風紀36:情に流されたら・・・
 群馬県安中市のある町・・・。
ぴんぽ〜ん!
女の子「は〜い」
男の子「よっ!」
小学校3年生の男の子が同い年で幼馴染の家にやってきた。
女の子「何だタケか、何か用?」
武「あぁ、母ちゃんが夕食の余り持っていけってよ」
女の子「あぁ、いつも悪ぃな。おばさんによろしく伝えておいてよ」
武「おう。それにしてもなっちー、お前も大変だな。父親と2人暮らしだろ」
夏美「でも、慣れちゃえば悪くはねぇよ。タケのおばさんからお裾分け貰えるから生活にも苦労しねぇしね」
武「ったく、女手が1人でもいりゃいいのにな、お前の家庭」
夏美「あたしも父ちゃんに再婚を求めてみたけど、拒否されちったんだよな」
武「何でだ?」
夏美「別居してる母ちゃんとは、離婚してないんだとよ」
武「お前も色々面倒な事に巻き込まれてるんだな」
夏美「まぁ、慣れちまったけどな」
武「早く家族4人で暮らせる様になるといいな・・・」
夏美「うん・・・」

風紀36:情に流されたら・・・

朝、校門を通り過ぎた辺りにて・・・。
あすか「ちーっす!」
あおい「あ、あすか!?あんた、昨日は勝手に帰っ・・・・。・・・・?」
あすか「あおい、昨日はごめんね。急に呼び出し喰らってさ・・・」
あおい「そう・・・なんだ・・・」
リョウ「ん?どうした、あおい・・・・」
あおい「いや、何でもない・・・」
そこに、
楓「あおいさん、あすかさん!おはようございます!」
あおい「ん?あ、あぁ・・・。おはよ・・・」
あすか「おはよう、今日も元気だね」
リョウ「(俺には挨拶なしかよ・・・)」
楓「ん?あすかさん、香水付けてます?」
あすか「あぁ、これね。昨日、玲子に貰ったんだよ」
楓「玲子?・・・あぁ、あの生徒会の綺麗な人ですね?」
あすか「そうそう、あいつ歳より老けてる様に見えるよね」
楓「化粧が上手な綺麗な人だとは思うんですけどね」
あおい「あまりそういう事言わない方がいいよ。生徒会の連中で結構しつこいから・・・」
あすか「あんたが一番言ってる事酷いわ・・・・」
暢気に話している3人とおまけ1人の所にまなみがやってきた。
まなみ「おっは〜!!」
あおい「相変わらず元気だね、まなみちゃん」
まなみ「だって、今日は臨時で新任の先生が来る日でしょ」
リョウ「初めて聞くぞ、その話・・・」
あおい「確か、会長が生徒会の担当の先生が癌で入院する代わりに来るとか言ってたよ」
まなみ「今日、朝礼で紹介があるから、どんな人か拝めるね」
リョウ「美人かなぁ・・・」
あおい「リョウって、そんなに美人教師がいい訳?」
リョウは冷や汗をかきながら・・・。
リョウ「悪いかよ!?」
あおい「ふ〜ん・・・」
あおいの視線が冷たい・・・。
楓「修羅場や・・・」
あすか「修羅場ね・・・」
まなみ「修羅場ぁ〜♪」
他の3人の視線まで冷たかった。



リョウ「俺が何かしたか!?」
まなみ「浮気〜♪」
リョウ「してないから!!・・・って、オイ!!」
あおい「諦めろって、人の噂も75日だよ」
リョウ「う・・・」
あおいは冷静にリョウを慰めた。
楓「あおいさんはどんな先生が希望ですか?」
あおい「ん?そうだねぇ・・・。やっぱ、白髪まじりで陰金そうで性格のキツイ人かなぁ・・」
リョウ「随分と変なのが好みだなぁ・・・」
あおい「だって、生徒会の担当だし・・・」
楓「あはは・・・、とことん生徒会が嫌いなんですね・・・」

・・・という訳で朝礼。
校長「それでは、今日は生徒会の山田先生が癌で入院する事になり、その代わりの先生を紹介します」
オールバックで無精ヒゲを生やした渋い男が壇上に上がった。
祥司「今日から、この学校に派遣された、篠原祥司だ。担当は公民だ、よろしく!」
永吉「以上、朝礼は終わり!各生徒は教室に戻れ」
朝礼は意外とあっさり終わった。
あおい「何か思ったより普通だったね」
リョウ「あんな普通そうな人が生徒会みたいなユニークな場所でやっていけるのか?」

その頃、ある場所では・・・。
豹牙「そういえば、麗亜の任務って何なんだ?」
真之介「あぁ、聞いてませんでしたか・・・」
豹牙「その時は総帥の所にいなかったんでな・・・」
真之介「結構重要な任務ですよ」
豹牙「重要?」
真之介「「河原さくら誘拐作戦」ですから・・・」
豹牙「河原さくら?・・・あぁ、河原紅蓮の姉とか言っていた女か・・・」
真之介「私も彼女も田中五郎の誘拐の時に気付いたんですよ、彼らの大きな弱点を・・・」
豹牙「弱点?」
真之介「彼らはお人よしです。知人を盾に脅迫すれば、簡単に身動き取れなくなる・・・」
豹牙「田中五郎の時は愛人を盾にする為に咲崎から俺と麗亜で誘拐してきたんだったな・・・」
真之介「まぁ、彼女は脅迫の材料になりますから、咲崎家の財産も頂いた様なものですよ・・・クーッククククククク・・・・」
豹牙「・・・ふぅ・・・。だが、そう簡単に事が進めばいいがな・・・」
真之介「大丈夫でしょう、彼らの人の良さに漬け込めば簡単です」
豹牙「・・・いや、中には動じない様な肝の据わった様な奴がいるんじゃないかとだな・・・」
真之介「いなくはないと思いますが、奴と彼女は無関係ですから、奴に関わりさえしなければ問題ないでしょう・・・・」
豹牙「・・・奴・・・、志村ジンか・・・」
真之介「あの学校にはあの男以上に肝の据わった奴は居ません。問題ないでしょう・・・」

場所は戻し、生徒会室・・・。何故かジンと祥司とあおいの3人でお茶会モードに入っている
ジン「初めまして、篠原先生。私が生徒会長の志村ジンです」
祥司「おう、よろしく」
あおい「あの・・・」
あおいは低腰で尋ねる。
ジン「なんだね?」
あおい「何で、あたしまで呼ばれているのかなぁ・・・と」
ジン「あぁ、生徒会と風紀委員の仲だ、一応挨拶くらいはした方がいいかと思ってな」
あおい「は、はぁ・・・。えっと、風紀委員長の河原あおいです」
祥司「・・・河原・・・?・・・もしかして、健太と翡翠の子か?」
あおい「!!先生、あたしの両親の知り合いなんですか!?」
祥司「あぁ、あの2人とは結構つるんでたよ」
あおい「へぇ・・・。昔はどんな感じだったんですか?」
祥司「あの2人、幼馴染でな。健太は物凄くお人よしで、翡翠は男勝りな感じだったな・・・」
あおい「あはは・・・、今とあんまり変わってないや」
祥司「そういえば、よく見ると翡翠の若い頃に良く似てるなぁ・・・」
あおい「親子ですからね・・・」
祥司「翡翠も若い頃はよく男子と間違えられる奴だった・・・。それ故にピントのズレた健太を引っ張ってたよ」
あおい「ピントがズレた・・・か。紅蓮やさくらにそっくりだ・・・」
祥司「・・・紅蓮、さくら・・・」
あおい「ん?どうかしました?」
祥司「あ、いや。何でもない(まさか、こんな近くにいるとはな・・・)」
あおい「さてと・・・」
あおいは席を立った。
ジン「もう戻るのかい?」
あおい「えぇ、今日はちょっと面倒な事がありそうなんでね」
祥司「面倒な事?」
あおい「こっちの話ですよ。篠原先生、また面白い昔話聞かせて下さいね」
祥司「あ、あぁ・・・」
あおいは生徒会室を出た。
祥司「・・・なるほど、彼女があの2人の姉か・・・」
ジン「えぇ・・・。しっかりしたタイプですよ・・・」
祥司「・・・フ・・・、あいつが何処までやれるか見ものだな・・・」

その頃、風紀委員室では・・・。
さくら「今日はちゃんと来たよ〜!」
カイ「たまには来ないと、あおいさんに迷惑ばかり掛けていられませんからね」
カイとさくらが入ってきた。
リョウ「っつっても、あおいはいないぞ」
カイ「あれ?」
リョウ「ジンさんとお茶会だとよ」
カイ「そうですか・・・」
そこに、
あすか「さくら〜、ちょうどいい所に!!」
さくら「あすかちゃん?」
あすか「どうしても解らない問題があってね・・・」
リョウ「こいつ、冬の補修が掛かってるからな」
さくら「とりあえず、見せてみ・・・」
さくらは言葉に詰まった。
あすか「ここなんだけど・・・」
さくら「・・・・」
リョウ「ん?どうした、さくら」
さくら「・・・貴女、誰?」
さくらはあすかを汚らわしいものを見るかの様な目で見た。
あすか「何言ってるの!?あたしは神崎あすかよ!」
さくら「違う!貴女は、あすかちゃんじゃない!!」
リョウ「おいおい、落ち着けよ。一体どうしたって言うんだ?」
さくら「だって、あすかちゃんは・・・」
そこに、
ガラガラガラ・・・
あおい「ただいま〜」
さくら「お姉ちゃん!この人誰?」
さくらは困った表情であすかを指差した。
あおい「・・・あすかでしょ・・・。見れば解るじゃん・・・」
さくら「そんな・・・」
あすか「流石は心の友!あたしの事よく解ってくれてるじゃん!」
あおい「あ、そうだ。あすか、ちょっと付き合ってくれる?」
あすか「ん?どうかしたの?」
あおい「ちょっと、手伝って欲しい事があってね・・・」
あすか「いいよ、付き合うわ」
あおい「じゃ、あすか連れて行くから皆仲良くね」
あおいはあすかを連れて出た。
楓「どうしたんだろう・・・、あおいさん・・・」
さくら「あれは絶対あすかちゃんじゃないよ。どうして誰も信じてくれないの?」
誠也「ん?焔、どうかしたのかい?」
誠也は楓の態度に気にかけた。
楓「いや、あおいさん・・・。確か、今日は予定がないとか言ってたんだよ」
誠也「でも、今さっきあすか先輩連れて出たよな?」
楓「気になる・・・」
さくら「楓ちゃんは信じてくれるのね!?」
楓「・・・確かに、今朝のあすかさんはどうも変だった様な・・・」
誠也「気になるなら、付けてみる?」
さくら「尾行するよ、楓ちゃん!」
楓「ウチもですか?」
誠也「僕も付いていくよ」
3人は委員室を出た。

体育館倉庫・・・。あおいはあすかをここに連れ込んだ。
あすか「それで?運び出したいのって、どれ?」
あおい「・・・・」
バタン・・・
あすか「・・・あおい?」
あおい「・・・もういいよね?猿芝居はそのくらいにしたら?」
あすか「ちょ、ちょっとあおい!?何言ってるの?」
あおい「本物の神崎あすかは何処に行ったか、聞いているんだよ・・・」
あすか「何言ってるの!?あたしは本物だよ!?本物の・・・」
あおい「これでも、本物と言い切る?」
あおいはあすかの顔を掴んだ。
ビーッ!!
麗亜「!!」
あおい「やっぱり・・・」
麗亜「あんた、どうしてあたしが神崎あすかでないと解った!?」
あおい「今朝、会った時からかな・・・」
麗亜「な、何!?」
あおい「本物のあすかは香水の匂いって、凄く嫌うんだよね・・・」
麗亜「え!?」
あおい「そんなに嫌いな香水を付けて登校してきた時点で変だと思っていたよ」
麗亜「バカな!?じゃぁ、何でさっきはさくらの前でそれを暴露しなかった!?」
あおい「余計な人を巻き込みたくないからかな・・・」
麗亜「ちっ!要注意人物欄に入っていないからと見て油断したが、河原あおい・・・、とんでもない奴かも!?」
あおい「さぁて、本物のあすかを返してもらおうか・・・」
麗亜「バカにしないで!あたしだって、暁団の四天王よ!お前みたいな名もない小娘にやられる程ヤワじゃないのよ!」
あおい「じゃぁ、腕の方も試してみたら?」
麗亜「後悔しても知らないよぉ!!」
麗亜はあおいにかかっていった。

その頃、ある場所の地下牢屋では・・・。
あすか「う〜ん・・・。あれ・・・」
本物のあすかが捕らえられていた。
あすか「ここは・・・牢屋!?何であたしが・・・。・・・は!昨日の夕方に出たあの女か!?」

【回想】

昨日、あおいが風紀委員室を去った後の事・・・。
あすか「いってぇ・・・。ん?」
麗亜「はぁ〜い」
あおいと入れ違いで麗亜が入ってきた。
あすか「ん?あんた誰?」
麗亜「あたし?あたしは篠原麗亜、以後宜しく〜」
あすか「それで、あたしに何か用?」
麗亜「貴女はちょっとスィートルームでお寝んねして貰わなくちゃならないのよねぇ〜」
あすか「遠回しに嫌味言ってくれるじゃん・・・。何が狙い?」
麗亜「河原さくらの誘拐・・・」
あすか「!!」
麗亜「確か、貴女は彼女と6年も一緒に暮らしてるのよね?」
あすか「さくらの誘拐にあたしを使おうっての?いい度胸してるじゃん・・・」
麗亜「ククク・・・」
あすか「このあたしが誰だか解っての考えなんだろうね?」
麗亜「えぇ、貴女の事は全てお見通し・・・。四神流・玄武・・・、風神の使い手・・・」
あすか「四神流の事まで知っているのねぇ・・・。いいよ、風の力みせてあげる!!」
2人は体育館裏へ行った。

体育館裏・・・。
あすか「さてと、あんたにさくらを誘拐させないからね!」
麗亜「フフフ、それはどうかな?」
麗亜はヌンチャクを取り出した。
あすか「ヌンチャク・・・。中国拳法か・・・」
麗亜「忠告してあげる!貴女はあたしに勝てない!絶対にね!」
あすか「へぇ、凄い自信じゃない・・・。だけど、あたしに武器は聞かないよ!!」
あすかが拳を振ると、麗亜に向かって突風が吹いた。
麗亜「きゃっ!!」
あすか「この時期は乾燥してるからねぇ、しかもこの地域は空っ風っていう冷たい空気も多い。あたしにとっては好都合なんだよね」
麗亜「なるほど、確かにこのままで闘えば、こっちが不利かもしれないね・・・」
あすか「そう・・・。この冷たい北風があたしの味方・・・。じめじめした風の少ない夏に来ればよかったね」
麗亜「(まったく、本当にこいつの言う通りだよ。間違えなく・・・。ん?)」
あすか「いくよ!玄武大旋風!!」
麗亜「(そうだ!)アタァー!!」
麗亜は壁を蹴り、あすかの頭上を飛び越えた。
あすか「背後に回ったって同じだ!!」
あすかはもう1発玄武大旋風を放った。
麗亜「よし、もらったぁ!!」
あすか「え!?」
麗亜は風の流れに身を任し、あすかに近づいた。
あすか「しまった!!向かい風!!」
麗亜「風使いともあろうものが情けないねぇ、風向きを忘れるなんて!!」
あすか「ぬ、ぬかせぇ!!」
麗亜「アチョォォオオオオオ!!!」
ビシッ!!
あすか「うぐっ!!」
麗亜のぬんちゃくがあすかの鼻にクリーンヒットした。
あすか「はぐぅ・・・」
あすかの鼻から大量の鼻血が出た。
麗亜「そういえば、貴女・・・。さっき、後輩の子の頭突きを喰らって鼻血出してたよね?」
あすか「!!・・・見てたんだ・・・。・・・だけど、鼻血程度で倒れるあたしじゃないよ!!」
あすかは麗亜に殴りかかろうとした時、
あすか「くっ・・・」
出血の酷さに立ちくらみをした。
麗亜「人間、誰だって自分の血には眩む。これで動きが鈍くなった訳だ。今度はこっちの番だよ!」

結局、あすかはあっけなく倒されてしまった。
麗亜「さてと、あとはこいつを運んで任務完了っと。意外と楽な仕事だったなぁ・・・」
麗亜は携帯を取り出した。
麗亜「四神流の1人の神崎あすかを捕獲し、戦力を欠かせた上、あたしが神崎あすかになりすまし、信頼度の高い河原さくらを誘拐する一石二鳥作戦・・・。成功したわね」
あすか「・・・へ、へぇ・・・。そういう作戦・・・なのね・・・」
麗亜「ん?まだ、喋れたんだ・・・」
あすか「あんたに忠告しとくよ、あたしを捕獲出来ても、さくらには近づけないよ!」
麗亜「それはどういう意味だい?」
あすか「あんたは絶対にあいつには勝てない・・・」
麗亜「あいつ?」
あすか「河原あおい、あんたには絶対に勝てないわ!」
麗亜「河原あおい?あぁ、あの風紀委員長?あんな小娘、相手にもならないね」
あすか「どうして、そう言い切れるの?」
麗亜「だって、要注意人物リストに載ってないのよ。問題外、対象外、予選落ち、はいさようなら!って言うのかな?」
あすか「フ・・・、本当にあおいと向き合った時のあんたの顔を見るのが楽しみだよ・・・」
麗亜「・・・ちょっと黙る?」
あすか「・・・いいよ。あたしを捕獲したいんでしょ?動かないから勝手に持っていきなよ・・・」
麗亜「フン、そうさせてもらうよ!」
麗亜はあすかを足を掴み、引きずっていった。
あすか「もうちょっと丁重に扱えないの?痛いんだけど・・・・」
麗亜「貴女は捕獲だから、生きていればそれでよし!」
あすか「ちぇ・・・」
あすかはそのまま捕獲されてしまった。

【回想終了】

あすか「・・・今頃、さくらはどうしてるかな・・・」
あすかはさくらを心配しだした。
あすか「あおいが何とかしてくれている筈!大丈夫、信じてるから・・・あおい!!
あすかは完全にあおいを信頼しきっていた。

場所は戻して、体育館倉庫の外。
誠也「ここに入っていったみたいだよ」
さくら「お姉ちゃん、大丈夫だよね・・・」
誠也「でも、よく香水の匂いなんかで解りましたねぇ?先輩」
さくら「これでもあたしはあすかちゃんと一緒に6年過ごしているのよ。香水嫌いくらいは解ってる・・・」
楓「じゃぁ、あおいさんもそれは解ってるんですか?」
さくら「あおいちゃんとあすかちゃんの2人の信頼関係は、はっきり言ってあおいちゃんと魁斗くんの関係より厚い筈・・・」
誠也「じゃぁ、まさか体育館倉庫の中にわざと誘い込んで仲間を巻き込まない様に仕組んだとか?」
ガキン!
楓「!!」
さくら「何、今の音?」
楓「中で戦闘が起こってる・・・」
誠也「え!?」
3人は恐る恐る体育館倉庫のドアに耳を当てた。

その頃、中では・・・。
麗亜「・・・な、何なの・・・!?」
あおい「・・・どうしたの?さっきから1発も当たってないよ」
麗亜「あ、あんた一体何者なの!?あたしの技が1発も当たらないなんてありえない!!」
あおい「何って?ただの風紀委員長だよ、麗亜さん」
麗亜「アッチョォォオオオオオッ!!!」
麗亜はあおいに蹴りかかった、その瞬間。
ガシッ!!
麗亜「えっ!?」
あおい「せいやっ!!」
ぐるんぐるんぱっ!!
あおいは麗亜に地獄車を仕掛けた。
バン!!
麗亜「あぐっ!!」
その拍子で体育館倉庫のドアが開いてしまった。
麗亜「くっ・・・」
あおい「もうその辺にしたら?無駄なスタミナを消費するだけだよ」
麗亜「ちっ・・・。・・・!!」
さくら「え!?」
誠也「先輩、危ない!!」
ガシッ!!
誠也はさくらの代わりに捕まった。
麗亜「ちっ!標的と外れたが、まあいい・・・」
楓「虹谷くん!!」
誠也「く・・・」
麗亜は誠也の首にヌンチャクを押し付けた。
麗亜「動くな!!動くとこいつの首を絞め殺すよ!!」
さくら「誠也くぅぅぅうううん!!いやぁぁああああっ!!」
楓「くっ!!卑怯者!!」
そんな時だった・・・。
あおい「・・・・やれば?」
麗亜「え?」
誠也「か、河原先輩ぃっ!?じょ、冗談ですよね?」
さくら「あおいちゃん、正気!?」
あおい「あたしは別に誠也がどうなろうと知った事じゃないし、あすかもさくらも失うなんて事はさせる気はないんだよね」
さくら「あたしは、あたしはいいから・・・誠也くんを助けてあげてよ!!」
麗亜「・・・か、変わり者だね・・・。人質がとられているのに・・・」
あおい「情に流されていちゃ、可能な事も不可能になっちゃうしね・・・。あたしはそういう取引には応じないタイプなんだよ、解った?」
麗亜「やれやれ、んじゃ悪く思うなよ。恨むならあんたの指導者を恨みな!」
誠也「河原先輩の薄情者っ!!」
その時だった・・・。
すーっ・・・・。パシッ!!
あおいは麗亜の右腕を掴んだ。



麗亜「え!?いつの間に!?」
あおい「・・・言ったよね?あたしは取引には応じない、どっちも失わせないって・・・」
ぎぅ・・・・・
麗亜「あぎゃぁぁあっ!!」
あおいは掴んだ腕に軽く力を入れた。
麗亜「くっ!」
麗亜は痛みと余り誠也を手放してしまった。
麗亜「し、しまった!!」
あおい「そして、もう1つ・・・。あたしはあの状態から誠也を救いに行ける自信があった。だから、取引には応じなかった・・・」
誠也「か、河原先輩・・・」
あおい「情に流されて、全てを失う様な馬鹿な真似は・・・、あたしは絶対にしない!!」
ドスッ!!
麗亜「ぐふっ!!」
あおいの左膝蹴りが麗亜のみぞうちにクリーンヒットし、麗亜は倒れて気を失った。
あおい「まったく、このあたし相手に人質作戦なんて古いんだよ!」
誠也「河原先輩!かっこよかったです!!」
あおい「誠也・・・」
ベチン!
あおいは誠也の右の頬をビンタした。
誠也「うぉっ!?か、河原先輩!?痛いですぅ!口切ったですぅ!」
あおい「誠也ぁ〜、誰が薄情者だって?」
誠也「いやだって、まさかこんな作戦だなんて知らなかったし・・・」
あおい「ん?」
あおいの目つきが怖い。
誠也「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
あおい「よろしい・・・」
楓「・・・」
さくら「・・・ん?さっきから黙ってるけど、どうしたの?楓ちゃん・・・」
楓「!あ、いえ・・・。つい見とれちゃって・・・」
さくら「あぁ、解る解る。さっきのは凄い賭けだったものね」
楓「えぇ、それに・・・」
さくら「にゅ?」
楓「あおいさんって、精神力が凄く強いと思いました・・・」
さくら「精神!?」
楓「この間のゴリさんの誘拐事件の時、ゴリさんは恋人を縦にされて動けなかったから・・・」
さくら「そういえば、そんな事言ってたっけ・・・」
楓「もしかしたら、あおいさんはゴリさんより強いのかなって・・・」
あおい「え?あたしがゴリより強いかもって?それはないよ」
楓「何でです?」
あおい「だって、ゴリの天狗投げ喰らったら間違えなく病院送りだろうし・・・」
さくら「あはは、そうだよねぇ。流石にそんなに強くないよね」
楓「それはどうでしょうか?さっきの反射神経・・・。間違えなく、ゴリさんは掴む事は出来ない筈・・・。やっぱり、あおいさんは・・・」
あおい「・・・あ!それより、今面白い事考えちゃった・・・」
楓「え?」
あおいは麗亜のポケットを探った。
あおい「えっと・・・。あ、あった!!」
あおいは麗亜のポケットから携帯電話を取り出した。
さくら「携帯電話?何するの?」
あおい「これで彼女の上司に電話掛けちゃいます!」
誠也「うわぁ・・・、この人性格悪っ!」
あおい「もっぱつ、いっておく?」
誠也「ごめんなさい」
さくら「あはははは、流石に効いたみたいだね」
あおい「えっと、あ・・・。この「総帥」ってのがそうっぽいかも!」
あおいは「総帥」に電話を掛けてみた。

その頃、ある場所。
プルルルル・・・プルルルルル・・・
総帥「ん?電話か?」
真之介「その番号、麗亜じゃないですか!?」
マッスル「流石は麗亜!きっと成功の報告ですぞ!!」
豹牙「・・・・」
ガチャ!
総帥「私だ!」
あおい『もしもし、総帥さんですか?』
総帥「誰だ、お前は!?」
あおい『どうも、華水神高校の風紀委員長の河原あおいです』
総帥「河原・・・あおい?」
あおい『はい、おたくの篠原麗亜さんはこちらで捕獲させて頂きました』
総帥「な、何だと!?麗亜を捕獲!?まさか、倒したのか?」
マッスル「れ、麗亜が負けた!?」
あおい『はい、もちろんです!ここで取引なんですけど・・・』
総帥「取引だと!?」
あおい『そちらで預かっている、神崎あすかとこの篠原麗亜さんを交換しませんか?』
総帥「神崎あすかと交換だと!?」
あおい『はい、如何ですか?』
総帥「それは出来ない、相談だな・・・』
マッスル「え!?」
総帥「私は失敗者に用はない・・・。それ故に取り引きには応じない・・・」
あおい『・・・解りました。本人にはどう伝えておきますか?』
総帥「「二度と私の前に現れるな、消えろ」と伝えておけ」
あおい『はい、しっかり伝えておきますね」
ガチャ!
マッスル「ば、馬鹿な・・・。あの麗亜が負けるなんて・・・」
真之介「くっ・・・、麗亜。君の事は忘れませんよ・・・」
豹牙「おい、総帥・・・」
真之介「ひょ、豹牙?」
豹牙は総帥を睨んだ。
総帥「何だ?豹牙・・・」
豹牙「確かにあんたは失敗者を嫌う方だ。だが・・・・」
この時、全員が静まり返った。



豹牙「・・・あんた、麗亜の実の母親じゃなかったのか?」
真之介「えぇぇぇぇっ!?」
マッスル「れ、麗亜が総帥の娘だと!?」
豹牙「・・・お前ら、麗亜から聞いてなかったのか?」
マッスル「初耳だぞ!?」
真之介「私もですよ!?」
豹牙「・・・あいつ、他の連中に言ってなかったのか・・・」
マッスル「ずるいぞ、豹牙!!」
真之介「貴方は彼女の何なのですか!?」
豹牙「冗談じゃないみたいだな・・・」
その時だった。
総帥「クククク・・・、実の娘がどうした?私は実の娘にも容赦はせん!生かせてもらっただけで、有難いと思うべきだな・・・」
マッスル「総帥・・・」
豹牙「そういう所、相変わらずゲスいな・・・。あんたは・・・」
総帥「誉め言葉をどうも・・・。それにしてもお前らしくない発言だな、豹牙・・・」
豹牙「・・・・」
総帥「お前は「情に流されて、全てを失う真似をしない」をモットーにしているのではなかったのか?」
豹牙「あぁ・・・。情に流されていては仕事にならん・・・。俺はただ・・・実の娘相手としての意見が聞きたかっただけだ・・・」
豹牙は司令室を出た。
マッスル「やれやれ、まったく・・・。何を考えてるか本当に解らない奴だな・・・」
真之介「四天王の静かなる一匹狼ですか・・・。彼なりに何か面白い事でも考えているのでしょう・・・。では、私もこれで・・・」
真之介も豹牙に続いて司令室を出た。
総帥「フン・・・、面白くなってきたな・・・」
マッスル「総帥?」
総帥「さて、マッスル。MGTの状況はどうだ?」
マッスル「はい、75%完成しています!」
総帥「では、そちらに関してはお前に一任する!以上!」
マッスル「はっ!!」

しばらくして、保健室・・・。
麗亜「はっ!!」
あおい「起きた?」
麗亜「こ、ここは保健室?どうして・・・」
あおい「麗亜さん・・・いい上司に恵まれなかったみたいだね・・・」
麗亜「どういう意味よ!?あたしは・・・」
あおい「貴女は切り捨てられたみたいだよ。「二度と私の前に顔を見せるな」だってさ・・・」
麗亜「そ、そんなバカな!?」
麗亜は携帯を取り出し、総帥に電話を掛けた。
プルルルルプルルルルル・・・ガチャ!
総帥『私だ・・・』
麗亜「総帥、あのあたし・・・」
総帥『麗亜、お前・・・任務失敗を犯したそうだな・・・』
麗亜「嘘ですよね?あたしは・・・」
総帥『二度と私の前に現れるな・・・」
麗亜「!!そ、そんな・・・。冗談でしょ!?冗談って言ってよ!!お母さん!!」
あおい「お、お母さん!?」
総帥『お前の様な出来損ないなど、娘ではない!とっとと、父親の元に帰るがいい!』
麗亜「そ・・・そんな事って・・・・」
総帥『以上だ・・・。生きているだけで幸せに思え!』
ガチャ!
総帥は受話器を置いた。
麗亜「あたしは・・・実の母親にも見捨てられたの!?」
そんな時だった・・・。
???「篠原麗亜だな?」
サングラスを掛け、コートを着た渋いダンディーな男が入ってきた。
麗亜「貴方は?」
フィール「俺の名はフィール。それだけだ・・・」
あおい「フィール?」
フィール「それより、お前の父親の住所を調べた。持っていけ」
フィールは麗亜にメモを渡した。
あおい「・・・どうするの?麗亜さん・・・」
麗亜「・・・そうね、あたしは行く当てが他にないもの・・・。父親の元へ行く・・・」
フィール「そうか・・・。それならいい事があるぜ。お嬢ちゃん」
麗亜「え?」
フィール「父親と一緒に10歳年下の妹がいるらしいぜ。一度も会ってないならあってみるのもいいんじゃねぇか?」
麗亜「妹!?・・・それは楽しみだなぁ・・・。有難う、フィールさん。あたし、お父さんに会ってみるよ」
麗亜は保健室を出て行った。
あおい「フィール・・・。日本語に直せば「原」かぁ・・・」
フィール「ん?」
あおい「貴方、麗亜さんの実の父親でしょ?篠原祥司先生・・・」
フィール「な・・・。バレてたのか!?」
あおい「・・・最初からね。麗亜さんと会った時、苗字が一致したからもしや〜と思ったんだけどね」
フィール「如何せん、影で暗躍しているのが妻と知り、生後間もない次女を俺に残し去った本性が聞きてぇのよ・・・」
あおい「そっか、麗亜さんの母親とか言ってましたからね」
フィール「それともう1つ。どうしても気になる人物が2名・・・」
あおい「2名?」
フィール「決まってるだろ、河原あおいと焔豹牙・・・。この2人の共通点だ・・・」
あおい「あああああ、あたしですか!?・・・それと・・・、焔豹牙!?」
フィール「お前がさっき言っていた「情に流されて、全てを失う真似はしない」ってフレーズな、あの男の母親のよく言ってた言葉なんだぜ」
あおい「焔豹牙の母親を知ってるんですか!?」
フィール「まぁ、今は行方不明だがな・・・」
あおい「でも・・・。何で、あたしと・・・?」
フィール「それは、お前のよく知っている人物だからさ・・・」
あおい「へ?」
フィールは時計を見た。
フィール「おっと、これからジンの奴と会議があるんで、俺はここで!あばよ」
フィールは去った。
あおい「一体、誰の事を言っているんだろ・・・」
その時、一瞬あおいの左目の色が金色に変わった。
あおい「くっ!急に左目が・・・」

群馬県安中市・・・。
麗亜「えっと、この辺だったよね・・・。ん?」
麗亜は篠原の文字を発見した。
麗亜「こ、これかぁ・・・。あのフィールっておじさん・・・。随分と正確な住所を教えてくれたなぁ・・」
ぴんぽ〜ん・・・
夏美「は〜い!」
ガチャ!
夏美「・・・お姉さん誰?」
麗亜「(・・・昔のあたしにそっくり!?)まさか、妹?」
夏美「あぁ?」
祥司「おい、夏美。お客さんに失礼な言葉を使うんじゃぁ・・・・」
麗亜「・・・お父さん・・・ただいま・・・」
祥司「麗亜・・・、麗亜じゃないか!!帰ってきてくれたんだな・・・」
夏美「なぁ、親父!」
祥司「何だ?夏美・・・」
夏美「この人、隠し子?」
祥司「なななな、夏美!?何を言うんだ!?この人はお前のお姉さんだぞ」
夏美「お姉・・・。・・・あぁ!!離婚してお母さんに連れて行かれたって人?」
麗亜「り、離婚!?」
祥司「離婚はまだしてないぞ、夏美」
麗亜「お、お父さん・・・。一体、どういう教育してるのよ?」
祥司「あ・・・はははは・・・。シングルファーザーなものでなぁ、言葉使いが悪くてすまないな」
麗亜「やれやれ、これじゃ退屈しないで済みそうね・・・」
祥司「まぁ、ここじゃ寒いだろ。中に入りなさい」
麗亜「はい・・・。ただいま、お父さん・・・」
祥司「おかえり、麗亜」
こうして、篠原家は一家3人で仲良く暮らすのであった。

そんな頃、ある場所では・・・。
真之介「豹牙!何ですか、あの態度は!?」
豹牙「フン、いつもの事だ・・・」
真之介「やれやれ・・・。こっちは1人減って何かと大変なんですよ!」
豹牙「仕事の事なんていつでも考えられる・・・。それより、まだ気がつかないのか?」
真之介「何の事ですか?」
豹牙「麗亜を倒した奴の事だ・・・」
真之介「あぁ、確か「河原あおい」とか言ってましたか・・・。結構、可愛らしい声でしたが、何か?」
豹牙「何かどころじゃない・・・。あの2人と同じ苗字だと気がつかなかったのか?」
真之介「あの2人・・・。あぁ!!「河原さくら」と「河原紅蓮」!!」
豹牙「それと、俺達に劣るとはいえ、仮にも幹部の麗亜を倒して、余裕の声で電話していただろう?」
真之介「そういえば、息を切らせてたりとかはしてませんでしたが・・・」
豹牙「意外と面白いかもしれん、その河原あおいという小娘・・・」
真之介「何するつもりですか?豹牙」
豹牙「ちょっと確かめたい事がある。麗亜の実家住所を教えてくれ」
真之介「麗亜!?」
豹牙「あと、俺が言った事は他言無用だ。もちろん、総帥にもな!」
真之介「わ、解りました・・・」
豹牙「河原あおい・・・、・・・まさかな・・・」

その夜・・・。麗亜の部屋。
麗亜「ふぅ、こうして盛大に笑ったのって何年振りだったんだろうなぁ・・・」
コンコン・・・
誰かが窓を叩く。
麗亜「ん?」
豹牙「よぅ・・・」



麗亜「ひょ、豹牙!?まさか、あたしを殺しに来たの?」
豹牙「違う。お前に聞きたい事がある・・・」
麗亜「いいわ、何でも聞いて・・・」
豹牙「河原あおいについてだ・・・」
麗亜「あぁ・・・。あの変わり者か・・・」
豹牙「変わり者?」
麗亜「あいつ、人質取られても冷静だし、妙に技が当たらなかったり、妙な奴だった・・・」
豹牙「・・・・」
麗亜「そういえば!あいつ、あんたがよく使うフレーズ言ってたわよ」
豹牙「何だと!?」
麗亜「「情に流されて、全てを失う真似はする気はない」ってヤツだよ」
豹牙「!!」
豹牙の目つきが変わった。
麗亜「豹牙?」
豹牙「・・・なるほど・・・、そういう事か・・・」
麗亜「何よ!?何1人で納得しているの!?」
豹牙「麗亜が負けた理由、納得がいった!俺の考えが正しければ・・・」

その頃、河原家浴室脱衣所。あおいは風呂から上がり着替え、髪をドライヤーで乾かしている時だった。
あおい「くっ!まただ・・・」
あおいは痛そうに、左目を抑えた。
あおい「最近、痛まなかったのになぁ・・・。・・・!!」
あおいは鏡に移った自分の顔を見た。



あおい「!!・・・何でだ・・・。何で、焔豹牙の事を考えると金色の瞳が蘇る!?」
あおいの目の色が戻った。
あおい「・・・そうか、焔豹牙の母親は・・・!!」

あおいと豹牙、この2人を結ぶ人物とは・・・。そして、豹牙だけが知ったあおいの正体とは一体!?