ifstorys:思い出のあの場所を・・・。

桃月学園、職員室。
早乙女は乙女から取り上げた(?)、中学の卒業アルバムを見ていた。
ベッキー「おい、早乙女。何見てるんだ、お前?」
早乙女「ん?あぁ、宮本先生ですか。卒業アルバムですよ、乙女の中学の頃のね」
ベッキー「へぇ・・・」
ベッキーは興味がなさそうな感じだった。
五十嵐「あら、ベキ子ちゃん。随分と興味ない素振りね」
ベッキー「だって、あたしはそういう思い出って大してないですし・・・」
早乙女「そういえば、宮本先生は飛び級でMITを出たとか・・・」
ベッキー「確かに、MIT卒業生だけど。あんまし、楽しい思い出ってのが無くて」
ジジイ「まぁ、若い剥き出しの才能は下手な敵を作るというしのぅ」
ベッキー「そんな所だよ。MITの時も結局誰とも仲良く出来なかったし、教授は今でも時々呼ばれるから卒業したって気分じゃないんだよ」
早乙女「思っていた以上に深刻なんですね、宮本先生って・・・」
ベッキー「ま、実際今もPTAやら教育委員会やらの中には敵も多いみたいだしな。楽じゃねぇって事だ」
そこに・・・。
???「あ、ちょっと。ちょっと、いいかな?」
ベッキー「ん?誰だ?」
体格のいいオジサンが立っていた。
ジジイ「あ、あんたは・・・・」
五十嵐「え!?何!?何なの!?」
早乙女「周りに緊迫した空気が漂っている様な・・・」
ベッキー「何なんだ?アンタは!?」
周りの教師達は固まっていたが、正体を知らないこの3人だけはよく解らない重い空気に踊らされていた。
???「やぁやぁ、最近どうよ?ジーちゃん」
ジジイ「いやいや、まだまだ全然元気ですぞ!ケンさん!」
急にそのオジサンはフレンドリーに話し出した。
早乙女「ジーちゃんにケンさん?」
ベッキー「失礼だけど、アンタ誰だ?」
???「あ、君がレベッカちゃん?10歳で教師になったっていう」
ベッキー「ま、まぁ・・・そうだけど・・・」
???「いやぁ、ごめんね。周りが出払っちゃって、僕しかいなかったから、矢も得ず来たのよ」
ベッキー「(一体、何者なんだ?このおっさん・・・)」
ジジイ「3人とも教師の癖に非常識ですぞ!!地方教育委員局長の顔も知らんのか!!」
ベッキー「きょ、キョウイクイインキョクチョー・・・?」
ジジイ「関東地方の教育委員会の役人の中で一番偉い人じゃ!!」
巌磁「あ、巌磁賢悟。よろしくね」
ジジイ「それにしても、アンタ自身が来るなんて一体どういう風の吹き回しじゃ?」
巌磁「いやね、足柄中学校の廃校が決まった事を卒業生に報告して回ろうと思ったら、みんな出払っちゃったのよ」
五十嵐「中学の廃校ですか・・・」
早乙女「確かに足柄中学校出身は生徒の中にも何人かいると聞きますが・・・」
ベッキー「それがどうかしたんですか?局長さん」
巌磁「まぁ、中学に思い入れのある子がいたら可哀想だし、出身の子達に教えてあげて欲しいなぁってね」
ジジイ「解りましたぞ!ケンさん!!」
巌磁「とりあえず、廃校は来週だから、伝えておいてね。あの学校の資金じゃ廃校式も難しいけど、何か出来るといいなぁ」
ジジイ「来週ですな、了解じゃ!」
巌磁「じゃ、僕は理事長ちゃんと外食してくるから〜」
局長はそう言って職員室を出て行った。
ベッキー「それにしても、昔の学校に思い入れなんてある奴がいるのかねぇ」
早乙女「宮本先生と違って、いい思い出がある生徒にとっては大切かもしれないじゃないですか・・・」
五十嵐「ちょうど、ウチのクラスの桃瀬が足柄中学校出身だから伝えないとなぁ・・・。ベキ子ちゃんもちゃんと伝えてあげなよ」
ベッキー「ヘイヘイ・・・。・・・桃瀬って事はくるみも一緒かぁ・・・」
そして、担当教師は散った。

という訳でC組・・・。
ベッキー「・・・という訳だ」
くるみ「足柄中学が廃校かぁ・・・」
ベッキー「まさか、教育委員局長が来るとは思わなかったよ」
都「教育委員局長!?」
ベッキー「巌磁賢悟とかいう偉そうな身分のワリに妙にフレンドリーなおっさんだった」
都「巌磁局長がねぇ・・・」
ベッキー「どうするんだ、お前ら?まぁ、もう半年以上も前に卒業した学校だからどうでもいいか?」
くるみ「そんな事ない!どうでもよくなんかないよ!!」
都「くるみ・・・?」
くるみ「あたし達が3年間過ごして卒業した学校だよ!何もせずに廃校だなんて・・・」
都「くるみ・・・」
くるみ「それに前にあの人も・・・」

【回想】
数ヶ月前、始まりの草原・・・。
龍華「くるみちゃん、君は大切な場所ってある?」
くるみ「え?」
龍華「この場所はね、あたしにとって全ての始まりだったんだ・・・」
くるみ「全ての始まり・・・」
龍華「本当に大切な思い出はずっと残しておきたい・・・そう思うんだ・・・」

【回想終了】

都「そうね、よし!じゃぁ、廃校式まではいかなくてもそれだけの価値ある事しよっか」
くるみ「都・・・」
こうして、小さな廃校式は開始された。

それから、1週間後・・・・。
足柄中学校前・・・。桃瀬兄妹は2人で学校を外から眺めていた。
修「ここに来るの久し振りな気がするな・・・」
くるみ「半年前だよ、卒業したのは」
修「桃月学園での学校生活に慣れちまったから、ここの事なんてすっかり忘れてたよ」
くるみ「ま、この学校、地味な都立中だったからなぁ・・・」
犬神「フッ、地味キャラに言われたらこの学校も本当におしまいだな・・・」
くるみ「なんだと!?・・・って、犬神・・・」
一歩遅れてきた、犬神が現れた。
修「それにしても、廃校になるなら、ちゃんと知らせて欲しかったよな・・・」
くるみ「まったく、廃校式すら開いてやれなかったよ・・・」
犬神「しっかし、もう生徒が消えた学校で何をしようって言うんだ?」
修「大した事じゃねぇさ」
都「あら、もうみんな集まってるのね」
都が大勢の生徒を連れてきた。
犬神「う、上原!?それにこれは一体!?」
くるみ「実はさ、あたしと都で卒業生集めて軽い廃校式をやろうって案出したんだよ」
都「工事の方もギリギリだったみたいよ。ホントに教育委員局長が教えてくれなかったら・・・」
くるみ「誰にも祝ってもらえずに潰されちゃうからね・・・」
修「後は、中学の生徒会名簿を使って集められる限り集めてもらったって訳だ」
犬神「くるみと上原が考えたにしては随分と洒落た事するじゃないか・・・」
都「大きなお世話よ。それより、早く机並べましょ。今日1日だけ許されて出来るんだから・・・」
修「おう、盛大に盛り上げようぜ!」
そして、卒業生達は机を並べ、軽い廃校式が始まった。

都「そういえば、あんたらと犬神君って、幼馴染なのよね」
くるみ「そうだよ。・・・そっか、もう馴染んで気付かなかったけど、都と会ったのは中学からだったな」
犬神「そういや、お前ら昔から変わってないよな・・・」
くるみ「そっか?地味って言われたのは高校に入ってからだけどな」
修「でも、くるみの空回り振りは相変わらずだぜ」
くるみ「何だと!?兄貴だって、軽率な所は変わってないじゃんか!」
都「えぇっ!?桃瀬君って昔からそうだったの!?」
犬神「その性格が原因で今や主夫タイプになってるけどな」
修「煩ぇぞ、犬神」
くるみ「そういや、兄貴って、中学の時告って即刻振られたって噂あるよな」
修「お、おい・・・、それは・・・」
都「あ・・・、それって・・・」
くるみ「え?」
都「桃瀬君が私に告白してきた時の事だ・・・」
くるみ&犬神「えぇっ!?」
都「な、何よ・・・」
犬神「修、お前・・・」
くるみ「兄貴そこまで軽率だったんだ・・・」
修「何だお前ら、その目は・・・」
くるみ「確か、『私は不真面目でいい加減な人は嫌なの』とか言われたとか言ってたけど・・・」
犬神「あの時から急に無理に真面目にやろうとしてたよな?」
くるみ「なるほど〜、都とねぇ・・・」
くるみと犬神は失礼な眼差しで修を見ながら、笑っていた。
修「お前ら、そんな目で俺を見るな」
くるみ「都〜、その時の事もっと詳しく教えてよ!」
犬神「あぁ、私も聞きたいな。こいつの笑い話」
都「え?ま、まぁ・・・いいけど・・・」

【回想】
2年前・・・。
神木「それじゃ、これを生徒会室に届けておいてくれるか?上原」
都「はい」
都は書類を持って、生徒会室に向かった。

生徒会室・・・。
都「神木先生からの届ものです」
冴田「あ、わざわざ悪いね」
都「いえいえ・・・では、これで・・・」
その時だった・・・。
修「会長〜、決算書類の印刷が出来ま・・・え!?」
ドン!
都「きゃっ!」
修「あ、ごめん!大丈夫か!?」
都「へ、平気・・・。・・・あれ?メガネ・・・」
修「え!?・・・あぁ!!」
倒れた拍子で、落ちた都のメガネが修の尻に潰されていた。
修「や、やべぇ・・・。どうしよう・・・」
都「わ、私のメガネ・・・」
修「ご、ごめん!!絶対、弁償するから!!」
修はそのまま生徒会室を出て行った。
都「え?別に・・・。コンタクトもあるからいいのに・・・」

翌日。
都「ふぅ・・・」
くるみ「・・・あれ?都・・・。メガネどうしたの?」
都「今日はコンタクトにしただけよ」
くるみ「珍しいね、試験勉強の時はメガネって決めてたのに・・・」
都「ま、まぁ・・・。そういう気分になったりする事もあるのよ・・・」
青木「お〜い、桃瀬!バスケやろうぜ!」
くるみ「やる〜!」
くるみは男子にバスケに誘われて、
くるみ「じゃ、あたし行くね」
都「うん」
そのまま教室を出て行った。
都「はぁ〜・・・(彼、まさか本当に買い換えてくるつもりなのかな・・・)」
修「上原さん・・・」
都「・・は、はい!?・・・あ・・・」
修「昨日は本当にごめん!約束通り弁償してきたから・・・」
修は新品のメガネを渡す。
都「・・・あ、ありがとう・・・」
修「よ、よかった・・・喜んでもらえて・・・」
都「でも、どうして・・・?」
修「せめてもの償いだよ。それと・・・、上原さん!!俺と付き合って下さい!」
都「え!?いや・・・その・・・それは・・・」
修「俺、君に惚れちゃったみたいなんだ・・・」
都「な!?」
修「い、いいかな?」
都「そ、それは兎も角どうして?」
修「え!?」
都「私、自己紹介してないわよね?クラスも違うみたいだし、どうして私の名前を?」
修「あぁ、さっきくるみに聞いたんだよ。くるみの友達なんだってね」
都「・・・貴方くるみとどういう関係なの?」
修「いや、そんな大した関係では・・・」
都「ごめんなさい・・・、私貴方みたいな軽い男タイプじゃないの・・・」
修「え!?いや、だからくるみとは・・・」
修は結局、フラれてしまった。

【回想終了】

都「とまぁ、こんな所ね」
くるみ「・・・って、何血の繋がった妹相手に嫉妬してんだよ!?」
都「だって・・・、くるみがまさか妹だったなんて、知らなかったから・・・」
犬神「不運だな、修」
修「うるせぇ・・・」
青木「お〜い、くるみ〜!バスケやらないか?」
くるみ「お〜!やるやる!!」
くるみは男子達に連れられて行った。
都「でもね、その後。くるみに兄妹と聞かされた時はショックだったわよ」
修「え?」
都「折角、初めて巡り合えた男をきっぱり断っちゃったじゃない・・・」
犬神「おいおい、まだ未練でもあるのか?」
都「う〜ん、もうどうでもいい事なんだけどね」
犬神「どうでもいいのかよ」
都「でも、きっぱり断っちゃったから、逆に謝りずらかったっていうのもあったのよね」
修「そうだ、だったら上原さん。俺と付き合ってくれるのか!?」
都「どうしよっかな〜」
修「やっぱり、嫌われてるのか・・・、俺は・・・」

そして、夕方・・・。
くるみ「あ〜、楽しかった」
修「ったく、まさかこの歳になっても男子に混じってバスケやるとはな」
くるみ「うるさいよ、好きなんだからいいだろ」
都「そうね、好きなんだから・・・。でも、この学校とはお別れなのね・・・」
犬神「仕方ないだろう、廃校になるんだからな・・・」
都「私にとって、くるみ達との出会いは本当に運命的だったから・・・大切な思い出・・・」
都の目から涙が流れ出した。
修「上原・・・」
くるみ「泣くなよ、都!!折角、笑顔で別れたかったのに、こっちまで・・・な、泣きたくなるじゃねぇか!!」
くるみもつられ泣きをし、それにつられ、中学での思い出が強かった者の過半数が泣き出してしまった。
犬神「収集が付かないな・・・。これは・・・」

同時刻、屋上・・・。
龍華「(思い出のある大切な場所を失う気持ち・・・か・・・)」
巌磁「あれ?もしかして、龍華ちゃん?」
龍華「・・・巌磁賢悟・・・、やっぱり廃校を決めたのは貴方だったんだね?」
巌磁「まぁ、理事長の不純異性行為が原因で、辞めたのがきっかけで、会議になった結果だよ」
龍華「その話なら、あたしもニュースで見たから知っているけど」
龍華の目付きが変わった。
龍華「もし、何の理由もなしに、誰かの大切な思い出を踏み躙る真似をしたら、あたしは貴方を絶対許さない・・・」
巌磁「・・・・・。・・・ま、その時はその時でね。じゃ、僕は帰るよ。仕事が残ってるんでね」
局長はそのまま学校を後にした。
龍華「・・・巌磁賢悟、貴方にも解っていた筈だろうに・・・。大切な思い出は、いつまでも残しておきたいってさ・・・。そのウチ色褪せていってもね」