみろよ」 ジャンボは親切にかおりんの居場所まで教えてくれた。この人、結構いい人かもしれない・・・。 9月13日 午後3時4分 ルミエール・営業事務室 わたし達は、無人の営業事務室に入った。警官の見張りもないから、自由に調べられそうだ。 「ねぇねぇ、だったらさぁ!金庫開けちゃおうよ!」 「いやいやいや、開けたらまずいですって!!」 恵那は物騒な事を言いながら、金庫に近付いた。・・・って、ダメだってば・・・。 「あ、あれ?ねぇ・・・ちよちゃん・・・」 「ん?どうかしましたか?」 恵那は金庫のナンバー入力を指差した。 「あれ?どういう意味だろう・・・」 よく見ると、最初の2ケタが既に入力されていたのだ。 「えっと、・・・「1・0」が入力されてますね・・・」 ということは、出頭前に小此木さんが何かを取り出そうとした可能性がある。 すると、中身が気になる。 「でも、わたし達・・・。金庫の暗証番号なんて知らないよ?」 「あ、そうか・・・」 「これを開けられるのは、小此木さんだけか・・・まいったなぁ・・・」 恵那はどうしても金庫を開けてみたいらしい。 「あ、そうだ!」 わたしは急に閃いた。 「あのね、恵那ちゃん。金庫の暗証番号を入力する時にボタンを触りますよね?」 「触る・・・?あ!指紋!!」 わたしは昨日、かおりんからもらったアルミ粉を取り出し、粉を付着させて息を吹きかけた。 「あ、ちよちゃん!見て、「1・0」の他に「4」と「2」が!!」 「4」と「2」の部分にも指紋の跡が残っていたのだ。 「つまり、「1042」か、「1024」と入れれば、開くはずだよね!」 恵那は早速、「4」「2」の順で入力したが、 ブブブー 警報音が鳴り、失敗した。ということは・・・。 「1024・・・か・・・」 わたしは、1・0・2・4と入力した。すると、金庫のノブが回り出し、金庫が開いたのだ。 「な、何これ・・・?び、瓶?」 何と、金庫の中には大量の小瓶が発見されたのだ。しかも、証拠品の毒薬の小瓶と同じタイプの小瓶がたくさん。 「なるほど・・・読めてきましたね・・・。とりあえず、指紋を付けないようにしながら1本貰って、かおりんに見てもらいましょう!」 わたしは手袋をして、小瓶を1つカバンにしまった。 「あ、ちょっと待って!ちよちゃん!」 恵那は突然、わたしに声を掛けた。 「この小瓶とこの小瓶、よく見て・・・」 恵那は証拠と同じタイプの中身の小瓶と、薄い桃色の液体が入った小瓶を指差した。 「この小瓶、中身が違いますね・・・」 「こっちも薄いピンクの液体の瓶も見てもらおうよ!」 「そうですね!」 わたしは、もう1つの小瓶もカバンにしまった。 「あとは何か・・・ん?これは?」 わたしは、一緒に入っていた新聞紙に気が付いた。 「これ、古新聞ですよね・・・。日付は・・・”10月24日”!!」 「ち、ちよちゃん、金庫の番号って・・・1024じゃなかったっけ?」 ぐ、偶然・・・じゃないですよね・・・。この古新聞は重要な手がかりになりそうです。 そう思ったわたしはついでに新聞紙もカバンに入れた。 「じゃぁ、早速。かおりんに見てもらいましょう!!」 という訳で、わたし達はかおりんのいる路地裏へ向かった。 9月13日 午後3時36分 ルミエール路地裏 路地裏では、かおりん率いる鑑識チームが総出で捜査をしていた。よく見ると、榊さんも一緒だ。 「かおり〜ん!!」 恵那はかおりんの元へ元気よく駆けていった。そういえば、大阪さんの娘なんですよね、この子・・・。訳ありそうな・・・。 「あれ?恵那ちゃん。それとちよちゃんも・・・」 「ジャンボ刑事にここにいるって聞いて来ちゃました」 恵那は明るく答えた。それにしても、鑑識チームがいつになく真剣に取り組んでいる。 「そういえば、かおりん巡査部長さん・・・」 わたしは改まって質問してみる事にした。すると、かおりんは・・・。 「かおりんでいいよ。大阪のトコの子達なんだし、気を使わなくてもいいよ」 と、優しく言ってくれたのはいいんだけど・・・。わたしは大阪の子じゃありません。 「かおりんさん、何かあったんですか?」 「あぁ、ほら。あなたがここでマヤマヤーを見つけて、エレメンタルオキシロイドの反応が出たって言ったでしょ」 「はい、言っちゃいましたよ」 「そしたらね、よみ検事に命令されちゃって路地裏を調査して、何か手掛かりを見つけろってさ・・・。何様のつもりなんだろうね」 かおりんは不機嫌そうな態度で言った。 「リーダー、陰口はよくない。検事だって、何か真実を見つける手がかりが欲しいのだろうから・・・」 榊は静かにかおりんを注意した。 「はぁ〜い、榊さぁ〜ん!」 かおりんはデレ声で応えた。というか、本当にどっちがリーダーなのやら・・・。 「真実か・・・、あの検事が真実を求める様には見えないんだけどねぇ・・・」 かおりんはボソっと聞こえない様に独り言をグチった。 「それで?何か手掛かりでも見つかったんですか?」 「う〜ん、1つだけ妙な跡があっただけかな・・・」 かおりんは歯切れが悪そうに答え、ポリバケツを開けた。 「ここの所なんだけどね・・・」 かおりんが指を差した場所には青白い光を帯びたものが不自然に長方形に切り取られた形で残っていた。 「何ですか?この光は・・・」 「あ、これ?これは化学反応の跡だよ」 と言い、かおりんはスプレーを取り出した。 「このスプレーで吹き付けると、エレメンタルオキシロイドが付着したモノに青白く跡が残るのよ」 と、かおりんは説明をした。言われてみれば、コーヒーカップにもそんな跡があったっけ。 「でも、なんなんだろうね。この不自然な痕跡は・・・」 「何か、この間のともちゃんの事件みたいですね・・・」 わたしは前回の事件で、血痕が切り取られた跡の事を言った。 「う〜ん、そうだね・・・。あの時は血痕の付着したテスト用紙があったから、その可能性に気付けたのよね」 「今回もそれと同じでその長方形とぴったり合う形のものが関係しているかもしれませんね・・・」 「あ、もしかして!それが本当の凶器だったりして!!」 恵那は急にとんでもない発言をし、わたしとかおりんは硬直してしまった。 「ほら、あの盗撮犯の人が通報している間に約20分あったでしょ。その間にポリバケツの中に凶器を捨てた。どうかな?」 「「それだぁっ!!」」 わたしとかおりんは大声を上げた。当然だ、恵那の推理がとんでもない真相を示している気がするからだ。 「流石は恵那ちゃん!じゃぁ、ご褒美にこのスプレーをあげる!!色々調べまくってみてよ!」 かおりんは毒薬検出のスプレーを恵那にプレゼントした。この人自力でやる気がないな・・・。 「ちよちゃん達も何か手掛かりになりそうな事があったら、色々聞いてね。事と次第によっては検事に伏せといてあげるから!」 かおりんはよみ検事が何か気に入らないらしく、大阪と影でこそこそ極秘捜査をする事があるらしい。 「じゃぁ、この小瓶なんですけど・・・」 わたしは小此木の金庫の中に入っていた小瓶を2本かおりんに見せた。 「この小瓶は?」 「小此木の金庫の中に大量に入っていたんです。もしかしたら・・・と思って・・・」 「ちょっと待って、調べてみる!」 かおりんは脱脂綿を取り出し、その小瓶の液体で湿らせ、スプレーをかけた。 すると、思った通り、青白く反応したのだ。 「色が変わった・・・」 「という事は・・・、小此木基弘はエレメンタルオキシロイドを不正に大量所持していた事になりますよね?」 「なんてこと・・・」 かおりんはとんでもない真実に唖然とした。 「で、もう一つの薄ピンクの液体も一緒に入ってたの?」 「はい・・・」 かおりんは薄ピンクの液体も同じ要領でスプレーをかけた。 すると、赤紫色に化学反応を起こしたのだ。 「あれ?何で赤紫になっちゃったの?」 恵那は不思議に思い、質問すると、かおりんの表情が真剣になった。 「ウソでしょ・・・。こんなことが・・・」 「だ、大丈夫ですか?かおりんさん、顔色悪いですよ?」 「鑑識チーム全員集合っ!!」 かおりんは急に大声で鑑識チームを緊急招集した。 「か、かおりん。どうかしたのか?」 「榊さん、今すぐにチームの半分の人を連れて営業事務所にお願いします!そして、金庫の中身を緊急回収して下さい!!早く!!」 「わ、解った・・・」 かおりんは指示を怒鳴りちらし、焦り出した。そして、榊はチームの半分の人を連れて営業事務所に入っていった。 「と、とんでもない事になった・・・」 「かおりんさん?どうかしたんですか?」 わたしはかおりんの態度が気になり、質問してみた。 「ちよちゃん、恵那ちゃん!!大手柄だよ、あんた達はとんでもないものを発見しちゃったんだ・・・」 かおりんはいつになく真剣な表情で応えた。 「ど、どういう事ですか?」 「こっちの薄ピンクの液体、エレメンタルガーネットっていう液体なんだけど・・・、これは違法な麻薬なのよ・・・」 「ま、麻薬!?」 わたしはとんでもない事実を知り、驚きを隠せなかった。まさか、事件に麻薬が絡んでいたなんて・・・。 「この麻薬を飲んだ人間は、急に興奮状態になり、冷静さを失い、急に暴れ出す危険な麻薬なの・・・」 「な、何ですって!?」 「でも、この麻薬。遅効性で、効果が現れるのに10分かかるから、取締を回避される事があって問題になったの」 遅効性・・・?エレメンタルオキシロイドに似ている・・・。 「そして、このエレメンタルガーネットに青酸カリを入れて化学反応させると無色透明の液体になり、エレメンタルオキシロイドに変わるの」 「な、何ですって・・・!?」 似てる名前と特性だと思ったら、まさか・・・。エレメンタルオキシロイドに化学反応させる前の液体だったとは・・・。 「ちなみに、麻薬押収と密売人の逮捕に成功したのが2年前の10月24日のことだったわ・・・」 「じ、10月24日!?あの金庫の暗証番号と同じだ・・・」 「な、何ですって!?」 かおりんは更に表情が真剣になっていった。 小此木はエレメンタルガーネットが手に入らなくなった日を金庫の暗証番号にしていた。 きっと、彼が2年前の事件に関わっている可能性は濃厚だ。 「じゃぁ、まさか・・・。小此木基弘は・・・?」 「2年前に運よく逃げ切れた麻薬密売人の可能性が出てきたね・・・」 かおりんの一言で空気が一気に冷え切った。まだ9月なのに、寒気がするくらいに・・・。 「ちなみに、この事件は何処で起こったんですか?」 「埼玉県の春日部駅前の路地裏で闇売買されていた所を押収したの。麻薬なら、埼玉県警本部に保管されているわ」 埼玉県警か・・・。あとで、行ってみよう。 「それじゃぁ、あたし。ジャンボ刑事と刑事課課長にこの事話してこなくちゃいけないから、大阪によろしくね!」 「あ、あの・・・その大阪さんの事なんですけど・・・」 わたしはかおりんを引きとめた。この人と大阪の関係が気になったからだ。 「かおりんさんは大阪さんの友達・・・なんですよね?」 「ま、まぁ、友達というか・・・。仲間みたいなものというか・・・」 かおりんは何か気まずそうに返事した。 「ジャンボ刑事さんから聞きました。よみ検事を相手に引き分けたって・・・」 「あぁ、3年前の事件の事・・・か」 かおりんは表情が暗くなった。 「ジャンボ刑事さんが警察関係者で知らない者はいない有名人とか聞いてたんですけど。わたし、彼女が弁護席に立ったのを見たことがないんですよ」 「・・・大阪は3年前の事件が終わった後、確かに法廷には一切立たなくなったよ・・・」 「え!?ど、どうしてですか!?」 3年前の事件以来法廷に立っていない?そんな奇妙な事実に、わたしは驚かされた。 「それは・・・。大阪自身の問題だから・・・。どうしても気になるなら、本人の口から聞いてみる事だね・・・」 結局、かおりんは理由を話してくれる事はなかった。それどころか、妙に寂しそうな顔をしている・・・。 きっと、人に話す事もつらい記憶なのだろう・・・。 「まぁ、その事件は今回と関係ないから、いいでしょ・・・。それより、紹介状書いてあげる・・・」 「紹介状?」 かおりんは封筒と便せんを取り出した。 「何だかんだ言っても、あんた達は部外者だからね。埼玉県警署長に、許可貰わないとね」 そう言い、かおりんは紹介状をさらさらと書きあげた。 『紹介状 この2人に県警本部内の地下倉庫への立ち入りを許可して頂きたい。 責任は全て、水原暦検事が取ります。よろしくお願い致します。 関東地方警察局鑑識課巡査部長・かおりん』 と、書いてある紹介状をわたしに手渡した。水原検事の責任で、いいのだろうか・・・。 「じゃぁ、あたしはこれからジャンボ刑事のところに行くから・・・」 そう言い、かおりんは路地裏を残った部下達に任せて去った。 「それじゃぁ、一旦事務所に戻って準備してから行こうか・・・」 わたし達はとりあえず、一旦体制を立て直す為に事務所に戻る事にした。 9月13日 午後4時12分 美浜法律事務所 「いやぁ、疲れたぁ〜」 恵那はそう言い、ソファーに座りこんだ。すると、 「あ、お帰り〜!お2人さん」 大阪が事務所の奥から出てきた。 「かおりんから茶菓子もらったんやで。今、お茶淹れるな」 そう言い、大阪は給湯室へ行って、茶を用意し出した。 ちょうど大阪が来ているなら、かおりんから聞き出せなかった3年前の話を聞かないと。 「お待たせ〜!今日は、榊ちゃんから貰ったピーチティーやで〜」 大阪は給湯室から、マドレーヌとピーチティーを運んで、テーブルに並べた。 「わぁ、美味しそう!!」 恵那も立ち上がり、席についた。 「ところで、捜査はいい感じに進んでるかな?ちよちゃん」 「まぁ、少しずつ見えてきたところです・・・」 「そっか。そりゃ、よかった。最初の段階じゃ、こなたちゃん以外には犯行は不可能やったから心配してたんやで」 そう言い、大阪はピーチティーを軽く口にした。 「ところで、大阪さん!」 わたしは真剣な顔で大阪を睨んだ。 「ちょ、ちょっと!?何や!?そんな目で見んといて〜」 大阪はちょっとだけ動揺した。 「大阪さん、それよりも3年前に事を聞かせて下さい!かおりんさんとジャンボ刑事から聞きました。よみ検事相手に引き分けたって・・・」 「よみ検事・・・水原暦の事やね?」 大阪は落ち着いた表情でわたしを見つめた。 「あたしは確かに3年前、ある被告人の弁護を引き受け、弁護席に立った。相手の検事が天才検事と聞かされてはいた・・・」 「その被告人って、どんな人だったんですか?」 「あたしの先輩だったんや・・・」 「え?」 大阪は寂しい表情を隠しながら、冷静に話しだした。 「彼は小岩井の一番弟子でな、誰よりも依頼人を信じ、そして勝利よりも真実を見つける事を優先する人やった」 「何か、大阪さんみたいですね・・・」 「まぁ、そう言ってくれると嬉しいわ。あたし、彼を尊敬して慕ってたから・・・」 大阪の表情が段々優しくなってきた。それほど、尊敬していたのだろう・・・。 「それだけに、彼は小岩井と口論になりやすかったけど、当時新米のあたしを可愛がってくれた優しい人やった」 大阪はカップをテーブルに置いた。 「自分の勝利と名声の為だけに弁護をする小岩井は、あの事件で証拠をねつ造して、あたしがそれを立証したんや」 「こ、小岩井さんがねつ造!?」 わたしはとんでもない事実に驚かされた。 「小岩井は最低な男やった。自分の勝利しか頭に無くて、その為ならどんな手でも使う奴やった。だから、あたしと先輩はあいつと反発してたんや」 「そ、そういえば・・・前の事件の時・・・」 わたしはともちゃんの事件で小岩井が大阪を邪見にしていたのを思い出した。 「あの事件に関してはそれ以上は話せないなぁ・・・」 「そうですか・・・」 大阪は3年前の事件の話はあまりしたくないのか、それとも何か訳があるのか解らないが、それ以上は話そうとしなかった。 「あぁ、そや!さっき、成美ゆいが来てたで!」 「ああ!こなたさんの弁護を引き受ける様に薦めた人ですね!婦人警官の」 「そや。彼女から、泉家の自宅住所のメモを貰ったんや。後で調べてみるといいで!」 「ありがとう、大阪さん!」 わたしは大阪さんから泉家の住所が書かれたメモを貰った。 「とりあえず、今回の事件はあたしなりにも極秘で調査はしてみたけど・・・。2年前の事件の事をよく調べておいた方がええね」 「やっぱり、大阪さん気付いていたんですか・・・。2年前に春日部で起こった麻薬事件を・・・」 「まぁ、毒薬の名前が特殊やからな・・・。気にはしてたんや・・・」 確かに、エレメンタルガーネットは既に警察に押収された麻薬だけに、普通の手段じゃ手に入らない・・・。 2年前の春日部の事件がポイントになるのはやはり、明確だったか・・・。 「ありがとう、大阪さん。いいヒントになりました!」 「まぁ、最後まで気を抜かない事やな」 「じゃぁ、行きますよ恵那ちゃん!」 「あぁ、マドレーヌがぁ!」 わたしはマドレーヌをほうばった恵那ちゃんの手を引き、タクシーに乗り込んだ。 9月13日 午後4時20分 移動中のタクシーの中 わたしは恵那とタクシーに乗り込むと、早速スプレーを取り出した。 「ちよちゃん?何するの?」 恵那は不審そうに尋ねる。 「折角の時間がもったいないから、移動の時間を使って証拠品を調べてみようと思いましてね」 「あぁ、なるほど!それに移動中の車内なら誰にも見られずに済むしね!」 「さぁ〜て、どの証拠品に毒の反応が出るでしょうかね」 と、ノリ気なわたし達を前に、 「あのぅ・・・」 と、不安そうに小さな声を掛けて来たのはタクシー運転手だった。 「ま、まさか、わ、私をその毒で殺す気じゃないですよね?」 タクシー運転手は怯えている。 「いやいやいや、わたし達は弁護士で、しかもこれから向かう場所は県警本部ですよ?そんな無益な行為する訳ないじゃないですか!」 わたしは、必死でドライバーを説得した。どうも、誤解を受けやすい様だ・・・。 「じゃぁ、ちよちゃん。何から見ていく?」 「そうですねぇ・・・」 わたしはどうしても腑に落ちない証拠品があり、それを真っ先に調べる事にした。 「ん?それって、メニュー・・・だよね?」 そう。わたしが取り出したのは、マヤマヤーを発見した時偶然近くで拾ったメニューである。 「メニューなんて調べてどうするの?」 「ちょっと、気になる事があるんですよ・・・。恵那ちゃん、あのポリバケツを覚えています?」 わたしはかおりんが化学反応で見つけたポリバケツの不自然な跡の事を言った。 「あぁ、そういえば。あの形不自然に切り取られてたよね?」 「えぇ、もしかしたら、このメニューに毒が反応したりしてと思って・・・」 「じゃぁ、早速やってみようよ!」 わたしはスプレーを取り出し、メニューに振りかけてみた。すると・・・。 「・・・どうやら、正解だったみたいですね・・・」 何と、メニューのページのフチ全てに毒の反応が検出されたのだ。つまり、このメニューから毒が入った可能性もありえる。 「ちょっと待って!でも、普通・・・。メニューなんて口に入れないよ?」 「あ・・・」 「それに、こんな所舐める人だっていないし、触ったとしても、何か口にする時にはお手ふきで手を拭いちゃうから意味ないんじゃないのかな?」 「あ・・・あ・・・」 恵那の鋭い突っ込みにわたしはタジタジになっていた。冷静に考えてみたら当然だ。メニューなんて普通舐めたり、口に入れたりしない。 「結局、何の手がかりにならなかったね」 「と、とにかく!何かの役に立つハズだから、一応データは残しておきましょう!」 「ちよちゃんって・・・負けず嫌い?」 「う・・・・」 恵那の突っ込みは時々鋭いので困りものである。 「お客さん、そろそろ目的地に着きますよ」 タクシードライバーがそう言うと、目の前に埼玉県警本部の建物が見えてきた。 ここで何か重要な手がかりを掴むんだ! 9月13日 午後5時21分 埼玉県警本部・待合室 わたし達はタクシーを降り、埼玉県警にやってきた。 アポはかおりんがあらかじめ取っておいてくれたので、紹介状を見せれば通してくれる手筈になっている。 「はい、お嬢ちゃん達。何の用かな?」 わたし達が10歳なのをいい事に子供扱いされてしまった。 「あの、わたし。弁護士でして、コレ弁護士バッチです」 わたしは弁護士バッチを見せた。 「あらぁ、よく出来た玩具ですねぇ・・・」 この婦警さん、失礼な人です。受付は納得してくれない。こういう時は・・・。 「あの、かおりん巡査部長の紹介で来たんですけど、コレ紹介状です」 「か、かおりん様ですね?しょ、少々お待ち下さい!!只今、確認致します!!」 受付の女はかおりんの名前を聞いた途端慌てて、アポの確認をした。かおりんの働いている警察局は県警の1ランク上なので、県警の人は逆らいにくいのだ。 「確認が取れました。ただいま、担当の華蝶がそちらに参ります」 すると、バーコード頭の中年オヤジが奥から出てきた。 「君達かな?かおりん巡査部長の紹介で来たという弁護士は?」 「あ、はい!これ、紹介状です!」 わたしはバーコード頭の中年オヤジに紹介状を渡した。 「ふむ、なるほど。解りました、確かにこれはかおりん巡査部長の字のようだ」 意外とすんなりバーコード頭の中年オヤジは納得してくれた。意外といい人そうだ。 「私は、刑事課課長の華蝶と申します。以後よろしく」 「弁護士の美浜ちよです!わたし達こそよろしくお願いします」 互いに自己紹介を済ませた。それにしても、華蝶って・・・。変な名前・・・。 「それでは、地下の資料室へ案内致します。どうぞ、付いてきて下さい」 そう言い、華蝶はわたし達を地下への階段入口へ、案内した。 9月13日 午後5時25分 埼玉県警本部・地下資料室 県警本部地下資料室に案内されたわたし達。華蝶はIDカードで部屋を開け、わたし達を中に入れた。 地下だけにほこりを被っている資料がやたら多くある部屋だ。広さは10畳ほどといったところだろう。 「え〜っとですね。こちらです」 華蝶はエレメンタルガーネットが保管してある保管庫を開けた。 すると、小此木の金庫で発見した薄桃色の液体の入った小瓶と同じ小瓶が大量に入っていた。 「それにしても・・・妙ですね・・・」 わたしは、2年前の事件で全て押収されたと聞かされていただけに、小瓶が少な過ぎる気がしていた。 「やはり、気がつきますか・・・」 「2年前に新聞に乗る程の大事件で全て押収したワリには少な過ぎますからね・・・」 すると、華蝶は気まずそうな顔をして、説明を始めた。 「実は、1週間くらい前になりますか・・・。急に、押収された筈の小瓶が盗まれたのです」 「ぬ、盗まれた!?警察署内ですよ?」 県警本部内の地下の資料室から麻薬を盗むなんて、凄い度胸がある人もいたものだ。 「ねぇ、ちよちゃん。もしかして、ここの県警の誰かが盗んだのかな?」 「い、いや・・・警察官を疑うのはよくないですよ?」 「むぅ〜」 恵那はわたしに注意されると頬を膨らませ、ムっとした顔でいじけた。 「華蝶さん、この部屋に入る方法って、さっきカードを通していましたけど・・・。どんな条件があるんですか?」 わたしは念の為に尋ねてみた。何か凄い手がかりになると予想して・・・。 「そうですねぇ、ここに入るにはこのIDカードが必要です」 華蝶はわたしに自分のIDカードを見せた。 「そのIDカードの所持者は?」 「IDカードは警察官なら誰でも持ってはいますが、ここに入れるIDは埼玉県警内の警察官か、県警署長以上の身分の人達のみですね・・・」 やはり、恵那が言う様に共犯者が警察官の可能性が高いのか・・・。わたしは可能性を色々考え込んではみたが、他に方法は浮かばなかった。 「但し、ここの警察官ならば、巡査でも開けて入る事は可能でしょうが・・・」 「巡査レベルで関われる程軽い事件じゃない・・・ですものね・・・」 わたしは共犯者がこの県警内のいたとしても、該当者に心当たりはなかった。 「あ、そうでした!この事件の新聞の切り抜きがあるんですが、いりますか?」 「あ!お願いします!!」 わたしに頼まれた華蝶はファイルの中から新聞の切り抜きを持ってきた。 すると、そこには大きく写真が映っていたのだ。しかも、そこに映っていたのは・・・。 「ち、ちよちゃん!!コレ、被害者の泉宗二郎さんじゃない?」 恵那が指摘した所を見ると、確かに写真の撮り占められている連中の近くに泉宗二郎の姿があった。 「どうやら・・・繋がりましたね・・・」 「ちよちゃん?」 「恐らく真犯人はこの事件と何か関係がある・・・。そして、泉宗二郎に恨みを持った・・・。そう考えるべきでしょう・・・」 「でも、問題は小此木がどうやってここの麻薬を持ち出したか・・・だね」 確かに、華蝶も言っている通り、入室可能な人物は限られている。それだけに小此木1人で犯行は不可能・・・。 「あの華蝶さん、この新聞記事のコピー貰っていいですか?」 「あぁ、いいですよ。ちょっと待っててくださいね。今、そこのコピー機に通すから・・・」 そう言うと、華蝶は指を舐め、新聞記事を1枚取り出した。 『異議あり!』 わたしは法廷でもないのに、ついうっかり癖で異議を申し立て、華蝶に指を突きつけた。 「な、な、何ですか!?」 華蝶は急の異議申し立てに焦り出した。 「あ、ご、ごめんなさいっ!つ、つい癖で・・・」 わたしは自分がやった事に今更気づき、華蝶に赤面しながら頭を下げた。 「ちよちゃん?どうかしたの?」 恵那も不審そうに尋ねてきた。確かに、何の理由もなく異議を申し立てたように見えたのだから仕方がない。 「あの、華蝶さん・・・。さっき、指を舐めて新聞をめくりましたよね?」 「え?あ、あぁ・・・はい。私、もう見ての通りの歳でして、指がカサついてページをめくりづらくて、つい指を舐めちゃうんですよ」 「そういえば、そういう人時々見ますけど、結構いるんですか?」 わたしは真剣な表情で尋ねた。 「そうですね、40代にもなれば、大概の人は指がカサついてしまうものですから・・・」 わたしの中でやっと全ての真相が見え始めていた。一見、不可能に見えた時間差トリックに、泉宗二郎に対する動機。 あとは、共犯者が誰か・・・か。 「あの、コピー出来ましたよ」 華蝶はわたしに新聞のコピーを渡してくれた。 「華蝶さん、ありがとうございます!!あなたのお陰で事件が解決しそうです!」 わたしは元気よく明るい笑顔でお礼を言った。 「え?あぁ・・・よく解りませんが、どういたしまして・・・」 華蝶はそのまま資料室の外まで見送り、別れた。 9月13日 午後6時23分 埼玉県警本部・待合室 「あれ〜?弁護士さん!」 県警を出ようとするわたし達に婦人警官が話掛けてきた。 「あ!あなたは、確か・・・こなたさんの従姉の・・・」 「ゆい姉さんだぞ〜!」 ゆいは明るく応えた。 「弁護士さん、どうしたの?こんなところで?」 「わたし達はちょっと資料を見に来ただけですけど・・・」 「え?あ、そうなんだ・・・」 ゆいはちょっと歯切れが悪そうに答えた。 「ゆいさんこそ、何の用があったんですか?」 「何って、私はここの職員だし!」 そうだった、この人。埼玉県警の交通安全課の巡査とか言ってたっけ・・・。 「ところで、事件は何処まで解ったの?」 ゆいはわたし達に状況尋ねた。従妹の無罪がかかってるから当然・・・か。 「そうですね、あとちょっとで真犯人を追いつめられるところまで、近付きましたね」 「そっか!流石は、小岩井弁護士の弟子だね・・・」 ゆいは、突然小岩井の名前を上げた。 「ゆいさん、いつから知っていたんですか?わたしが小岩井さんの弟子だって・・・」 「そりゃぁ、知ってるよ。小岩井弁護士は有名だもの・・・。その弟子と来れば、依頼せざる得ないと思ったの!」 ゆいは明るく応えた。わたしも小岩井さんに憧れて弁護士になった身。そう言われるのは嬉しいものである。 「さてと、わたし達は行きますね。泉こなたさんの話も聞かないと・・・」 「そっか!こなたちゃんによろしくね!」 ゆいは明るく手を振った。 「成美ゆいさん!明日の法廷、見に来て下さいね!絶対、無罪を勝ち取りますから!」 「うん!明日フリーだし、見に行くよ〜!」 わたしはゆいのその声を聞き、県警を後にした。 「ちよちゃん、次は何処に行くの?」 「決まってるでしょ、刑務所ですよ。こなたさんの話を聞かないと・・・」 わたしは、締めに刑務所に向かった。最後のカギを持つのは、恐らく泉こなたしかいないと信じて・・・。 9月13日 午後7時36分 刑務所エントランス もう時間は夜の7時を過ぎていた。 「もう面会時間はとっくに過ぎてます。お帰り下さい!」 わたしは看守に入室拒否されそうになった。 「あの、わたし!泉こなたの弁護士の美浜ちよと言うんですけど・・・彼女と話がしたいんですが・・・」 「だから・・・ん?ミハマ・・・?」 看守はわたしの名前を聞くと、首を傾げた。 「あの、弁護士の美浜ちよ様ですか?」 「は、はい・・・」 看守はわたしの名前を尋ねた。というか、名前言ったんだけど・・・。 「あなたなら、特別面会許可が下りています。どうぞ!」 「え?いいんですか?」 「はい!6時前にかおりん巡査部長から連絡がありまして、刑事課課長の署名書をFAXで送って来まして、「美浜ちよ」を名乗る弁護士が来たら通してやって欲しいと」 「か、かおりんさん・・・」 かおりんはとことん、わたし達の味方になってくれている様で、お陰で待望の面会にありつけた。 9月13日 午後7時44分 留置所・面会室 わたしが面会室のイスに座ると、独房から看守に連れられ、泉こなたが現れた。 「弁護士さん!!やっと来てくれたんだ〜!!嬉しいよぉ〜!!」 こなたはわたしが一度も面会に来るチャンスがなかったので、寂しかったらしい。 「わたしも、ダメかと思いましたよ。何とか、鑑識課巡査部長が刑事課課長に掛け合ってくれて、特別に許可してくれたんです」 「やふ〜!それじゃぁ、色々おしゃべりしよ!!」 こなたはわたしと話せる事が嬉しいらしいけど、こっちは捜査で来ているので、真剣な顔で応えた。 「泉こなたさん、わたしは捜査で来ているんです。それに留置所で、看守にも聞かれるんですから、事件に関係のない事は省かせてもらいますよ」 「いやぁ〜ごめんごめん・・・」 こなたはそう言うと、明るく謝罪した。 「あ、そうだ。法廷で聞いてて気になったんだけど・・・」 こなたは何か気付いたらしく、質問してきた。 「やっぱり、店長が犯人なの?」 「・・・断言は出来ませんが、少なくとも・・・。小此木基弘は事件に無関係ではないと思います・・・」 「うぅ・・・あの人、結構いい人そうに見えたのに・・・何で・・・」 今まで笑顔で通してきたこなたが寂しそうな顔をした。それだけ、小此木を信頼していたのだろう・・・。 「実際に法廷でもロクに話もしてなかったから、念の為あなたの主観で、泉宗二郎が入店してから事件発生までの話を聞かせて下さい」 「別にいいけど・・・」 こなたはちょっと歯切れが悪そうに答えた。 「でも、白石みのるさんが言ってた事と大して変わらないんだよねぇ・・・」 「そういえば、ジャンボさんも言ってたよね、盗撮犯さんと店長の行動のアリバイに関しては3人とも同じ証言だったって・・・」 恵那は口を挟んで来た。 「そう。お父さんにコーヒー運んだのは確かに私だし、メニューもおしぼりもお冷も運んだのは私1人で、あの2人は近付いてもいないんだよね」 「それで、事件が発生した直後に気絶しちゃったんですよね?」 「うん・・・。流石にびっくりしちゃって、軽い脳震盪を起こしちゃってたみたい・・・」 という事は、法廷で立証した通り。その間に白石みのるは外で通報しに出掛け、小此木が残されたという事になる。 「あ!そうだ。これは聞いておかないと!」 わたしは、白石みのるの面会で聞かされた事を尋ねてみる事にした。 「泉宗二郎が入店する前に、白石みのるが目撃したシーンなんですけど、小此木基弘が事務室から出て、メニューをラックに戻したと言っていたんですが・・・」 「あ!それなら知ってるよ!」 と、こなたは明るく応えた。何か心当たりがあるようだ。 「今朝、出勤してくる時に店長が青い封筒の手紙を見た時に血相抱えてメニューを1冊、事務室に持って行ったんだよ」 青い封筒・・・か。 「そんで、お父さんが入店する直前に戻してた・・・。多分、クレームか何かが来たんじゃないのかな・・・」 「こなたさんっ!!」 わたしは身を乗り上げ、こなたを真剣な目で見つめた。 「はわわっ!!何なに!?私何かまずい事でも言った?」 「そ、その青い封筒は今何処に?」 「確か、店長が自分で机の中にしまってたよ。あの手紙のクレームが相当ヤバかったみたいで、店長顔が真っ青になってた」 青い封筒・・・、重要な手がかりになりそうですね。後で調べてみましょう・・・。 「あ!そうだ!」 今度は恵那が乗り出してきた。 「あ、ちょっとちょっとぉ!質問には素直に答えるから2人とも座って座って・・・」 わたし達は真相に近付いているだけに、冷静さを完全に失っていた。 「それで、何?」 「あぁ、こなたさんって、事務室の金庫開けられるの?」 この子は、とんでもない質問を・・・。と、わたしは冷や汗びっしょり掻いていた。 「無理、知らない。もし、開けれたら金庫の金盗んでとんずらしてるだろうし・・・」 恵那は冷ややかな目でこなたを睨んだ。 「あ、冗談だよ!冗談!!そんな事しないって!!」 こなたは慌てて否定し、わたしはほっと肩の力が抜けた。どうやら、こなたは金庫の中身も開け方も知らないらしい。 「じゃぁ、最後に1つ・・・。大事な事を確認させてもらいます・・・」 「え?他に話せる事は・・・」 「2年前、春日部で起こった麻薬事件を知っていますか?」 「まやくじけん?」 こなたは何それ?と言いたそうな顔をした。 「何それ?」 って、そのまま言うか・・・。 「実はですね、この写真なんですけど・・・」 わたしは例の新聞の写真を見せた。 「わぁ、これ、お父さんだ!・・・あぁっ!!思い出した、そういえば2年前に駅前歩いてたら警察に逮捕されかけたって言ってた!!」 「え?じゃぁ、つまり泉そうじろうは?」 「お父さんが麻薬と関わる理由なんてないよ。興味ないし・・・。そういうの」 つまり、偶然写真に写ってしまったのか・・・。 「ねぇ、ちよちゃん。金庫に入ってた新聞も見せてみようよ」 恵那は興味本位にもう1つの新聞も取り出した。しかし、こっちには泉そうじろうは映っていない。 「こなたさん、こっちの新聞も見てくれますか?店長の金庫に入ってた新聞なんだけど・・・」 恵那はもう1つの新聞を見せた。すると、意外な答えが返ってきたのだ。 「あれ?この手前の2人・・・」 「え!?知ってるんですか!?」 何と、泉そうじろうの映っていない写真に映された人物に心当たりがあるらしい。 「知ってるも何も、右の人は店長だよ。髪下ろしてて、気付かないだろうけど・・・」 「え・・・えええええええええええええええええええっ!!!」 まさか、小此木が麻薬事件の関係者・・・。とんでもない事になってきた。 「あと、こっちの人なんだけど・・・」 こなたの話は続きが存在していて、こなたは左の人物を指した。 「この人、きー兄さんだよ」 「き、きー兄さん?し、知りあいですか?」 誰だ?その人・・・。こなたは知らない人の名前を上げた。 「成美きよたか。ゆい姉さんの旦那さんだよ・・・。2年前に単身赴任の帰りに亡くなったらしいんだけど・・・ね」 「な、なんですって!?」 わたしは慌てて情報をメモした。2年前の事件はとんでもない真相を示していたんだ・・・。 麻薬事件の関係者の小此木基弘と、偶然か故意かは知らないが写真に映された、泉そうじろうと成美きよたか・・・。 一体・・・2年前に何が起こったって言うんだ・・・!? 9月13日 午後8時45分 ルミエール・営業事務室 捜査にキリを付けた警察官が帰って行き、わたし達は最後の捜査に乗り込んだ。 泉こなたが言っていた、青い封筒を見つける為に・・・。 「こーら!何してるのかな?」 「きゃぁぁあああああああああああああっ!!」 急に声を掛けられ、わたしは大声を上げてしまった。 「こらこら、ちよちゃん。大声出したらあかんよ」 背後から、2人の人物が突然現れた。その人物は・・・大阪とかおりん。 金庫の調査の際に、偶然立ち会った大阪とかおりんが合流したらしい。 「何か探しもの?」 大阪はわたしに尋ねた。 「はい!確か、この机の中に・・・」 「あ、あった!これじゃないかな?ちよちゃん!」 隣の引き出しを開けていた恵那は青い封筒を発見した。 「恵那ちゃん、早速その中身を確認しましょう!」 わたしは手袋をした状態で、青い封筒の中身を見た。 『殺人者に告ぐ これが最後のチャンスだ。今日の2時過ぎに来る40代の男を 毒殺せよ。やり方は任せる。しかし、必ず成功させる事だ・・・。 さもないと、2年前の事をマスコミに公表するぞ・・・』 とワープロ文字で書いてあった。 遂に見つけた・・・。決定的な証拠を!! 「ちよちゃん、その青い封筒は何?」 「えっと、大したものじゃありませんから・・・」 「え〜、殺人者に告ぐ・・・か。かおりん、脅迫状やな。でも、これじゃあ、筆跡鑑定は出来へんけど・・・」 大阪にバレてしまった。敵と味方の区別も出来ないのか?この人・・・。 「つまり、小此木基弘はこれに従って泉そうじろうを殺害したのね・・・」 「あ、あのかおりんさん・・・これは・・・」 「あぁ、ちよちゃんが持っててよ。見つけた者勝ちだしね」 かおりんはそう言い、脅迫状の事は水原検事に内緒にすると約束し、封筒を取らずに帰った。 「さぁ、いよいよ本番だね!ちよちゃん!!」 「えぇ!!明日で決着をつけますよ!!」 わたしは明日の法廷で小此木基弘を追いつめる。そして・・・もう1人の黒幕を引きずり出し、決着を着けるんだ!! つづく |