ラスベガス郊外にある鋼鉄工場跡・・・。そこに、目の前で兄を倒されたリリィは監禁されていた。 「うぅ・・・暗い・・・。もぅ〜!あいつ、よくもお兄ちゃんを・・・」 「貴女・・・誰?」 意外と元気なリリィに銀髪で紅色の瞳をした8歳くらいの小さな女の子が話掛けてきた。 「そう・・・貴女捕まったのね・・・。可哀想に・・・」 その少女は歳とは裏腹に大人びて冷静にリリィに話しかけてきた。 「そういう君も、捕まっちゃったの?あ、そうだ。わたしリリィ、君の名前は?」 「わたしは、レベッカ・・・。レベッカ・ホークアイよ。安心して・・・貴女はすぐに解放してもらえると思う・・・」 レベッカは静かに表情を一切変えずに言いきった。その姿を見てリリィはある人物との共通点を感じていた。 Ep4.Betrayal 「ちょっと、待ってよ!アル!!」 店を飛び出したアルフレッドをサヤは必死に追い掛けた。 「なんだよ?今急いでいるんだよ!」 アルフレッドは振り返りながら応える。 「あんた、そもそも坂本がいる場所知ってるの!?」 「知らね!とりあえず適当に回っていれば会えるだろ!」 「だぁ〜!!この単純バカっ!!」 サヤはアルフレッドに空中回し蹴りを喰らわせ、やや強引に引きとめ、襟首を掴んで睨みつけた。 「場所も知らずにただ走りまわったら時間と体力を無駄に消費するだけでしょ!!」 「・・・すみません」 アルフレッドはサヤの勢いに飲まれて平謝りをし、店に逆戻りをした。 1 「それで・・・?連れ戻された・・・ってわけね・・・」 「うん・・・」 スナック・ローズガーネットに連れ戻されたアルフレッドはムスッとした顔で不機嫌そうにそっぽ向いた。 「サヤちゃんだっけ?助かったよ、時々アルって一人で考えなしで突っ走る癖があってね・・・。君みたいな娘がいると、色々助かるなぁ・・・」 「うるさいよ!」 ミレリィに手当てしてもらっているケインがサヤに笑顔で礼を言うと、アルフレッドはより不機嫌になった。 「あ・・・いえ・・・。そんな・・・あたしなんかでお役に立てるのなら・・・」 サヤは顔を俯けケインをじろじろ見ながら少し顔を赤くした。 「お〜い、俺と随分態度違うな、おいこら」 アルフレッドはサヤの後ろから白い目で見ると、サヤは肩をビクッと震わせた。 「と・に・か・く!場所を聞き出すんでしょ!ほら、さっさと頼む!」 サヤはアルフレッドの首ねっこを掴みケインの前に差し出した。 「えっと、そういう事だから・・・場所教えてくれ・・・」 「彼はね、隣町の製鉄の廃工場跡の近くで待つって言っていたよ・・・」 「隣町の製鉄廃工場跡だな!よし、行ってみるぜ!」 アルフレッドはまた飛び出して行った。 「あ、コラ!そうやってすぐに突っ走るな!」 サヤも仕方なく追いかけようとすると・・・、 「サヤちゃん・・・・」 ケインがサヤを呼びとめた。 「あ・・・・は、はい!」 サヤは顔を赤くして振り向いた。 「アルフレッドの事をよろしくお願いします・・・」 「は・・・はい!」 サヤは元気よく返事をし、アルフレッドを追いかけて行った。その姿をみたミレリィはケインに話しかけてきた。 「どう?ケン坊・・・。あの娘を、アル坊は貴方とのチームの中に入れたいらしいわよ・・・」 「それは、賛成ですね・・・。特に、アルには必要な存在だと・・・思います・・・」 ケインは明るく応えた。すると、ミレリィは意味ありげに・・・、 「ケン坊にとっても・・・だけどね」 「え?」 ミレリィは、サヤの存在はアルフレッドだけでなく、ケインにも何かをもたらすと思っているようだ。恋心に鈍感なケインは解らずにいるが・・・。 2 アルフレッドとサヤがケインから教えてもらった廃工場跡に行くと、工場の外には背の高い日本人の男と黒いローブの男、それとリリィともう1人銀髪の少女がいた。 「なるほど・・・。とりあえず、こちらの娘は頂こう・・・後は標的が来るのを待つだけか・・・」 黒ローブの男がそう呟くと、日本人の男はアルフレッド達の気配に気付き、静かに振り向いた。 「・・・・どうやら・・・、待ち人が来たようだな・・・」 「り、リリィッ!!」 アルフレッドはリリィの姿を発見し、叫び出した。すると、 「あ、アル兄ぃ!!逃げて!!敵の目的は、アル兄の誘拐よ!!」 「え?」 リリィが叫んだのは意外な言葉だった・・・。「助けて」ではなく、「逃げて」だったのだから・・・。すると、黒ローブの男がリリィの前に立ちはだかり・・・ 「この娘!!余計な事をっ!!」 と、手を上げようとすると、日本人の男は手を押さえつけた。 「待て・・・。さっきの一言を聞いても逃げる気はないようだ・・・」 日本人の男は静かに言い放つと、黒ローブの男は手を下ろした。 「お前ら!!その子達を誘拐して、何をする気だ?」 と、アルフレッドが日本人の男に問うと・・・。日本人の男は素直に答えた・・・。 「俺は、魔術師狩りをしている、坂本龍牙だ・・・。この銀髪の娘とお前をこの商人に売りつける所だったのさ・・・」 坂本は静かに笑いながら言った。そして、魔術師商人は、依頼料の札束をワザと見せつけた。 「さて、取引だ・・・、アルフレッド・サイファ。お前が、こちらに来ると言うのなら、このお前の親友の妹を返してやる・・・。但し、拒否するというのならば・・・、この場でこの娘には死んでもらうぞ・・・」 坂本は背中の大剣を抜き、リリィの首元に剣を向けた。 「いやぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっ!!」 リリィは恐怖に絶叫した。すると、アルフレッドは腰に手をやり、銃を取り出すと、 「答えはどっちもNOだ!リリィを救いだし、俺もお前の側には付かない!」 と断言し、坂本に向けて銃を発砲した。 「ぬるいっ!」 坂本は弾丸に向かって剣を一振りすると、強烈な爆風がアルフレッドを襲う。その時、 「避けろバカっ!」 サヤは咄嗟にアルフレッドを蹴り飛ばし、爆風から守り抜いた。 「いってぇな!おい!!・・・・って、え?」 アルフレッドは頭を押さえながら立ち上がると爆風で地面が抉られているのに気付いた。 「な、何だこりゃ・・・。・・・そうか、ケインがあの大剣にやられたにしては傷が細かいと思っていたが、これを受けたのか・・・」 「・・・それだけじゃないよ。・・・コレ、何だと思う?」 サヤは近くに落ちていた弾丸を拾い上げると、アルフレッドの血相は悪くなった。何故なら、さっきアルフレッドが撃った弾丸そのものだったのだから・・・。 「まさか、あの爆風で弾丸を跳ね返したのか・・・?」 「・・・そういう事になるね・・・。こりゃ、予想以上にヤバイ相手みたいだ・・・」 「ちっ、まいったな・・・。これでブレイクショットを撃ってたら避けられない処だったぜ・・・」 アルフレッドは打つ手なしで困っていると、サヤがアルフレッドの前に立った。 「アル・・・、ここは二手に別れよう・・・。あいつ相手でガンマンは相性が悪過ぎる・・・」 「おい、サヤ!おまえ・・・」 「あいつはあたしが相手をする・・・。あんたは、その隙にあの娘を助けてあげて・・・。親友の妹なんでしょ・・・」 アルフレッドは自分と相性の悪い相手とはいえ、女の子に託すのは気が引けていたが、一歩退く事にした。 「解った・・・、ここは任せる・・・。だが、無理だけはするなよ・・・」 アルフレッドはそう言い、遠くから回り込んだ。 「ん?どうした?」 坂本は突然退いたアルフレッドの姿に疑問を感じた。 「坂本!あんたの相手はこのあたしがする!この日本の面汚し!!」 サヤはそう言い、自分を指差した。 「女か・・・。言っておくが、俺は相手が女子供でも容赦はせんぞ・・・」 「あはは・・・その方がやりやすくていいよ・・・」 サヤは口元をニヤけさせて笑いながら言い放った。 「無謀な立ち合いに後悔しろっ!!」 坂本はさっきと同じく、遠距離からの爆風攻撃を繰り出した。しかし・・・。 「なっ!?こ、これは・・・」 サヤが立っていた場所にあったのは、サヤに似た格好をしたぬいぐるみだった。 「ど、何処だ!?何処に行きやがった!?」 「・・・後ろだよ・・・」 「何っ!?」 サヤは坂本がぬいぐるみに気を取られている隙に背後に回っていた。 「遅いっ!!」 「ぐっ!!」 サヤは坂本の手の甲に蹴りを入れ、剣を手放させ、剣を蹴り飛ばし遠くに追いやった。 「ちっ・・・」 「まぁ、ああいう大きな剣は一振りの隙が大きいからね。小回りの利くタイプに弱いんだよね・・・。やっぱ、剣は短いのに限ると思わない?」 サヤは余裕な態度で坂本を見下していると、突然坂本が回し蹴りを繰り出してきた。サヤはそれを咄嗟に防御し、ギリギリで防ぎきった。 「忍術か・・・恐れいったが・・・。・・・別にお前如き素手で充分だ!」 「そっか、だったら・・・そっちの腕も試してみるかな?」 サヤはそう言うと、ジャンパーを脱ぎ、短剣をホルダーごと外した。 「さぁ!第2ラウンドと行きますか!!」 3 一方、アルフレッドはサヤと坂本の戦況の中、遠周りでリリィ達に近付いた。 「よぅ、リリィ。今すぐ助けてやるからな・・・」 「あ、アル兄ぃ!後ろっ!!」 「え?」 アルフレッドが後ろを振り向くと黒ローブの男が黒い光を放ちながら立っていた。 「フフフ・・・、餌が自分から来るとは好都合だ・・・」 「ちっ、気付かれたか!」 「とりあえず、大人しくして頂こうか!!」 そう言うと、黒ローブの男は黒い光でアルフレッドを吹き飛ばした。 「ぐあああああっ!!」 アルフレッドはそのまま後ろの岩に背中を叩きつけられた。 「な、何だってんだ?今のは!?闇の様な黒い・・・」 「クックックッ・・・教えてやろう・・・。これは闇魔法・ダークミールだ。そして、私の名は闇魔道師のクロムだ。以後お見知りおきを・・・。アルフレッド・サイファ殿・・・」 クロムは礼儀正しくお辞儀をして、アルフレッドに挨拶をすると、アルフレッドは立ち上がった。 「な、何故・・・俺の名前を・・・!?」 「私の主人から聞いております。貴方をよくご存知と聞きますよ・・・。魔道師ルビー様・・・いや・・・賞金稼ぎレッドウルフと呼ぶべきでしょうか?」 「ま、魔道師!?俺が・・・?俺は魔術なんて使った事もないぞ!?」 アルフレッドはクロムから意外な事実を明かされ、アルフレッドは動揺した。 「いえいえ、今は力に目覚めていないだけ・・・。才能の開花が遅いのでしょう・・・。ですが、その銀髪と紅い瞳は間違いなく・・・」 「ちっ、俺は魔術なんてものに関わりはねぇ!!とっとと失せろ!!」 アルフレッドはクロムに向けて銃を発砲した。しかし、 「甘いっ!」 クロムの出す黒い光に弾丸は飲み込まれてしまったのだ。 「おいおい・・・最近の人は弾丸は効きませんよみたいな方ばかりですか?」 アルフレッドは頭を掻きながら、もう1発弾丸をシリンダーに詰め、構えた。 「おやおや、学習能力がありませんね・・・」 「さて、それはどうかな?」 アルフレッドは引き金を引くと、クロムの目の前で角度を上空に変えた。 「な、何だ!?弾丸が!?」 「へっ!弾けて咲けっ!!ブレイクフラワーシャワー!!」 上空に飛んでいた弾丸が突然花火の様に破裂し、雨の様にクロムに降り注いだ。 「ぐぬぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!!」 「ブレイクショットの改良版だ。元々、こいつはアヤの我流なんだが・・・、日本の花火とかいうものをモチーフにした技らしいぜ・・・。アヤが付けた名前は“打ち上げ花火”なんだけどな・・・」 と、アルフレッドはブレイクフラワーシャワーの説明をした。 「すごい!すごいよ!アル兄ぃ!」 リリィは手錠をしながら、アルフレッドに近付いた。しかし、アルフレッドはリリィの前で手を止めた。 「まだだ・・・。元々、ブレイクショット自体は威力がかなり低い。この程度を受けて重症を負う程の相手じゃない・・・」 「ぐっ・・・だが、流石はレッドウルフ・・・。これほどまでとは思っていなかった・・・」 クロムは起き上がるとまるで絶望感を感じたかの様な顔をして言った。 「・・・どうやら・・・。私も本気を出さねばならぬようだ・・・」 「何?」 そう言うと、クロムはローブを脱ぎ始めた。 4 一方、サヤは坂本と素手同士で殴り合いをやっていた。腕力では坂本が有利だが、速さはサヤが圧倒的な為、坂本はやや押されぎみだった。 「くたばれ!」 「遅いっ!」 坂本が蹴りを繰り出すと、サヤは素早く避け、カウンターで顔面に左フックを入れ、その反動で左後ろ回し蹴りも決まった。 「ぐぉっ・・・」 「いい加減、力の差を思い知ったらどう?」 「フ・・・、軽いな・・・」 坂本は蹴りを入れてきた足を掴んでサヤを壁に叩きつけた。 「あぅ・・・」 「確かに中々のスピードだがな・・・、所詮女だな・・・。この俺を倒すにはパワーがない!」 坂本はダウンしたサヤを踏みつけようとすると、サヤは素早く坂本の軸足に足払いを喰らわせダウンを奪い、そのまま坂本に乗り、マウンドポジションの様に殴りまくった。 「パワーが足りなければ、別の場所で補えばいいだけの事だよ。手数足数を増やしたりね」 「弱点を補って闘う戦法は悪くないし、マウンドポジションもいい作戦だとは思うがな・・・・」 坂本はサヤに乗られた体制から無理矢理起き上がり、逆にサヤの襟首を掴み地面に叩きつけた。 「お前は軽過ぎるんだよ・・・。俺と素手でやり合うなら、もっと体重増やしとけ・・・」 「太れとか、体重増やせとか、普通女の子にそういう事言うかなぁ〜?」 サヤは呆れながら平然と立ちあがったが、内心では坂本の言う事も一理あると思っていた。自分のパワー不足は確かに問題なのだから・・・。 「・・・だったら、拳が軽くても大ダメージを与えてしまえる様な攻撃を仕掛ければいいだけの話だ!」 と、サヤは断言し、坂本に特攻して行った。そして、サヤの力を込めた渾身の一撃は坂本の鳩尾にクリーンヒットした。 「が・・・うぉ・・・・」 更に、右回し蹴りが坂本の脇腹を襲い、坂本はよろめきつつ、何とか立っていた。 「さっきの蹴りであばら骨が数本逝ったと思っていたけど、結構しぶといな・・・」 サヤは坂本の顎を蹴り上げ、浮きあがった坂本の鳩尾に肘打ちを喰らわせ、襟首を掴んで投げ飛ばそうとした時、サヤの首に坂本の腕が掛かっていた。 「くっ・・・」 「ちっ、手加減していたつもりはないが、正直舐めていた・・・。お前がここまでやるとはな・・・。正直言って、さっきの数発はかなり効いたぜ・・・。本気で意識が逝き掛けた・・・。だが!!力で男に勝てない事を教えてやる!!」 「う・・・ぐぐぐ・・・っ・・・」 坂本はそう言うと、その体制のままサヤの首を締めだした。 「お前、相当お人よしだな・・・。あんな捨てられた魔術師どもなんざを庇って何になる?捨てられて寂しく暮らすくらいならば、売り飛ばして金にしちまった方があいつらにとっても幸せってもんだろ?」 「な・・・・」 サヤは坂本の膝を踏み台にし、そのままの体勢でサマーソルトを顔面に喰らわせ、自分と坂本を引き離した。 「はぁはぁ・・・・、お人よし結構!人質売買して金儲けするくらいなら、その方が格好がつくって奴だよ!プライドがあるならね!」 「ぐっ・・・、片腹痛いっ!!いい加減大人しくしてろ小娘!!」 坂本がサヤに飛びかかっていくと、サヤはそのままふところに入り、襟首を掴み、背負い投げを決めた。坂本はその時、打ちどころが悪かったらしく、その場で気絶していた。 「あたしとアンタじゃ、賭けてるプライドの重さが違うんだよ・・・」 サヤはそう吐き捨て、アルフレッドに合流しにいった。 5 「ぐあっ!」 アルフレッドはクロムの闇魔法攻撃を受け、吹き飛ばされ後ろの岩に背中を打ちつけた。 「ちっ、厄介な相手だ・・・。あの闇に銃を1艇飲み込まれちまった・・・か」 「いい加減、大人しくして頂けますかな?」 アルフレッドは近付いてくるクロムに紅い銃を向けた。 「う、うぉぉおおおおおおおっ!!」 アルフレッドが引き金を引くと、紅い銃から弾丸ではなく、光が飛び出し、クロムの頬を掠めた。 「な、何だ?こいつは一体・・・?」 「どうやら、やっと力を引き出せたようですね・・・。面倒な事になったな・・・」 「こ、これが俺の本当の力・・・あいつの言う魔術なのか・・・」 アルフレッドは銃を持つ手を見つめ、身体を震わせていた。その姿を見ていたレベッカは目の色を変えていた。 「あれはただの魔術なんかじゃないわ・・・。高難易度の部類に入る光魔法・・・」 「ちっ、だが!まだ使いたての青二才!!二度と使わせん!!」 クロムは闇魔法を身体に宿しながらアルフレッドに飛び込んでいった。すると、アルフレッドは冷静な目付きでクロムを見据えて銃を構えた。 「これで最後だ!シャイニングバーストッ!!」 紅い銃から巨大な光を放ち、クロムを包み込み、クロムは体中の力を吸いつくされたかのように、倒れ込んだ。 「ば・・・バカな・・・、使い始めたばかりの光魔法をもうそこまで・・・」 立つこともままならないクロムは、そのままの姿勢から闇魔法を使おうとした、その時・・・。 ズギューン! 「ぐおっ!!」 遠くから銃声が鳴り、クロムは右手を撃ち抜かれた。 「な、だ・・・誰だ!?」 「オッサンよぅ、男ってのは引き際は肝心だぜ?」 そう言って建物の蔭から出て来たのは、髪をオールバックにし、不精髭を生やしたサングラスを掛けた渋い男だった。 「な・・・、き、貴様は!?ブルース・・・・ブルース・ホークアイ!!」 「え?ぶ、ブルースだと!?あの・・・伝説の賞金稼ぎの!?」 ブルースは肩に掲げたライフルをクロムに突きつけた。 「さぁ、答えてもらうぞ・・・。アンタに仕事を依頼した奴は誰だ?」 「なっ!?」 「さぁ、言え・・・。さもなくばこの場で撃ち殺すぞ・・・。この距離なら、どんな素人でもミスはしねぇぜ?」 「くっ!止むを得ん・・・か!」 クロムはそう言うと、黒い霧に全身を包ませ、姿を消した。 「な・・・っ!?き、消えた!?」 「ちっ・・・やはり逃げたか・・・」 ブルースは深追いはせず、ライフルを下ろした。 「お、おい・・・何で・・・、伝説の賞金稼ぎのアンタが出てきたんだ?まさか、さっきの奴はそれだけヤバい相手なのか?」 「さぁな・・・。別に俺はアイツに興味なんてねぇよ・・・ただな・・・」 ブルースはレベッカの元へ歩いて行った。 「ようし、大丈夫だったか?レベッカ・・・」 「うん、ありがとう!パパ!」 ブルースに頭を撫でられたレベッカは笑いながら素直にお礼を言った。 「ぱ・・・・ぱぱ?」 「答えは、今お前さんが思っている通りだ。娘をさらわれて助けに来た・・・。それだけだ・・・」 「その銀髪の子・・・、アンタの娘・・・だったのか・・・」 アルフレッドは予想外の事で言葉を失った。 「まぁ、助けに行こうにも、あのサカモトとか言う日本人が厄介で、様子を伺っていた所にお前さんとあの嬢ちゃんが来たって訳さ・・・。どの角度から撃った弾丸も跳ね返されちゃ、どんなベテランでもガンマンなら苦戦を強いられるからな・・・」 「確かに・・・サヤが自分から買って出なかったらこういう結果にはならなかっただろうな・・・」 「ところで・・・お前さん、若いワリには結構出来るみたいだが、その技術・・・アヤから教わったな?」 「え?ど、どうして、アンタがアヤを!?」 アルフレッドはブルースの意外な発言に驚いた。型を見ただけでアヤから教わった事を見抜いたのだから・・・。 「なぁに、簡単な事だ・・・。それは・・・」 「お〜い!」 ブルースが何か言い掛けた所で、坂本を撃ち破ったサヤが現れた。 「さ、サヤ!?」 「アル、あんた無事だったんだね。・・・って、この人誰?」 サヤがブルースを不思議そうに見ると、ブルースは少しだけ目を丸くした。 「こいつぁ驚いたぜ・・・。まさか、型がまったく違うのに、顔がアヤにそっくりなんてなぁ・・・」 「え!?オジサン、もしかして、姉さんを知っているんですか!?」 サヤは意外な人物に知り合え、感激していた。 「あぁ、アヤは俺の唯一の弟子だからな・・・」 「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」 アルフレッドとサヤは声を合わせて驚いた。当然だ、アヤが伝説の賞金稼ぎの唯一の弟子だったのだから・・・。 「あいつは天才だぜ・・・。1ヶ月で俺の技術を盗んでいきやがった・・・」 「「あははは・・・・」」 アルフレッドとサヤはアヤの事を想像して、失笑した。あの人ならやりかねないと・・・。 「あいつは、どうしても守りたいものがあるって言って、俺に付いてきたんだ・・・。正直、こんな若い弟子を育てていたなんて知らなかったけどな・・・」 ブルースはアルフレッドを見て微笑みながら言い放った。 「それにしても・・・、予想はしていたが、あの魔術師にバックがいるとはな・・・」 「一体、あいつ・・・何者なんだ?俺の事を魔術師とか言うわ、さっきは偶然銃から光が出るわ・・・」 「さぁな・・・。そいつを知ってりゃ苦労はしねぇさ」 ブルースは目を背けた。 「だったら、俺の知っている事で良ければ話そうか?」 坂本が後ろから声を掛けてきた。 「さ、坂本!?」 「俺はずっとある奴を追って魔術師狩りをカモフラージュにこの国に来ていたんだ・・・」 「ある奴?」 その時、坂本が口にした名は予想もしない人物だった・・・。 「ギルティナ・ディルモンド・・・。50億ドルの賞金首だ・・・」 「ぎ、ギルティナだと!?」 「ご、50億って・・・」 アルフレッドとサヤはこんな所でギルティナの名を聞き驚きを隠せずにいた。更に、アヤを失ってから1年で、賞金首が50億ドルに跳ね上がっていた事も初めて知ったのだ。 「ちっ、ギルティナか・・・。こいつぁ、迂闊に手が出せねぇな・・・。レベルが違い過ぎる・・・」 ブルースは顔を顰めて言った。そう、億単位の賞金首ともなると、普通の賞金稼ぎでは手が出せないのである。・・・よほどの命知らずではない限り・・・。 「もしかしたら、ミレリィの姉御なら何か知ってるかもしれない・・・。1度戻ってみるか・・・」 「お?ミレリィの所なら俺も付いて行くぜ。サカモト、お前からも情報が欲しい。一緒に来てもらうぜ」 「いいだろう・・・」 という訳で、一行はローズガーネットへ戻ることにした。 6 ローズガーネットに戻ると、ミレリィの代わりに店番させられているケインと出会った。 「ただいま戻った・・・って、・・・あれ?お前、何バイトさせられてんんだ?」 「あぁ、おかえり。ミレリィさんなら、今着替えているから、その間の店番頼まれたんだよ・・・。それより、リリィは無事だったかい?」 ケインは妹の無事を確認すると、アルフレッドの後ろからリリィが現れた。 「お兄ちゃん!」 「り、リリィ!!無事だったんだね!!よかった・・・・」 ケインはリリィの顔を見ると、涙を流しながらリリィを抱きしめた。 「悪かったな、小僧。このアルフレッドって奴が取引相手を再起不能にしちまったからな。取引が成立しなかったんだ。無事返させてもらうぜ」 坂本がケインに声を掛けるとケインは目付きを変え、坂本を睨み出した。 「お前はあの時の・・・。・・・ん?そういうお前こそ、誰かにやられたのか?顔中傷だらけだけど・・・」 ケインが坂本にダメージがある事に気付き、そう尋ねると、顔にバンソーコーを付けたサヤが頭を掻きながら、入って、 「やはー、あたしが素手でボコボコにヤっちゃいました♪ケインさんの無念の分まで殴っといたから、安心してね♪」 と、軽く笑顔で応えると、ケインの顔にも笑顔が戻り、 「そっか・・・。ありがとう・・・サヤちゃん」 と、優しくお礼を言ってきた。すると、サヤは顔を真っ赤にし、照れていた。 「さ、サヤさん!?もしかして、お兄ちゃんの事が好きなんですか?」 リリィは冷たい視線でサヤを見ると、サヤは必死でそれを否定した。 「ええええ!?そそそそ、そんなやましい事なんてあああああある訳ないでしょ!か、勘違いしないでよね!あたしは別に好きとかじゃなくて、仲間として当然の事をしただけなんだから!」 すると、後ろからブルースがサヤの頭を撫でてきた。 「おいおい、青春だねぇ・・・。アヤの妹とか言ったっけ?アヤより素直で可愛いじゃねぇか」 「か、からかわないで下さいよ、ブルースさん!」 「サヤちゃんは可愛いわよ、ダーリン」 サヤはからかわれた事でふてくされていると、奥からミレリィが出てきた。 「あらぁ、ダーリン。来てくれて嬉しいわぁ〜」 アルフレッド達は今まで聞いたことがないくらい甘い声を出したミレリィを目の前にした。 「ぶ、ブルースさんとミレリィさんって、古くからの知り合いなんですか?」 サヤは呆けた顔で尋ねると、ミレリィはハイテンションで応えた。 「知り合いなんてとんでもないわ!私とダーリンは、愛し合っているもの・・・」 「いや、ただのお得意様なだけだ」 ミレリィの愛は届かず、ブルースにスルーされてしまった。 「そんな事より、ミレリィ。ギルティナの手配書はねぇか?」 ブルースはミレリィの愛をスルーすると、本題に入った。 「・・・ギルティナ・・・。・・・さ、さぁ・・・何の事かしら?」 ミレリィはアルフレッドから目を背け、すっとぼけた。 「アルフレッドからアヤの事は聞いている。ギルティナの事も知ってるだけ話した。だから、構う事はねぇ。アルフレッドに見せてやってくれねぇか?」 ブルースはサングラスを外し、真剣な目でミレリィを見つめた。 「解ったわ・・・。後悔はしないわね・・・?」 ミレリィは改心し、戸棚に隠した手配書を見せた。そこには、アルフレッドとって忘れもしないあの男・ギルティナ・ディルモンドの顔写真が載っていて、金額は50億ドルと表記されていた。 「うわぁ・・・、こんな凄い金額の手配書、あたし初めて見たよ・・・」 サヤも手配書の金額を見てたまげていたが、冷静を取り戻しアルフレッドに尋ねた。 「アル、こいつが姉さんを行方不明に追いやった男なんだね・・・?」 「あぁ、忘れもしないぜ。この銀髪・紅瞳のすまし顔は・・・」 アルフレッドの眉間に皺がよっていた。 「やっと・・・出てきたか・・・あの野郎・・・。今すぐぶちのめしに行ってやる!!」 アルフレッドは冷静さを失い飛び出そうとすると、サヤに腕を掴まれ、引き留められた。 「待ってよ、アル!あんた、今のままでギルティナに勝てると思っているの?魔術をやっと使えたレベルなんでしょ!?それに普通の銃が効かない相手に立ち討ち出来る自信はあるの?行動起こす前に、もっと冷静になりなよ」 サヤがアルフレッドを説教すると、ブルースがアルフレッドの前に立ちふさがった。 「サヤちゃんの言う通りだぜ、アルフレッド。今のお前に勝てる相手なんかじゃねぇ・・・。こんな化け物野郎とやり合うなら、魔術の腕も磨いておけ。それに、このレベルの奴はまともな奴は手を出そうとは思わねぇ。時間を掛けて腕を磨く方が賢明って奴だ・・・」 「・・・すまない。つい、冷静さを失ってしまった・・・。サヤとブルースの言う通りだな・・・。腕を磨かないと・・・」 ブルースに説得されたアルフレッドは顔を俯け、拳を握り締めた。 「だが、こいつに対抗する手を得るにはどうするか・・・」 アルフレッドが悩んでいると、坂本が立ちあがりアルフレッドの傍に来た。 「小僧・・・、だったら1度日本に行ってみろ・・・」 「日本?」 坂本の意外な発言にアルフレッドは疑問を抱いた。すると、坂本は自分が新撰組を抜けた理由を話したのだ。 「今の新撰組は何者かに操られた集団になっていし、ギルティナとやり合うには丁度好いレベルの相手も多い。興味はねぇか?」 「なるほど、いいねぇ。それにこっちには日本人のサヤもいるし、こいつと一緒に日本に行けば通訳とか頼めるしな・・・。よし、俺は日本に行くぜ!」 坂本の提案を聞いたアルフレッドは突然、日本に行くと言い出した。 「僕はリリィの事もあるし、ここに残るよ」 ケインはアメリカに残る方を選択すると、サヤと手を握った。 「け、ケインさん!?」 「サヤちゃん、アルの事・・・よろしく頼みます!こんな事頼めるのは君しかいないんだ・・・」 「け、ケインさん・・・。解りました!用が片付いたら、アルと二人で戻って来ますね」 ケインに両手を握られ、真剣な眼差しで見つめられたサヤは、赤面しながら笑顔ですんなり応えた。 「よし、ここは保護者がいるな。俺達親子も行こう」 ブルースは自称保護者として、レベッカを連れて日本に行く事を決意した。 こうして、アルフレッド・サヤ・ブルース・レベッカの4人による日本への旅は始まったのだ。 続