「アルフレッド・サイファ、ここは?」 「ここは、俺とあいつが初めて出会った場所だ・・・」 アルフレッドはサヤをスラム街にある孤児院へ連れてきた。 Ep2.Slum 1 アルフレッドが連れてきた孤児院は見るからに今にも崩れそうにボロい孤児院で、 既に親を亡くした幼い子供達が院長達と悲しみを忘れるかの様に楽しそうに遊んでいる姿が見受けられる。 「ここが・・・あんたと姉さんが初めて会った場所・・・か」 「あの時は俺は10歳の幼い子供だったよ・・・。俺、物心ついた時からここに預けられていたから・・・」 アルフレッドは建物を見つけ昔を思い出していた。 「7年くらい前になるが、院長が事故で怪我をした時からだった・・・。アヤはここに訪れてみんなと戯れていた」 「7年前・・・姉さんが初めて渡米した日だ・・・」 サヤは不思議な一致に疑問を覚えていた。 「サヤ、お前に会わせておきたい人がいるんだ・・・」 「あたしに?」 アルフレッドはサヤを先導し、中へ入っていく。 孤児院の中も木で出来たかなり古い建物で、まさにスラム街を象徴する建物だった。 「院長先生、お久し振りです」 アルフレッドは、車椅子に座る中年男に話し掛けた。 「ん?おぉ?アルじゃないか!しばらく見ないウチに随分たくましくなったな」 院長はアルフレッドの肩を抱き、感動に浸っていた。 「最近、いい賞金首がいなくて仕送りが少なくてすみません、院長先生」 「そんな事はないよ、この孤児院があるのは君やケイン君、それと私の娘のお陰・・・だからね」 「”私の娘”?」 院長の”私の娘”という言葉に、サヤは疑問を抱いた。そして、薄々ある事に感づき始めていた。 「あの・・・、アルフレッド・サイファ?この人は?」 サヤはアルフレッドの人影から顔を出し、尋ねた。すると、 「あ、アルフレッド?その娘は?まさか・・・?」 院長はサヤの顔を見て驚いた。混乱している2人の間に立つアルフレッドは事情を説明し出した。 「院長、彼女はあなたの娘です・・・」 「私の娘?・・・!!まさか、サヤの方か!!」 「え?ちょっと、これ・・・どういう事なの?アルフレッド・サイファ?」 サヤはとんでもない展開に混乱を続けていた。 「聞いての通りだ、この孤児院の院長はお前の父親だよ。アヤから昔、アヤと院長夫妻の話は聞いていたんだ・・・」 「う、うそ・・・あたしのお父さん!?7年前に事故で死んだって姉さんが・・・」 サヤは衝撃の事実に足が震えだした。 「確かに、妻は亡くなったよ。だが、幸い私は生き延びる事が出来たんだ・・・。下半身不随で歩けなくなったがね」 「っ!!」 サヤはあまりの感動に涙を流すのを堪えていた。 「アヤは亡くなった母親と、歩けなくなった父親の為に渡米して、賞金稼ぎとして金を稼いでは、ここの為に尽くしていたんだよ・・・」 アルフレッドはサヤの肩に手を乗せ、アヤの事を語った。 「あはは・・・姉さんらしいな・・・。表向きは笑っていて、影では一番苦労していて、それを押し隠して・・・。あたしにも何も話してくれなかった・・・」 サヤは笑いながら、涙が少しこぼれだした。 「ところで、サヤ?お前はアヤを追って渡米してきたのか?」 「うん・・・2年前に失踪の行方を追う為に・・・」 「そうか・・・、それで・・・アルフレッドといる事は、お前も賞金稼ぎをやっているのかい?」 「え?」 父親の前で流石に盗賊をやってるなんて言えないサヤは明後日の方向を見だす。すると、アルフレッドがサヤの肩を抱き、 「あぁ、そうなんだよ。今は、俺とケインと3人のトリオでやってるんだ!」 「あ、アルフレッド・・・?」 サヤはアルフレッドの出まかせに驚き、とりあえず合わせる事にした。 「そうなんだ・・・。姉さんの名前出したら、仲間に入れてくれて・・・ね。アルフレッド」 「そうか、最後にお前の無事が確認出来ただけで私は幸せだよ・・・」 「そう・・・。・・・じゃぁ、また近くに来たら寄るよ・・・」 サヤは笑顔で父親に微笑み、孤児院を後にした。 2 孤児院を後にしたアルフレッドは、サヤを連れて自分の部屋へ案内した。 アルフレッドの部屋は、殆ど掃除した形跡がなく、だらしなさ全開で、本来なら、友達すら呼べるような部屋ではなかったが、サヤと2人で落ち着いて話が出来る場所がなく、止むを得ず自分の部屋に引き込んだのだった。 「悪いな、あまり綺麗な部屋じゃなくて・・・。・・・コーヒーでも飲むか?」 「うん・・・有難う」 サヤは孤児院から戻ってから口数が明らかに少なくなっていた。父親との再会を果たした為か、今にも泣きそうなのを堪えている様にも見えた。 「お待たせ、温まるぞ・・・」 「うん・・・有難う」 アルフレッドは淹れてきたインスタントコーヒーをサヤに差し出した。 「ねぇ、アルフレッド・・・。貴方といた時の姉さんの話・・・、聞きたいな・・・」 サヤは静かにアルフレッドに尋ねた。 「・・・そうだな・・・、妹のお前には話しておくべきだろうな・・・」 アルフレッドはそう言い、サヤにアヤとの出会いを語り始めた・・・。 「7年前の春の事だった・・・」 3 7年前・・・、アルフレッドは10歳の銀髪の少年で、ガンアクション好きの子供だった。 「アル!今日は何してあそぶ〜?」 「そうだなぁ〜、モデルガンで戦争ごっこやろうぜ」 「本当に好きだよね、それ・・・」 そんな彼に付き合わされていた、争いごとが苦手な幼馴染のケイン。この2人はこの頃からの付き合いである。 「あぁ!だってかっこいいじゃねぇか!特にあの賞金稼ぎのブルース・カルシノって人なんて・・・」 「ブルースさんか、彼は確かにハードボイルドでかっこいいよね」 「ん?」 アルフレッドは聞きなれない声に反応して振り向くと、そこにはロングヘアーの黒髪の女が立っていた。 「誰だ?お前」 「やだなぁ、女の子に向かって「お前」はないんじゃない?」 その女性はそう言い、微笑んでいた。 「あたしは、アヤ。如月綾・・・、君の名前は?」 「俺か?俺はアルフレッド・サイファってんだ!将来、有名なガンマンになるんでよろしくな!」 「へぇ、有名なガンマンになるんだぁ〜。凄いね、アルフレッド君!」 アヤは子供のあしらい方に手慣れている様で、アルフレッドに背を合わせる形で腰を低くして受け答えていた。 「そうだ、アルフレッド君!あたし、君の銃の腕が見てみたいなぁ・・・」 アヤは興味本位でアルフレッドに尋ねてみた。 「あぁ、いいぜ。見てろよ、姉ちゃん!」 アルフレッドはそう言い、近くにあるアーチェリーの的を再利用したモノを壁に立てかけ、200m程の距離を取った。 「いくぜっ!!」 パン!パン!パン!っと、モデルガンから軽い破裂音が鳴り、赤いインク弾が発射された。すると、3発全てがほぼ真ん中にヒットしていた。 「どうだ?姉ちゃん、俺の実力は?」 「・・・・・・・・」 アヤは無言で的を見つめていて、周りの声が聞こえていなかった。それもその筈、いくら玩具の銃とは言え、あれだけ確実に的の中央に当てていたのは、プロのガンマンでも目を疑うものだ。 「姉ちゃん?」 「はっ!あ、ごめんごめん・・・」 アヤは、アルフレッドの声で正気に戻った。 「いやぁ、本当に見とれちゃったよ。凄いね、アルフレッド君は、いくら玩具でもこれだけ見事に当てられる人はそうそういないよ」 「いやぁ〜、賞金稼ぎやってる人に言われると、ちょっと照れるな・・・」 アヤは笑顔でアルフレッドを褒め称え、アルフレッドはアヤの笑顔に惚れているのか、顔を真赤にして、頭を掻いていた。 「あ、そうだ!今度、あたしと射撃場に行ってみようよ!本物の銃の反動に耐えられるくらい下半身を鍛えれば、きっといいガンマンになるよ!」 「え!?本当?」 「うん!勿論だよ。院長には、あたしから『アヤお姉ちゃんとデートに行く』と伝えておくから」 「で、でーと・・・・」 アルフレッドはデートという言葉に反応して、顔を真っ赤にした。 「あの、お姉さんは院長とお知り合いなのですか?」 ケインがまだ幼いリリィと手を繋ぎながら、訊いてきた。 「ここの院長さん夫婦はね、あたしのお父さんなんだよ。だから、ちょっと挨拶しに来た所なんだ〜」 「そうだったんですか・・・」 「お父さん・・・この間、事故で怪我して歩けなくなっちゃったでしょ?だから・・・賞金稼ぎで稼いだお金を孤児院に入れているんだ・・・」 アヤはそう言って、明後日の方向を見て黄昏ていた。 「そうだ、アルも一緒に挨拶に行ったらどうかな?」 ケインはニヤニヤした顔でアルフレッドに話し掛けた。 「え?朝の挨拶ならもうしたけどな?」 アルフレッドはまだ純粋な子供な為、意味を理解していなかった。 「そういう挨拶じゃなくてね、『お義父さん!娘さんを僕に下さい!』って、挨拶をね!」 「なっなっなっ・・・・お、おおおおおおお前なぁ!!」 アルフレッドは漸く意味を理解し、顔を真っ赤にして怒りだした。 「やぁん、可愛いなぁ!もう!」 「っ!!!」 アヤはアルフレッドに抱きつき、アルフレッドはまるでゆでダコの様に顔を赤くして、言葉を失った。 「アル兄、顔真っ赤〜」 「どうやら、図星だったみたい・・・だね」 「う、うるさいっ!」 ケイン兄妹はアルフレッドの単純さに、やや呆れ掛けていた。 4 アヤはスラムから少し離れた街にある、射撃訓練場にアルフレッドを連れてやってきた。この訓練場は誰でも自由に使用出来、まるでバッティングセンター感覚で、射撃の練習が行える場所だ。 「おぉっ、すげぇ・・・」 あまりスラムから出た事がないアルフレッドは射撃訓練場を見ただけで感激ものであった。 「さてと、本物の銃を扱うのは初めてだよね?あたしが軽く見本を見せるから、見ててね」 「お、おう・・・。姉ちゃんの腕見るの初めてだから、楽しみだぜ」 アルフレッドは好奇心で興味本位でアヤの腕を少し下がって見ることにした。アヤは、銃を構えると、目つきが真剣になり、1発発砲した。 「なっ!?」 アヤの放った弾丸は奇麗に的の中心に当たっていた。 「・・・と、まぁ・・・こんな感じで撃てばいいんだけど、どうかな?」 アヤは銃を下ろすと、目つきが緩くなり、アルフレッドに向かってほほ笑んだ。 「す、凄ぇ・・・。凄ぇよ!姉ちゃん!!的の中心に当てた奴なんて、俺・・・初めて見た・・・」 アルフレッドはあまりの腕のレベルの違いに感激し、アヤを褒め称えた。 「さぁ、次はアルフレッド君の番だよ。まず、ここをこうして・・・」 アヤはアルフレッドに銃を手渡し、本物の銃の操作を説明した。 「よし、解った。いくぜ!」 アルフレッドはアヤの説明通りに発砲してみると、1回で発砲に成功したが、 「うわぁっ!」 発砲時の反動で後ろに吹き飛ばされてしまった。 「おっと!大丈夫?」 ちょうど、後ろでこの事を想定していたかの様にアヤがアルフレッドを受け止めていた。 「あ、あああありがと・・・」 アルフレッドはアヤの身体に触れた事で顔が真っ赤になった。 「まぁ、最初はこんなもんだよ。本物の銃は反動が来るからね。特に反動に耐えられる様に下半身を鍛えておかないと・・・ね」 「あ、あぁ・・・・」 アヤがそういい優しく微笑むと、アルフレッドはアヤの笑顔を直視出来ず、俯いていた。 「あ、そうだ。肝心の弾は何処に当たったかな・・・?・・・・え?」 アヤはアルフレッドが撃った弾の位置を見て驚いた。何故なら、初めて本物の銃を扱ったというのに、的の中心の近辺に当たっていたのだから・・・。 「アルフレッド君、見てよ!初めて撃ったのに、ほぼ中心を射抜いているよ!」 「あ・・・あぁ・・・」 初めて撃った弾がほぼ中心に当たっていた事に感激していたアヤだったが、アルフレッドは自分より凄い腕を見せつけられた上に、反動に耐えきれなかった不甲斐なさがあったのか、完全に喜べない状況だった。 「でも・・・アヤみたいに完璧に中心に当たってないし、反動で体重を支えきれなかった・・・。俺はまだまだ未熟だ・・・」 アルフレッドは自分よりも腕の立つアヤに褒められた事が逆にプライドに触ったらしく、自分を責めていた。すると、アルフレッドの額にアヤのデコピンがヒットした。 「こら。初めての射撃で高望みしないの!正直、初めてでこれだけ出来た事は相当なものだよ?だから、身体を鍛えて射撃の練習をして、訓練を積めば、きっといいガンマンになる筈だよ!だから・・・さ。もっと自分の可能性に自信を持って・・・。ね」 アヤはアルフレッドにそう説教すると、アルフレッドはアヤに向かった頭を下げた。 「頼む!俺を姉ちゃんの弟子にしてくれないか?俺、もっと強くなりたい・・・!姉ちゃんから教われば、俺・・・」 「・・・いいよ。あたしの教え方は基本的に放任主義だけど、それでもいいなら・・・付いてきて」 こうして、アルフレッドは週1回はアヤから銃の扱い方や、トレーニングを重ねていった。 5 それから、2年の月日が経過した。アルフレッドは13歳になり、背丈もアヤに近付いてきた頃・・・。射撃場の的には10回中8回は中心に当たる程の命中率と銃の反動も微動だにしないくらいの身体に鍛え上げられていた。そんなアルフレッドを連れ、アヤは孤児院の院長室へやってきていた。 「本当にいいのかい?アヤ」 「えぇ・・・。この子も充分強くなったし、もうこの院を出てもいい頃かと思って・・・ね」 「師匠?どういう事だ?」 アヤはアルフレッドの退院を依頼してきたのだ。アルフレッドには院を出て何をするか解っていないが。 「もうあたしは『師匠』でも『姉ちゃん』でもないよ・・・。君のパートナー・・・如月綾」 「え?どういう事だ?」 「実はね、アルフレッド。彼女は2年前の君のモデルガンの腕を見た時から、決めていた事なんだよ・・・」 「アルフレッド君とあたしでコンビを組んで、賞金稼ぎをやろう・・・ってね」 「え・・・えぇぇぇっ!?」 アルフレッドは突然の事で驚きを隠せなかった。当然である、今まで憧れの存在だった相手から、賞金稼ぎのパートナーになってしまったのだから。 「そういう訳だから・・・一緒に頑張ろうね、アルフレッド君。いや、これはいい加減堅苦しいか・・・。今度から、みんなと同じで『アル』って呼んでいいかな?」 「あぁ、勿論だ、師匠!」 「だから、師匠じゃないって、あたしは『アヤ』って呼んで・・・ね」 「あ、あああああああああああや!?いいのか?年上だぞ?」 「こらこら、10個多いわよ」 アルフレッドは馴れ合いにはあまり慣れていなく、緊張しまくっていた。 「それじゃぁ、よろしくね・・・アル君!」 「あぁ、こちらこそ・・・アヤ!」 こうして、最年少賞金稼ぎのアルフレッド・サイファが誕生した。 続