Public Moral Panics

4月・・・、始まりの季節・・・。ここは、岩清水市・・・。海なし県に位
置し、都会という程派手ではなく、かと言って、田舎という程しんみりして
いる訳でもない中立のそれは地味で目立たない街である。
そんな、街の中には高校はいくつかあるが、そのウチの1つ、「華海奈高
校」。この学校の校門の前に立ちつくす1人のYシャツのボタンを3つまで
空け、青いシャツを見せた乱れた格好の青年がいた。
「ここが華海奈高校・・・か。意外と大きな学校だな・・・」
彼は学校を眺め、感服していた。そう、彼はこの学校に本日付けで転校して
きた学生なのだ。その男子生徒を前に1人の女子生徒が立ち塞がった。
「コラ!そこの男子止まりなさい!!」
その男子生徒が振り返ると、ショートヘアでボーイッシュな感じの160cm
ちょっとくらいの背丈のキリリとした目付きの女子生徒が、左腕に青い「風紀」
と書かれた腕章を付けて立っていた。
「その乱れ切った風紀!生徒会長が許しても、この風紀委員長・河原あおいが許さない!!」
これが、河原あおいとの初めての出会いだった・・・・。

校則1:校内での恐喝行為はしてはいけません

長ったらしい校長の話が終わった始業式の後、3年D組に1人の男子生徒が
さっきとは違い、ネクタイをちゃんと締め入ってきた。教壇には教師にして
はまだ若い24歳の美人教師、霜月なたねが黒板に彼の名前を書くと、彼は先生の隣に立った。
「今日から、このクラスに編入してきた神崎亮君です。彼は去年度で廃校に
なった京都の諒闇高校から来た生徒で、生徒会長の後押しで編入してきまし
た。みなさん、仲よくしてくださいね」
「神崎亮です。よろしく」
なたね先生に紹介され、リョウは普通に挨拶をすると、クラス委員長をして
いる1人の栗色の髪をしたボブカットの少女が席を立った。
「神崎亮くんですね、初めまして。あたし、このクラスでクラス委員長をや
っている神崎さくらです。よろし・・・あれ?えっと・・・」
クラス委員長は苗字が自分と同じの編入生に戸惑い、言葉に詰まった。
「ま、まぁ、偶然だろ?紛らわしいからリョウでいいよ、委員長さん」
リョウはさくらの緊張を解すと、さくらは窓際の席に手をかざした。
「あそこに空いている席がありますよね。あの席を使ってください」
「ん?あ、あれか・・・。解ったよ、有難う・・・」
リョウはさくらに言われるがまま席に着くと、後ろに座っていたメガネの如
何にも秀才そうな男子に声を掛けられた。
「やぁ、君の噂はもう聞いていますよ。今朝、風紀委員長とやり合ったんだそうですね」
「え?も、もう噂になっているのか?」
そう、あれは今朝登校の時に起きた面倒が勘違いだった・・・。

1

校門の前でリョウは河原あおいと名乗る風紀委員長に引きとめられた。
「アンタねぇ、この服の乱れは何?それにネクタイはどうしたの?」
あおいはリョウを睨みつけつつ注意をしていると、彼女の背中を銀髪に白い
制服を着た明らかに浮いている男子が叩いた。
「ん?誰だよ、こんな時にって・・・・げっ!」
「やぁ、あおい君。今日も仕事熱心だね」
銀髪の男が微笑むと、あおいは顔を引きつらせ、まるでけだものを見るよう
な目でその男子を睨んだ。
「し、志村ジン・・・。こ、こんな所で何の用ですか?生徒会長さん」
「生徒会長!?」
リョウはあおいが発言した意外な言葉に驚いた。あおいを引きとめた男こ
そ、リョウを招待してくれた生徒会長その人なのだから・・・。
「やぁ、初めまして、神崎亮君。私は志村ジン、この学校の生徒会長だ。よろしく・・・」
ジンは白い手袋をした右手を差し出し、リョウと握手をすると、左手から赤
いネクタイを差し出した。
「すまなかったね、君には迷惑を掛けて。これが君のネクタイだ。受け取りたまえ」
「あ、どうも・・・」
リョウは礼を言いながらネクタイを受け取ると、ボタンを締めなおし、ネク
タイをしっかり締めた。
「これで文句はないな?風紀委員長サン」
「ぐっ・・・」
あおいは悔しそうに歯を食いしばり、目を逸らせた。
「それじゃぁ、行こうか。始業式が始まる前にざっと校内を案内をしなくて
はならないからね」
「あぁ、よろしく頼みますよ。生徒会長さん」
「それじゃぁ、お仕事頑張ってくれたまえ、あおい君。あーっはっはっはっはっ!!」
ジンはリョウを連れて校内へ向かった。あおいはその2人の姿を見ながら、
左手の拳を強く握り締めた。

2

HRが終わり、なたね先生が出て行くと、後ろのメガネの男子が話掛けてきた。
「神崎亮、君は彼女をどう思ったのですか?」
「あぁ、あの風紀委員長ね。とりあえず、恋人にはまずしておきたくない女
ナンバー1だろなぁ・・・。鬼みたいに怖いし、ああいう包容力のない女っ
てのは、絶対モテないよな。それに見た目もなぁ、制服のスカートが無かっ
たら男と間違えられても可笑しくないなりだし。胸にサラシ任せて男子の制
服着せたら、絶対男子と間違われるぜ、ありゃ・・・」
「ふぅ〜ん、そういう事言っちゃうんだぁ〜」
「え?」
リョウが振り向くと、眉間に皺を寄せて笑っている誰がどう見ても河原あお
いにしか見えない人物が立っていた。
「とりあえず、一遍死んでおきたいのかなぁ?あたしの右手の一撃って本当に危ないんだよねぇ・・・」
あおいはリョウに顔を近づけ、不敵な笑みで見つめると、後ろからさくらがやってきた。
「あ、魁斗くん。言い忘れてたけど、お客さんだよ」
「うん、もうちょっと早く言って欲しかったですね・・・さくらさん」
メガネの男子はさくらに声掛けられると、失笑していた。
「それで、あおいさん。僕に何か用ですか?」
「あ、そうだ。委員会費の事なんだけど・・・。ちょっといい?」
あおいはメガネを連れて教室を出た。
「何だ?あのメガネ君は風紀委員長と知り合いなのか?」
リョウはあおいに連れて行かれたメガネを見てつぶやくと、さくらはそれに
ついて補足説明をし始めた。
「彼、風紀委員会の副委員長なの。だから、あおいちゃんもこのクラスには
しょっちゅう顔出しにくるよ」
「はあ・・・あいつ、風紀副委員長だったんだ・・・」
リョウはメガネが風紀副委員長だったのには、やや驚き関心していた。

3

今日は始業式とHRだけなので、早い時間に解散した為、風紀委員達は早い
時間に集まる事が出来た。風紀委員室は長テーブル1組と黒板1組と窓が1
つあるだけの小さな小部屋で、委員数は3名しかいない小さな委員である。
風紀委員会は2年前に当時1年生だった河原あおいと志村魁斗の2人によっ
て設立され、1年前には1年後輩の嘉藤美雪という純黒髪ロングヘアの綺麗
な女の子で、あおいの中学時代からの後輩で自分の妹の様に面倒を見てきた
思い入れのある子の3名だけで構成されている。
「あぁ、ムカつく・・・。あの神崎亮って奴の所為で散々な目にあった・・・」
あおいはパックのカフェオレを飲みながら、ずっと今朝や休み時間の事を根に持っていた。
「まぁまぁ、あおいさん。彼に悪気があった訳じゃないですし、そう機嫌を
悪くしないで下さいよ」
資料を纏めながら魁斗はあおいのご機嫌とりをしていた。
「私は河原先輩は間違っていないと思いますよ。転入生とはいえ服装は守る
べきだと思いますし、河原先輩は寧ろ真面目に任務をこなした立派な方だと思います」
資料の整理を片付けた純黒髪ロングヘアの綺麗な純和風な雰囲気のある
女の子・嘉藤美雪は優しくあおいに微笑んだ。すると、あおいの機嫌に変化が訪れた。
「うぅ・・・、そう言ってくれるのは美雪ちゃんだけだよぉ〜」
あおいは感動のあまり涙目になりながら、美雪を抱きしめた。
「せ、先輩・・・苦しいです、少し力を抑えて下さい・・・」
「あたし、絶対に君だけは大事にするから!この命に代えても守ってみせるからね!」
あおいは美雪を強く抱きしめ、大袈裟に宣言した。今のあおいにとって一番
欲しかった慰めの一言だったようだ。
「あーあ、何で同性別で産まれちゃったかなぁ。あたしが男なら、絶対に美
雪ちゃんは嫁にしてるのに・・・。そもそも、校内の嫁にしたい女子ランキ
ングで1位じゃないのもおかしいよね〜」
あおいは美雪から放れると、校内新聞を手に取ってその話し出した。
「それは仕方ないですよ。生徒会の美川先輩みたいな凄いフェロモンは私に
はありませんから・・・」
美雪は落ち着いて席に着くと、お嫁にしたい女子ランキングの話に乗り出した。
実は、この学校の報道部は周に1回校内新聞を発行しており、そこには何ら
かのランキングが掲載されていて、校内でもそれに注目している生徒も多
い。ちなみに、このお嫁にしたい女子ランキングで一位に輝いた生徒会の美
川玲子は生徒会の経理担当で、大人の色気をプンプン漂わせた高校生とは思
えないくらいのナイスバディーの美女で、校内男子からの人気は絶大であ
る。ついでに言うと、美雪の場合は、あおいが隣にいる事が多くて近寄りが
らいという理由で順位がやや下がるという噂も校内ではあった。おまけに言
うと、校内で一番お嫁にしたくない女子ワースト1位はダントツで河原あお
いが独占している不名誉振りであった。鬼の様な形相のあおいより、校内一
のブスキャラで自意識過剰で無理矢理化粧して可愛い子ぶろうとしている三
肉杉部須子や、女子プロレス部部長でゴリラの様な顔をした体長190cm
ある筋肉質な女子の安藤麗美よりも、人気が低いという程に河原あおいは校
内では(特に男子に)徹底的に嫌われている反面、夫にしたい生徒ランキン
グで10位にいる女子としてはいろんな意味で不名誉な存在だった。
「さて・・・と。資料の整理も終わった事だし、私はちょっと校内を巡回し
てきますね」
「うん、よろしくね。何かトラブルがあったらあたしに知らせてね」
美雪が席を立ち上がり青い腕章を付け出掛けようとすると、あおいは不審者
を警戒する親御さんの様に安全確認をし、美雪を見送った。

4

美雪は風紀委員室を後にし、校内を巡回していると、中庭から不審な声を感知した。
「何かしら?今の叫び声・・・。ちょっと見てみましょう・・・」
美雪が中庭に急行してみると、中庭内の校舎の隙間の路地裏で、小柄な1年
生の男子生徒が、赤いリーゼントヘアの不良と、金髪の髪を立てた不良に絡
まれていたのだ。
「おい新入生!有り金全部出せや、オラァ!」
赤髪の不良は1年男子の間後ろの木箱に蹴りを入れ、恐喝していた。
「へっへっへっ・・・有り金全部よこせば、痛い目みなくて済むんだぜぇ?」
金髪の不良は1年男子にガンを付け、余計に恐怖心を煽った。それを発見し
た美雪は力では勝てないのは解っていながら、不良達の前に飛び出した。
「風紀委員です!今すぐ、その生徒を解放して下さい!恐喝行為は校則で禁
止されている上、犯罪ですよ!」
美雪は恐怖心一杯でありながらも不良の前に立ち警告すると、金髪の不良は
突然の事で焦り出した。まさか、風紀委員がこんな路地裏に現れるなんて思
ってもみなかった事なのだから・・・。
「や、やべぇ・・・風紀委員に見つかっちまった!しかも、こんな路地裏
で・・・。どうする兄貴!?これじゃぁ、どう足掻いても逃げられねぇよ?」
「まぁ、待てよ相棒・・・」
焦る金髪の不良に対して、赤髪の不良は寧ろ冷静で且つ不敵な笑いを見せた。
「よく見てみろよ、風紀委員は風紀委員でも、あの憎っき河原あおいや志村
魁斗がいねぇ。一番、か弱い嘉藤だけじゃねぇか・・・」
「あ、本当だ。あの校内の2大天敵がいねぇや!」
「こいつぁ、寧ろ好都合だぜ・・・」
赤髪の不良の一言で金髪の不良は冷静を取り戻し、2人で不敵な笑いをし出した。
「で、どうするんだ?兄貴」
「あの2大天敵には、いつも泣かされてるからなぁ・・・。いい憂さ晴らし
が出来るぜ・・・。ヤっちまおうぜ、相棒!」
「おう!」
赤髪の不良の提案で、金髪の不良はノリノリの気分で美雪の肩を掴むと、路
地裏奥の木箱に美雪を投げつけた。
「な、何をするんですか!?」
美雪は木箱にぶつけた背中を痛そうに擦りながら、冷や汗を流しつつ2人の
不良を睨むと、金髪の不良は、美雪の服に手を伸ばした。
「へへへ・・・決まってるじゃねぇか・・・。オレ達と楽しい事やろうぜ、美雪ちゃぁん」
「や、やめて・・・やめて下さい!いやぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!!」
美雪が悲鳴を上げると、1人の男の声が制止に入った。
「やめろ!その子を放せ・・・」
路地裏の入口でリョウが真剣な目で不良2人を睨みつけた。
「何だてめぇは!?これから面白い事をしようって時に・・・邪魔すんなぁ!!」
赤髪の不良はリョウに向かって怒鳴りこみ至近距離でガンを付けた。
「てめぇ・・・オレ達と殺ろうってのかぁ?あぁ?」
赤髪の不良がリョウを睨みつけて威嚇すると、リョウは赤髪の不良に視線を
合わせ睨み返した。
「あぁ、いいぜ。やろうって言うなら、俺がまとめて相手になってやる・・・」
赤髪の不良はリョウの舐めきった態度にブチ切れ、リョウに殴りかかって行った。
「ざけんじゃねぇぞ、てめぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええっ!!」
リョウは赤髪の不良の攻撃を軽々とかわし、顔面に重い一撃を喰らわせた。
リョウの攻撃を受けた赤髪の不良は一撃で顔面が崩れそのまま失神して倒れ
てしまった。それを見た金髪の不良はナイフを取り出し、美雪にナイフを向けた。
「く、来るな!!ちちち、近付くとこいつの命がないぞ!!」
兄貴分の赤髪の不良があっさり倒されてしまった事で、金髪の不良は声が震
えていた。しかし、リョウは脅しには一切動じず堂々と近付き、金髪の不良
のナイフを持っている手を掴んだ。
「な、なぎゃぁぁあああああっ!!い、いてぇええええ!!いてぇぇぇええええええええっ!!」
「声が震えてるぜ。技術もない奴が刃物を易々と振りかざしていいモンじゃないぜ」
リョウが金髪の不良の手を振り払うと、顎に強烈な膝蹴りを喰らわせ、金髪
の不良はその場で意識を失い、倒れ込んだ。
「ふぅ・・・、校内で堂々と輪姦しようなんてな・・・。風紀の乱れにも程があるぜ・・・」
リョウは気を失った2人の不良に冷たく言い放つと、優しい目で振り返り美
雪に手を差し伸べた。
「大丈夫だったか?危ない所だったな・・・・」
美雪は差し伸べられた手を掴み、立ち上がると、リョウを見つめて微笑んだ。
「ありがとうございます・・・。私・・・本当に怖かった・・・」
「き、気にしないでくれ・・・。お、俺は偶然近くを通りすがった一般生徒だよ・・・」
リョウは美雪の美しい笑顔に照れ、目を逸らし赤面した。
「お?何だ何だ?悲鳴が聞こえて来てみたら、全部解決してんじゃねぇか・・・」
校舎から中庭に肌黒の白いブレザーを着た、黒Yシャツを3段目まで開けた
ワイルドな男がやってきた。
「あ、中村先輩!」
美雪は肌黒の男に声を掛けた。彼は中村元洋、生徒会の幹部で、ワイルドな
格好で女子を魅了しようとしている男だ。
「ん?あぁ、美雪ちゃんじゃねぇか。そっちの彼氏は誰だい?」
中村はリョウに興味を示し尋ねると、リョウは真っ直ぐ中村に目を合わせた。
「俺は神崎亮・・・。ただの一般生徒だ・・・」
「神崎亮・・・。そうか、アンタが今朝、風紀委員長と揉め事を起こした転
入生か・・・。こいつらはお前さんがやったのかい?」
「あぁ・・・そうだ」
中村が不良達の事を尋ねると、リョウは素直に答えた。すると、中村はニヤ
リと笑うと、親指で中庭を呼び差した。
「お前さん強ぇんだな?面白ぇ、俺と一試合やらねぇか?ルール無用のストリートファイトをさ」
「いいだろう・・・受けてたとう!」

5

中庭の真ん中でリョウと中村が向き合って構えた。リョウの構えは空手の基
本的な姿勢に対し、中村は体制を低くし、二つの拳を顔の前に近づけたボク
シングの構えを取った。
「ボクサーか?」
「あぁ、これでも去年はインターハイで準優勝してるんだぜ・・・」
中村はジャブで空気を切りながらリョウに自己紹介をした。中村は元体育課
のボクシング部部長で、インターハイ決勝の試合で放ったパンチを反則扱い
され、ボクシング部から追放された男で、実力を買われ、ジンに生徒会へス
カウトされたのだ。
「よしっ!いくぜ!!」
中村は低い姿勢からラッシュでリョウに接近し、強烈なアッパーを繰り出し
た。リョウは紙一重で攻撃をかわし、距離を置いた。
「なるほど、流石はインターハイの優勝候補・・・鋭いパンチだ・・・」
「へっ、お前さんこそ、中々の避けじゃねぇか!あいつらをあっさり倒した
のは伊達じゃねぇな!」
中村は勢いを付け、強烈なストレートを繰り出すと、リョウは姿勢を低く
し、そのまま体重を任せ、中村に背負い投げを喰らわせた。
「く、くぅ〜・・・・。やるじゃねぇか!今のは効いたぜ。ボクシングには
投げ技がねぇからな。上手く受身が取れなかったぜ」
中村は起き上がると、同時にリョウの回し蹴りが顔面にクリーンヒットし、
中村は足が揺らぎ、揺らいだ足元にリョウの足払いがヒットし、中村はダウ
ンを奪われた。
「へへへっ・・・、面白ぇ・・・お前さん、見込み以上だぜ!!」
中村が勢い付けてリョウに強烈なストレートを繰り出そうとすると、リョウ
はそのカウンターを狙う様に正拳突きを繰り出した。その時だった・・・。
「え・・・?」
「な、何だ・・・?」
リョウと中村の拳を中央に入ってきた人物に、同時に受け止められていたのだ。
「いい加減にしておきなよ。2人とも・・・」
2人の間に入って来たのは・・・、まさかの風紀委員長・河原あおいだった。
「じょ、冗談だろ・・・?あの中に飛び込んで受け止めちまうなんて・・・」
リョウはあまりの事に唖然としていた。当然だ、インターハイ優勝候補のボ
クサーと腕の立つ空手家の拳を同時に受け止められるなんて尋常ではないの
だから・・・。
「さて・・・と。校内での乱闘行為は校則で禁止されているんだけど・・・。これはどういう事か、説明してくれるかな?・・・中村元洋」
あおいは2人の拳を振り払うと、中村を睨みつけた。
「え・・・?あ、いやぁ・・・。そいつの腕があまりに立つんで、つい勝負を仕掛けたくなっちまって・・・」
中村は手を頭の後ろに回し、笑いながら応えると、あおいはリョウの前に立
ち、腕を組みながら、中村を呆れた目で睨んだ。
「つい・・・ね。あんたって、そこで寝てる不良と何も変わらないんじゃな
いの?校則にもあるよね?こういった私闘の場合は手続きがいるっ
て・・・。それも生徒会長の許可が必要じゃなかったかな?生徒会長のかませ犬さん」
「な、何だとぉ?」
「なるほどねぇ・・・、だからアンタ・・・インターハイで優勝を取り消さ
れたんじゃないの?」
「か、河原あおいぃぃぃぃいいいいっ!!てめぇ、黙ってきいてりゃいい気
になりやがって・・・」
あおいの挑発に中村は遂にキレてしまい、あおいに怒りのままに飛び込んだ。
「お、おい・・・河原、危ない!!」
リョウは静止の効かない中村に襲われたあおいを助けようと前に出ようとし
た瞬間、あおいは中村のふところに入り、素早くそして重い一撃を鳩尾に喰
らわせ、中村は失神した。
「な、何て奴だ・・・」
リョウはあおいの強さに驚き、倒れた中村を見て呆然と立ち尽くしていた。
「中村元洋、校則違反で1週間謹慎処分っと。生徒会長にはしっかり伝えて
おいてあげるからね」
「は・・・はぐはぐはぐ・・・・」
中村は泡を吹き、虫の息状態でまともに返事も出来ない状態だった。
「さてと・・・、後は・・・アンタの事なんだけど・・・」
あおいは振り返りリョウの方を向いた。
「美雪ちゃんから事情は聞いたよ・・・。助けてくれたんだってね・・・。
あ、ありがとう・・・一応、礼は言っておくよ。でも、勘違いしないでよ
ね!別にあたしは美雪ちゃんの事の礼を言っている訳で、あんたの事は認め
ているわけじゃないんだから・・・」
あおいは腕を組み口を尖らせながら、リョウを見て言った。
「でも・・・、一般生徒の乱闘は校則に引っかかるんだよね・・・。でも、出来ればお咎めなしにしたいんだよねぇ・・・」
「河原先輩、それならいい案がありますよ」
美雪があおいの後ろから声を掛けてきた。
「み、美雪ちゃん・・・」
「もしあの場合、風紀委員による武力行使は校則に引っかかりませんよね?」
「あぁ、そっか・・・・・・・・・。・・・・・え?」
美雪の提案にあおいは疑問を抱いた。リョウに罰則を与えない為に風紀委員にする。
「ええええええええええええええええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ、美雪
ちゃん!!流石にいきなり転入生を風紀委員にするだなんて・・・。彼の意
志とかさ・・・」
「それなら、大丈夫ですよ・・・」
珍しく慌てふためくあおいに対し、美雪は冷静にリョウの前へ出て、リョウ
の手を優しく握った。
「神崎先輩、先程は助けて頂きありがとうございました。もしよろしけれ
ば、今後の為にも風紀委員会に入って頂けませんか?」
美雪は優しく微笑みリョウを見つめると、リョウは照れ臭くなったのか顔を赤くした。
「そうだな・・・。人助けをして、罰せられるよりはマシ・・・か。解っ
た、俺風紀委員になるよ。これから、よろしくな・・・。えっと・・・美雪
ちゃん・・・だっけ?」
「えぇ、嘉藤美雪です。宜しくお願いしますね、神崎先輩」
「あ、あぁ・・・よろしく・・・」
こうして、神崎亮は風紀委員の一員になってしまったのだ・・・。彼の今後
の運命は如何に!?

続