カキーン!
ざわざわざわざわ・・・・。
裕太「何か最近随分と部活が騒がしいなぁ・・・」
美香「あと半年で高校総体だからね」
武「まぁ、帰宅部の俺らには関係ないけどな」
美香「あ!総体で思い出した!」
裕太「何だ?」
美香「あたしの友人のなつきがソフト部のエースとして活躍するかも!」
裕太「なつき?」
武「可愛いの?」
美香「可愛いというか、健気なんだよね。これから会ってみる?」
武「うんうん!会いたい!」
裕太「そういえば、そのなつきって子、入学して半月経つのに今日初めて聞くなぁ」
美香「クラスが違うから、あまり話す機会がないんだよね。部活忙しいだろうし・・・」
裕太「何気に気使ってるんだな・・・」
3人は教室を出た。
#4:名ピッチャーの悩み
グラウンド、ソフト部の活動が始まろうとしていた。
なつき「先輩!こんにちわ!」
先輩A「あぁ、雨宮か。あんたはあそこの草むしりしたら挨拶要らないから勝手に帰っていいわよ」
なつき「あそこのって・・・、大して草なんか残ってませんけど・・・」
先輩A「ラッキーね、早く帰れるじゃないか」
なつき「あははは・・・」
なつきはグラウンドの草むしりをしている。
なつき「最近、草むしりばかりでつまらないなぁ・・・。しかも、草なんてロクに生えてないし」
そこに、
美香「あれ?なつき?」
なつき「え?美香!?あ、ちょっと待って今終わるから」
なつきはバケツを片付けて、美香達と体育館の裏に行った。
裕太「美香、この子が例のソフトボールの名ピッチャーなのか?」
美香「そうだよ。雨宮なつき、あたしの中学時代の友達なんだ」
裕太「俺で言えば、タケみたいなものか」
なつき「美香、彼は?」
美香「あぁ、あたしと同居してるハトコのユウくんとその友達の松岡くん」
武「松岡武です、よろしく」
裕太「それよりよぅ、その名ピッチャーが何で草の生えてるか微妙な所で草むしりなんてしてるんだ?」
武「言われてみれば、そうだな・・・。ちょっと酷い扱いでもボール拾いくらいはしててもおかしくないのに・・・」
2人はなつきの扱いを妙に思った。
なつき「あたし、先輩に嫌われてるんだ・・・」
美香「えぇ!?」
なつき「だから、いつも草の生えてるか微妙な所の草むしりさせて、挨拶なしで帰す様な事してるの」
裕太「それって、悪く言うと、「お前なんて来なくていい」って言ってるみたいじゃねぇか?」
なつき「そうだね、そんな感じの扱いだよ」
美香「でも、何で?中学時代、名の知れたピッチャーだった、なつきがどうして?」
武「まさか、何処か怪我して、投げられないとか?」
なつき「いや、その逆かな・・・」
武「逆?」
なつき「実は・・・・」
【回想】
入学から数日後の放課後・・・。
なつき「1年、雨宮なつき!よろしくお願いします!」
先輩A「雨宮なつきって、あの有名な中学のMVPに選ばれたピッチャーじゃないの!」
先輩B「今年は全国に行けるかもしれないわね!」
先輩C「雨宮、キャッチャーやるから、お前のピッチング見せてよ!」
なつき「はい!」
なつきと先輩は位置についた。
なつき「じゃぁ、行きますね!」
先輩C「来い!」
ビュッ!!スパーン!
先輩C「ぐぉぁあっ!?」
ズサーッ!
なつきのボールをキャッチした先輩は威力で後ろに軽く跳ね飛ばされた。
なつき「せ、先輩!大丈夫ですか?」
先輩C「いってぇ!!コラッ!雨宮ぁっ!!」
なつき「せ、先輩?」
先輩C「こんな剛速球止められる訳ねぇだろ!!」
先輩B「大丈夫か!?」
先輩A「ウチにこんな球を止められるキャッチャーなんていない・・・」
先輩B「ピッチャーが強くてもなぁ・・・」
先輩A「雨宮、お前はあそこの草むしりな!」
【回想終了】
なつき「という訳なんです・・・」
武「普通、そういう場合さ。受けられる様にキャッチャーも練習したりとかしねぇのかよ?」
美香「そうだよねぇ!最低な先輩だね」
裕太「なぁ、タケ。お前確か小学校の頃に少年野球チームでキャッチャーやってたとか言ってたよな?」
武「おう!」
裕太「彼女の球を受けてみろよ。俺もどんなもんか見たいし」
武「いいねぇ!やろうぜ、いいだろう?なつきさん!」
なつき「本当にいいの!?松岡さん!」
武「おう!喜んで!」
なつき「やったぁ!久し振りに遠慮なく投げられる!」
武「じゃ、ちょっとキャッチャーミット借りてくるぜ」
武はキャッチャーミットを借りに行った。
数分後。
武「おっし、借りてきたぜ!」
なつき「じゃ、早速やろう!」
なつきと武は距離をおいた。
なつき「いくよ、松岡さん!」
ビューン!!スパーン!!
武「ぃよぉし!いい球ぁ!!」
なつきのボールはど真ん中に入った。
裕太「すっげぇ・・・。確かにアレ打ち返す自身はねぇな」
美香「なつきの凄い所は速いだけじゃないんだよ」
裕太「え?」
なつき「もう1球いくね!」
武「おう!」
ビューン!!スパーン!!
武「ぉぉおおっ!!」
またもや、なつきのボールはど真ん中に入った。
武「凄ぇ、凄ぇよ!なつきちゃん!!」
なつき「有難う!松岡さんのキャッチャーも上手だよ」
武「こうも綺麗にストライクが続けて決まるピッチャーなんてそうはいないよ!」
裕太「なるほど、命中率もいいのか・・・」
美香「そういう事。彼女、中学の大会でノーヒットノーランを達成させた事もあるんだから!」
裕太「こりゃぁ、お世辞抜きで名ピッチャーだな・・・」
美香「まぁ、なつきの面白いのはここからなんだけどね」
なつき「松岡さん!次は変化球行くよ!右バッター相手の外角高めね!」
武「おう!」
ギュイーン!!スッパーン!!
武「おぉぉおおっ!!」
なつきの投げた球は綺麗に外角高めのストライクゾーンに決まった。
裕太「凄ぇ・・・。変化球もイケるんだ・・・」
美香「他にもフェイクボールにフォークボールだって投げられるんだから!」
武「いやぁ、本当に凄ぇよ。なつきちゃん!」
なつき「えへへへ・・・」
武「でも・・・、だからこそ・・・勿体無いな・・・」
なつき「松岡さん・・・」
武「こんないい剛速球を投げられるピッチャーがいるのに、それを受けられないキャッチャーがいないなんてさ・・・」
裕太「そうだな・・・。折角の雨宮の腕が勿体無いぜ」
なつき「確かに、問題はそこなんですよね・・・。ソフトボールは女子の球技だし・・・」
美香「そうだ!だったら、あたし達でなつきの球を受けられるキャッチャーに相応しい女の子を探して連れてこようよ!」
武「それ、いいねぇ!美香さん!」
裕太「そうだな・・・。俺もその意見に賛成だ。明日の放課後にでもそれらしき女を探してみるか」
なつき「美香・・・、大野さん・・・、松岡さん・・・。本当に有難う!」
美香「じゃ、片付けて帰ろうか」
なつき「うん!」
4人は一緒に片付けて帰った。
翌日・・・。
なつき「それで?この人達が?」
美香「多分、受けられると思うキャッチャー志望の女子なんだけど・・・」
3人は体格のいい女子を3人連れてきていた。
山ゴリ「まずは私ね!レスリング部身長215cm体重109kg!山郡毒子!よろしく!」
なつき「よろしくお願いします!」
2人は位置に付いた。
なつき「行きますよ!」
ビューン!!スパーン!!
山ゴリ「きゃぁぁあああああああああああっ!!!」
山ゴリはあまりの剛速球に転倒した。
山ゴリ「何て球投げるのよ!このぅ!!」
山ゴリはなつきに襲い掛かる。
裕太「タケ!出番だ!!」
武「へ?」
山ゴリ「うっほほぉおおおおっ!!」
武「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!」
山ゴリのレスリング技が次々と武に決まった。
山ゴリ「やってられないわ!」
山ゴリは怒って帰ってしまった。
その後、女子サッカー部キーパーの金剛誓子と女子柔道部100kg超級の猿渡末子が挑戦したが、
金剛「もういや!!」
猿渡「私も帰る!!」
結局、誰1人として、受けられる女子はいなかった・・・。
裕太「まいったなぁ・・・、結局誰も止められないのか・・・」
美香「落ち込まないでね、なつき。いいキャッチャーが見つかるまでマツタケくんが相手してくれるから」
武「そうだぜ、俺でよければいつでもキャッチャーやってやるさ」
なつき「有難う・・・、松岡さん・・・」
武「折角だ、何本かやろうぜ!」
なつき「うん!」
2人は距離を離し、
ビューン!!スパーン!!
投球練習を行っていた。
武「いいよ!いい感じ、どんどん来な!なつきちゃん!」
なつき「行くよ!」
ビューン!!
その時だった。
スパーン!!
武「・・・・あれ?」
なつき「え?」
武の前に1人の女がなつきのボールをキャッチした。
武「誰だ!?」
???「なるほど、あんたが例の名ピッチャーの雨宮なつきだね?」
なつき「貴女は!?」
命「アタシは陣野命、1年。中学時代、ソフト部のキャッチャーをやってたわ」
なつき「えぇ!?あたしと同い年なの!?」
命「アンタ、あの駄目ソフト部に除け者にされたでしょ?」
なつき「う、うん・・・」
命「あいつら、やる気の欠片もない上、顧問もサボってばかりだからなぁ・・・」
なつき「そうなんだ・・・」
命「それに、先輩だからって、アタシの指示を聞こうともしないから、こっちから辞めたよ」
なつき「そうだったんだ・・・」
裕太「確かになぁ、キャッチャーはただボールを受けるだけでなく、周りに指示も出さなきゃならないからなぁ・・・」
武「結構頭使うんだよな」
命「なぁ、雨宮!アンタとアタシでバッテリー組もう、そしてあの駄目先輩共を見返してやるんだ!」
???「でも、それだけじゃ、バッテリーだけのワンマンチームにならないかなぁ〜」
そこに、バットを片手に持った1人の女子が出てきた。
命「アンタは?」
カガリ「オレは早乙女カガリ、1年!中学時代はそれなりに名が通ったバッターだったんだぜ。守備はセンター、よろしくな!」
なつき「カガリさんは何かあったの?」
カガリ「オレはさ、フリーバッティングでホームラン打ちまくるから、ボール拾いが大変って追い出されたんだ」
命「普通、そこでボール拾いの心配するかねぇ?」
美香「でも、バッテリーとバッターが揃ったんなら、この3人でソフト部にもう1度掛け合ってみたら?」
命「だが!」
裕太「高校でも有名な選手で居たいんだろ?」
カガリ「いいのかなぁ・・・。オレみたいなのがまた行って・・・」
そこに、
なつき「行こうよ!あたし達3人で交渉すればどうにかなるかもしれないよ!」
武「そうだな・・・。やらないより、やって砕けるってのも悪くないんじゃねぇか?」
命「そうだな・・・。やってみるか!」
カガリ「オレも一緒に行くぜ!」
3人はソフト部に交渉しにやってきた。
翌日、放課後グラウンド。
なつき「先輩!」
先輩A「あ?何だ、まだ居たの?」
なつき「もう1度、あたしにピッチャーやらせて下さい!」
先輩C「寝ぼけてんの?誰もあんたの球は受けられないんだ!」
命「キャッチャーならアタシがやるよ」
先輩C「お、お前はあの時の・・・・」
カガリ「そして、センターもバッターもオレに任せな。先輩!」
先輩B「げっ!あの時の!?」
命「どうだい?これで文句はないだろ?」
先輩A「ま、まぁ・・・。1度くらいは大目に見てやるか・・・」
3人と先輩は守備位置についた。
命「なつきーっ!まずは、ど真ん中で来な!」
なつき「うん!!」
先輩B「大丈夫なのか?この2人は?」
先輩はバッターボックスに立った。
なつき「行くよ、命!」
ビューン!!スパーン!!
先輩B「はぃいいっ!??」
命「いいねぇ、その調子だ!なつき!」
先輩B「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あんな球打てる訳ないでしょ!?」
命「何言ってるんですか?だから、いいんじゃないですか」
先輩B「え!?」
命「相手チームはこの球を打たなくちゃならないんですよ」
先輩B「あぁっ!?」
なつき「先輩、こんな感じのバッテリーですけど、どうですか!?」
先輩A「い、いいんじゃないかなぁ・・・」
先輩C「す、凄ぇ!これなら、ノーヒットノーランで勝ち抜けるかもしれない!!」
先輩A「よし、今年のバッテリーはあんた達で行くわよ!」
なつき「はい!」
命「まかせて下さい!」
2人は大いに喜んだ。
カガリ「先輩先輩、面白いのはここからですよ」
カガリはバッターボックスに構えた。
命「なつき〜!また、ど真ん中で来な!」
なつき「うん!」
カガリ「さぁ、来い!」
なつき「行くよ!」
ビューン!!カッキーン!!
先輩C「う、打った!?」
球はショートの頭を超え、レフト上空へ来た。
命「レフトフライ!!」
先輩A「オーライ!オーライ!」
スカッ!
レフトはエラーをかました。
先輩C「凄ぇ、アレを打ったよ!」
先輩A「どうやら、この3人は受け入れるべきね」
先輩B「あんた達の正式入部を許可する!」
命「本当ですか!?」
カガリ「おっしゃー!!」
なつき「有難う御座います!!」
こうして、3人の入部は正式になった。・・・が、まだ問題が残っていた。
先輩C「こりゃ、今年はいい所まで行けるよ!絶対!」
命「いや、この程度で行ける程、世の中は甘くないですよ、先輩」
先輩C「どういう事?」
命「今のレフトフライのエラーですよ。ちょっと前に出ればあれくらい簡単に取れたのでは?」
先輩C「そうだなぁ・・・」
カガリ「オレなら取れたぜ。あの程度のフライなら」
命「とはいえ、ウチの顧問はやる気ないしなぁ・・・」
なつき「じゃぁ、誰かコーチが出来る人を探せば!!」
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