5月も終わりに近づき、もうすぐ梅雨がやってくる頃の事である・・・。
教室。
リョウ「今日のHRだが、来月の頭にあるHR合宿の班分けをしたいと思う」
夏美「そもそも、HR合宿って何?」
武「合宿する程のHRをするって事じゃねぇ?」
夏美「うわ、マジ!?最悪〜!」
リョウ「篠原、松岡、勝手な解釈するな。これは高校入学して2ヶ月経った状態でのみんなの仲をより深める為の合宿だ」
美香「わぁ〜、いい企画ですね。先生」
リョウ「篠原見習え、これが汚れ無き態度って奴だぞ」
夏美「ヘイヘイ」
リョウ「それで、班分けだが、男女それぞれ五人一組で組んでもらうから、とりあえず適当に組んでみてくれ」
という訳でHR合宿の準備が開始された。
#5 失われた笑顔
昼休み、班長会議が空き教室で行われた。
美香「ん?裕くん、班長になっちゃったの?」
裕太「あぁ、タケにやらせない為に自己犠牲した」
美香「あはは、裕くんらしいね」
裕太「そういう美香も班長じゃねぇか」
美香「あたし、こういうイベントもの好きだから、つい仕切りたくなっちゃうんだよね」
裕太「でもま、男女班合同の2日目のキャンプ実習で組む相手に困らないのは楽でいいけどな」
キャンプ班も決まり、
さやか「それでは、班長会議を終わります」
会議は終了した。その時だった・・・。
リョウ「遠藤、ちょっといいか?」
美香「え?あたしですか?」
リョウ「あぁ、悪いがちょっと付き合ってくれ」
美香「せ、先生!あんな若そうな奥さんが泣きますよ」
裕太「そっちの「付き合う」じゃねぇだろ」
リョウ「相変わらず、いいコンビだな」
裕太「ほっといて下さい」
美香「それで、話って何です?」
リョウ「ちょっと、来い。折り入って頼みたい事があるんだ」
リョウはそう言い、美香を連れて廊下に出た。
その頃、教室では・・・。
茜「・・・・」
リン「ちょっと宮沢さん!どういう事ですの?」
茜「何だ?」
リン「何だじゃありませんわ!貴女だけどの班にも入らないなんて、何考えてますの?」
茜「お前の知った事じゃないだろう。お嬢さま」
リン「キー!!何ですの!?その態度!!人が折角親切に誘ってらっしゃると言うのに!!」
茜「私に関わるな、シャクに触る」
リン「ムッキー!!もうどうにでもなりやがれですわ!」
リンは去った。
リョウ「・・・とまぁ、そういう訳だ」
リョウは美香に教室の状況を見せ、説明した。
美香「あたしに宮沢さんを自分の班に入れればいいんですね?」
リョウ「そうなんだが、あいつ人と関わろうとしないんだよ」
美香「そういえば、あたし自身が彼女を知ったのは、今さっきの様な・・・」
リョウ「こういう事は、お前しか頼めないんだ!いいかな?遠藤」
美香「ちょっと手強そうですけど、あたしも出来る限りの事はしますよ!クラスで1人だけ仲間外れがいるのは嫌ですしね」
リョウ「恩に着るよ、遠藤。成功したら、今度お前の家庭とウチの一家で焼肉連れて行ってやるよ」
美香「約束ですからね」
リョウ「おい、宮沢。ちょっと来い」
茜「先生・・・。何か用ですか?私は何も用ないですよ」
リョウ「お前に無くても俺にはあるんだよ!」
茜「手短にお願いします。用事がつかえているので」
リョウ「率直だが、お前は遠藤・篠原と同じ班に決定した」
茜「な、何を勝手に決めてるんですか!?私は誰とも・・・」
リョウ「そういう事だから、遠藤後は任せたぞ」
リョウは去った。
茜「ったく・・・」
美香「そういう訳だから、よろしくね。茜ちゃん!」
茜「宮沢。茜って気安く呼ばないでよ。馴れ馴れしい・・・」
美香「馴れ馴れしいって?あたし達同じクラスの仲間でしょ?」
茜「うるさい、私に関わるな・・・」
美香「つれないなぁ〜。あたしはただ茜ちゃんと仲良くしたいだけで・・・」
茜「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」
バン!!
美香「きゃっ!」
茜「あ・・・」
茜は強引に美香の手を振り払ったと同時に美香はそのまま尻餅をついた。
美香「いった・・・」
茜「・・・!」
裕太「おい、大丈夫か?美香・・・」
美香「うん、平気だよ」
裕太「おい、宮沢・・・。謝れよ・・・」
茜「・・・悪いのはお前の方だ。わ、私は謝る気なんてない・・・」
裕太「宮沢っ!!」
茜「鬱陶しいんだよ・・・。特に、お前らみたいな奴見てると虫唾が走る・・・」
裕太「何だと・・・」
美香「やめて、裕くん」
美香は裕太の腕を掴んだ。
裕太「放せよ、美香。あの女許す訳には・・・」
美香「いいの!悪いのはあたしなんだから・・・」
裕太「美香・・・」
茜「付き合っていられないな・・・」
茜は背を向けて歩きだした。
裕太「おい、何処に行く気だ?」
茜「帰る・・・」
裕太「ちっ、勝手にしろ・・・」
茜は帰っていってしまった。
裕太「・・・ったく、美香も美香だ。何であんな女に構うんだよ」
美香「最初は河原先生に頼まれただけだったんだけど、あたし自身が仲間外れが1人いるってだけで見ていられないの・・・」
裕太「・・・ふっ、優しいな・・・。美香は・・・」
美香「・・・フフ、有難う・・・裕くん・・・」
裕太「まぁいいか。帰ろうぜ、タケと夏美を待たせてるんだ」
美香「うん!」
2人も教室を出た。
喫茶店エトワール・・・。
夏美「何!?リョウちゃんにそんなの頼まれたの!?」
武「宮沢茜ってあの無愛想な子だよな。地味で目立たなくて・・・」
ウェイトレス「じ、地味!?」
1人のバイトが反応した。
武「ん?」
美香「あたしは、相手が無愛想でも地味でも目立たなくても構わないの。仲間外れだけは絶対作りたくない・・・」
美香は無視して話を進める。
裕太「だけど、宮沢は自分から誰とも仲良くしようとしないって感じだったよな・・・」
美香「きっと、何か事情があったんだよ。だから・・・」
裕太「まぁ、それは考えられる事実だな。肉親を失ったショックで人付き合いをしなくなる人ってものありえるみたいだし・・・」
武「・・・何か何処かで聞いた事ある話だな・・・」
裕太「え?」
夏美「・・・言われてみれば・・・、裕太に出会ったばっかりの時もそんな感じじゃなかったっけ?」
裕太「俺がか?・・・違うだろ・・・」
武「違くねぇだろ。俺達が話し掛けなかったら・・・」
裕太「・・・そっか。そういえば、そうだったな・・・」
【回想】
5年前・・・。
担任「今日からこのクラスに転入してきた、大野裕太君だ。みんなよろしく頼むよ」
このクラスに裕太が転入してきた。
武「よぅ、新入生!歓迎するぜ!」
裕太「あ、ああ・・・」
夏美「ねぇねぇ、前は何処に住んでたんだ?」
裕太「!!」
夏美「え?ちょ、ちょっと・・・!?」
裕太「前の学校の事は思い出しねぇ・・・」
夏美「な!?な、何よ?もしかして、いじめられてたとか?」
武「安心しろよ、いじめられたら、この俺がやり返してやるからな!」
裕太「そんなんじゃねぇよ・・・。・・・ただ・・・」
夏美「何よ、じれったいなぁ・・・。男なら全部吐き出しちゃいなよ!」
武「そうだぜ、俺達もう友達だろ。お前の悩みを受け止めてやるよ」
裕太「簡単に言うな・・・」
武「おいおい、そんなに深刻な事なのか?」
裕太「う、うるせぇ!!こんなに早く両親に死なれた気持ちなんか、お前らなんかに!!・・・あ!」
武「お、お前今・・・」
裕太「・・・くっ!」
夏美「りょ、両親に・・・死なれた・・・?」
武「そ、そういう事だったのか・・・」
裕太「今はとりあえず父親の実家のここに来ているけど、それもいつまでもつか・・・」
武「ど、どういう意味だ!?」
裕太「じいちゃんもばあちゃんもそろそろ身体がもたなくなってきてるんだ・・・」
夏美「そ、そんな・・・」
武は立ち上がった。
武「心配すんなよ、大野!もし、最悪な事態になって今の家に居られなくなったら、ウチに来い!」
裕太「ま、松岡・・・」
夏美「ウチだって、親父が喜ぶから大歓迎だぜ!」
裕太「し、篠原・・・」
武「今度、暇な日にでも3人で泊まり会でもやろうぜ!なぁ、夏美」
夏美「お!いいねぇ、お前にしては冴えてるじゃん!タケ!」
武「おいおい、ボンクラみたいに言うな。ちゃんと考えて行動はしてるんだぜ!」
裕太「クク・・・」
裕太は笑い出した。
武「お、大野?」
裕太「いや、悪い・・・。お前達見てると昔の幼馴染を思い出して・・・」
武「幼馴染?俺達みたいなもんか・・・」
夏美「その子って可愛いの?」
裕太「そ、そうだな・・・。悪くはないとおもうぞ」
夏美「じゃ、じゃぁ・・・あたしとどっちが可愛いかなぁ・・・?」
武「勝負にならねぇだろ」
夏美「うるせぇ!」
裕太「クク、本当にいいコンビだよ。お前らは・・・」
夏美「う、うるさい!笑ってないで質問に答えろ!」
裕太「そうだな・・・、可愛くない訳じゃないけど、守ってやりたいって感じのタイプかな・・・」
武「うわっ!臭いセリフだなぁ・・・」
裕太「うるせぇ、例えるのが難しいんだよ」
武「でも、気に入ったぜ。お前とならいい男友達になれそうだよ」
裕太「俺もだ・・・」
武「苗字で呼ぶの堅苦しいだろ。俺はタケでいいぜ」
夏美「あたしも名前で呼んでいいよ」
裕太「それじゃ、俺も裕太でいいよ。よろしくな、タケに夏美・・・」
こうして、3人はずっと仲良くつるんでいるのだった。
【回想終了】
武「まぁ、こんな訳よ」
美香「確かに、両親を失って辛いのは解るなぁ・・・。あたしもおじさんとおばさんにはお世話になってたし」
裕太「どうでもいいけど、ちょっと脚色されてねぇか?」
夏美「そうか?」
裕太「とりあえず、夏美はもっとやさぐれてたと思ったけど・・・」
夏美「やさぐれてねぇよ」
美香「でも、この昔話の意味ってあるの?」
裕太「要するに、相手の事をちゃんと理解した上で、受け止められるくらいじゃないと受け入れてもらえないって事だよ」
美香「でも、どうやったら理解出来るんだろう・・・」
裕太「そこが難しい所なんだよなぁ・・・。夏美は何か浮かばないか?」
夏美「あたしに振られても困るんだけど・・・」
裕太「いや、タケに振っても何も解決しないだろ」
夏美「それもそうか・・・」
武「悪かったな、そういうのに縁がなくて・・・」
裕太「美香、宮沢に親しい友人とか居たか?」
美香「聞いた事ないと思うけど・・・」
夏美「そもそも、居たらリョウが相談してこないだろ」
裕太「いや、同じクラスじゃなくて、違うクラスの奴とかでだよ」
美香「う〜ん、他のクラスの子って言われても・・・。なつきくらいしか知り合いいないし・・・」
夏美「なつき?」
武「お前、なつきちゃん知らねぇの?だっせー!有名人だぜ!!」
バキッ!
夏美「誰がダサイか!」
裕太「仕方ねぇんじゃねぇか。あの時、夏美は忙しくて顔出してなかったんだし」
武「まぁ、夏美なしで話成り立っちゃったしな・・・」
バキッ!
夏美「あたし抜きで成り立つ話があるかボケ!」
武「だ、第4話見てみろ、お前のセリフねぇぞ・・・・」
夏美「あれ?今が第4話じゃなかったっけ?」
武「5話だ!」
裕太「CMはともかく!雨宮を経由して、情報を集められないものか・・・」
美香「情報と言えば、さやかに聞いてみようよ!」
裕太「あぁ、委員長か・・・。確か、情報に詳しいんだよな?」
美香「よし、早速連絡取ってみる!」
夏美「美香、何か凄いやる気だね・・・」
裕太「一度言ったら聞かないからな・・・」
美香は金を置いてそのまま出て行った。
その頃、地方警察局・・・。
豹牙「よぅ、残業か?ご苦労だな・・・」
豹牙はあおいにコーヒーを差し出した。
あおい「うん、2年前の事件の申し送りが近いからね・・・」
豹牙「あぁ、WQ8号事件か・・・」
あおい「宮沢健一・・・。今でもあの名前は忘れないよ・・・」
豹牙「結構凶悪な事件だったからな・・・」
あおい「まぁ、死人が出なかっただけマシだけどね」
豹牙「この時の犯人は既に留置所出ているんだったな・・・」
あおい「裁判で、精神不安定状態が原因という事で済んじゃったから、懲役も短かったしね」
豹牙「それにしても、犯人の娘って1人でやっていけてるのか?」
あおい「その辺が微妙な所なんだよね・・・」
豹牙「まぁいい・・・。無事に申し送りが出来るといいな・・・、河原あおい刑事部長」
あおい「全くだね、焔豹牙刑事・・・」
翌朝、教室・・・。
さやか「おはよう、美香!」
美香「おはよ、さやか!!昨日の件どうだった?」
さやか「その件なんだけど・・・、ちょっとヤバい感じで・・・」
裕太「どういう事だ?委員長・・・」
さやか「2人とも、ちょっと人気のない所まで来てくれる?」
裕太「それだけ危険って事だな・・・」
美香「嫌な予感・・・」
2人は空き教室の影に呼び出された。
さやか「実は、彼女を調べていたら地方警察局のHPに到達しちゃったのよ・・・」
美香「け、警察局!?」
美香は奇声を上げた。
裕太「美香、静かに」
美香「ご、ごめん・・・」
美香は沈んだ。
裕太「つまり、何かの事件に巻き込まれたのか・・・」
さやか「実は、宮沢さんのお父さんが詳しい内容までは書いてなかったけど、WQ8号事件の犯人だったらしいのよ・・・」
裕太「だ、WQ8号事件・・・?どんな事件なんだ?」
さやか「そこまでは流石に書いてなかったわ・・・」
美香「どうにかして、この事件の事を聞けないかな・・・」
さやか「それなんだけど、面白いモノを発見したのよ」
美香「面白いモノ?」
さやかはある資料を取り出した。
さやか「この捜査責任者の所見てくれる?」
美香「捜査責任者?」
裕太「・・・河原あおい・・・?美香確かこの人って・・・」
美香「河原先生の奥さんだよ!」
さやか「つまり、宮沢さんの闇の原因であるWQ8号事件の真相を明かせば、彼女の闇をも払えるかも・・・」
裕太「でも、ちょっといいか?」
さやか「え?」
裕太は資料の中のある部分に気付いた。
裕太「この事件って、もう2年も前に解決してるぞ?しかも、既に宮沢の親父も出所してるし・・・」
|